第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

バイクで走り回ってバカ話をすることの大切さ

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.22 「好きだから、世界で戦えた」

  • 2019/12/1

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第22回は、「仕事だからこそ楽しむ」ことについて。

TEXT:Go TAKAHASHI

MICHELIN

大の大人がバイクで走り回る“だけ”ですが

11月20~21日、気の合う仲間たち13人で西伊豆ツーリングに行ってきました(そのうち1名は夜の宴会のみ参加!)。2日間とも奇跡的に天気がよくて、最高でしたよ!

4、5年前から始めたツーリングですが、人も頻度もだんだん増えてきています。だって、楽しいから(笑)。

みんな仕事で付き合いのある人たちばかりですが、ツーリング中はほとんど仕事抜き(眉をしかめて仕事の電話をしてる人はいたかな)。しかも乗るプロばかりなので、走りにはまったく気を使わなくて済むから気楽です。

何の遠慮もない、ただただ楽しいツーリング……と思ってたのは僕たちだけかもしれません。今回の幹事を務めてくれた若手(!?)の鈴木大五郎くんは、大御所の先輩たち相手に苦労しただろうなあ。まぁ、かわいがられてるってことで!

僕は今回、トライアンフからタイガー800をお借りしました。ストリートトリプルRSと乗り換えながらのツーリングでしたが、どっちもいいバイクでしたよ。2台を比べると、タイガー800は安定感があってサスペンションストローク量も多く、ツーリング向け。取り回しもラクで、ちょっとした出し入れも余裕を持ってこなせました。ストリートトリプルRSは軽快でクイック。ツーリングもこなしつつ、たまにサーキット走行も楽しみたい人にオススメできるスポーティーさです。

ストリートトリプル同様、3気筒を楽しみました!

なぁんていうバイクの話も、ツーリング中は「そこそこ」程度。初日は伊豆の入口でお昼ご飯を食べ終わるや、「早く宿に入ろう」という山田純さんからの逆らえないご提案があり、西伊豆スカイラインを経由して午後3時頃には早くも雲見の宿へ。そこから先、翌朝までの間の様子については、皆さんの名誉のために伏せておきます……。

でも、仕事抜きでバイクを走らせて、気持ちよく食べて(飲んで)、みんなめちゃくちゃ楽しかったと思います。これ、とても大事なことなんです。

仕事でバイクに関わっている僕たちが、バイクを楽しむこと。バイクに乗って「幸せだな~」と感じること。こういう喜びを皆さんに還元することこそが、僕たちの「仕事」だと思うからです。

カメラマンの方たちは、「もっといいバイクの写真を撮って皆さんを喜ばせたい」と思うでしょう。ライダーの方たちは、例えばサーキット走行会で先導する時に「どうすればもっとお客さんに喜んでもらえるかな」と考えるでしょう。雑誌作りに携わっている人たちは「読む人たちにバイクの楽しさが伝わる誌面を作ろう」と頑張るはずだし、メーカーの人たちは「もっとバイクを楽しんでもらえるような製品作りをしよう」と力が入るに違いありません。

なぜって、自分たちがバイクを楽しんでいるからです。誰よりもバイクの楽しさを知っているから。僕たちは西伊豆ツーリングで、そのことを改めて確認しました。くだらないバカ話ばかりだけど、誰もが「バイクっていいもんだな」と思いました。

あとはそれぞれの仕事の中で、その喜びを伝えたり、かたちにすることができれば、こんなにいい循環はありません。

大の大人がバイクで走り回ってバカ話をして飲んだくれた2日間でしたが、僕にとってはすごく意味のあること。だからまたやろうと思ってます。決して飲みたいだけじゃありませんよ!

かつて世界GPの中継で解説していた山田純さんと。人生の大先輩と同じ目線で一緒に楽しめるのもバイクならではの良さ! と言いつつ夜の宴会の写真ですが(笑)。

金網にしがみついて「ビアッジ、すげー!」からWGPへ

楽しむって、ものすごく大事なことです。僕のレース活動も、なんだかんだ言って楽しいからこそ続けて来られました。子供の頃は、バイクで走るのが楽しくて仕方ありませんでした。「世界グランプリに行きたい」なんて思ったことはなく、ただの遊びの延長線上。親は協力してくれたけど、無理強いされたことはありません。自分が楽しかったから、自分なりに工夫することも覚えました。

「世界グランプリに行きたい」と思うようになったのも自分から。’92年の夏にハンガリーGPとフランスGPを観に行かせてもらったのがきっかけです。本当はスポット参戦の予定でしたが、エントリーが認められず視察になりました。

初めてGPライダーの走りを生で観て、もう金網にしがみついて「ビアッジ、すげー!」なんて、ただのレース小僧でしたよ(笑)。でも、「無理だ」とは思わなかった。「こいつらと勝負したい!」と思ったんです。だから自分の意志でヤマハに「世界GPに行きたいです」とお願いしました。

言ったからには、努力しました。走り方も変えて、とにかく頭を使うようになった。GPライダーたちは本当に速かったし、うまかったんです。才能という点では僕なんかまったく敵わない。何しろ、平気でスリックタイヤで縁石の外側を走っちゃうようなヤツらですからね(笑)。「真っ向勝負を仕掛けても絶対に勝てないな」ということも分かったんです。

翌年から世界グランプリを戦うことになり、一生懸命に自分なりに考えました。トップの連中は本当に速くて、その中では自分が一番遅いのが分かっていたから、戦略を立てないと絶対に勝てないぞ、と。

それもこれも、好きだったから。仕事ではあったけど、楽しかったからです。だから自分の意志で、いろいろと決めることができた。自分で決めたことだから、頑張れた。好きでもないこと、楽しくないことを人に押しつけられても、絶対に上には上がれなかったと思います。

勝ち上がるために必要なのは、決意や覚悟なんです。他のことを捨てて、どれだけ自分のやるべきことに集中できるか。それって結局、自主的ってことなんですよ。そして、自分が心から好きだったり楽しめることじゃないと、本当の意味で自主的に、積極的に取り組むことなんかできません。

僕はそういうタイプでした。楽しかったからバイクのメカニズムを自分で調べたし、セッティングについても学んだ。それが世界で戦う時の大きな武器になったんです。

楽しいって、本当に大事なことだと思います。茂原ツインサーキットで開催している僕のスクールは、雨では中止しますし、寒い時期にはやりません。だって、楽しくないから(笑)。楽しいからこそ、「もっと」という向上心も芽生えますよね。

そんな風に、楽しむことの大切さを改めて感じた西伊豆ツーリングでしたが、こんなことを考えているのも帰ってきてからのこと。ツーリング中はな~んにも考えず、ただただみんなと笑っていました。最高の時間でしたよ!

ツーリング中はただ楽しさに浸る、それも大事です。

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原田哲也

原田哲也

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1993年ロードレース世界選手権(WGP)250の世界チャンピオン。1992年に全日本で同クラスのチャンピオンを獲得し、翌年に初挑戦のWGP250で戴冠した。現役当時のニックネームは「クールデビル」。'02年に現役を引退し、現在はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。