ドイツのボッシュやコンチネンタルのようなグローバルサプライヤーがバイク用の電子制御などの根幹をなすパーツを車両メーカーに供給しているのは有名なハナシ。これらに対抗すべく、国産有力ブランドが手を組んで業界トップを目指す。その全容とは?
エンジンとフレーム、タイヤ以外はなんでも揃う?
2019年10月30日、本田技研工業と日立製作所は、それぞれの子会社である日立オートモティブシステムズ(HITACHI)、ケーヒン(ホンダ)、ショーワ(ホンダ)、日信工業(ホンダ)を完全子会社化、さらにこれら4社を統合して、日立とホンダがそれぞれ統合会社の総株主の議決権を66.6%、33.4%となるような合併比率でで割り当てるための基本契約を締結したと発表した。日立オートモティブシステムズを最終的な吸収合併存続会社とし、ケーヒン、ショーワおよび日信工業を最終的な吸収合併消滅会社とするのだという。
この合併は、自動車・二輪車システム事業において各社(各ブランド)が持つ強みを掛け合わせ、相互作用による相乗効果を得るのが狙い。各社が共同で発表したコメントを要約すると、「パワートレインシステム、シャーシ、安全システム等のコア事業強化を図っていき、さらにサスペンション、ブレーキ、ステアリング、安全システムを加えた各分野においてグローバルリーダーとなるグローバルTier1サプライヤーが誕生する」ということになる。
二輪車の分野において現在までよく知られているケーヒンやショーワ、ニッシン、トキコ(日立オートモティブシステムズがブランドを所有)はどうなるのかというと、“これら各製品についてのブランドは、本統合会社の企業価値最大化の観点から、当面の間、継続使用する予定”だという。『当面』という文字が少し気になるところではあるが、すぐさまあなたの買った新車のブレーキキャリパーに「HITACHI」と書かれている、といったことはなさそうだ。また、本統合会社と業容が異なるケーヒンの自車空調事業については第三者に譲渡される予定だという。
我々ユーザーのメリットは、相乗効果によって向上した技術の恩恵を受けられること。それは先端技術の享受だけではなく、部品の共有や設計の工数削減(ようは効率アップ)により、車両価格の上昇が抑えられるといったことにも効いてくるだろう。
各ブランドの持ち味とは
日立オートモティブシステムズは、トキコ(ブレーキキャリパーなど)ブランドを保有するだけでなく、エレクトロニックコントロールユニット(ECU)やADAS(先進運転支援システム)、コネクテッド技術における制御ソフトウェアなどで知られている。
ケーヒンは、キャブレターやフューエルインジェクションだけでなく、エンジンや電動パワートレインのマネジメントシステム、ECUなどを提供してきた。
ショーワは言わずと知れた国産サスペンションの有力メーカー。電子制御サスペンションのEERAなどを手掛けてきた。
日信工業は、ブレーキキャリパーなどのほかカーボンナノチューブを配合した高性能ゴムシール材なども展開してきた。
これらが集うことで、車両の基幹となるエンジン、フレーム、そして有力メーカーが別に存在するタイヤ以外は、走行性能に関係する部品のほとんどが揃ってしまうといっていいだろう。国産車両メーカーへの有力サプライヤーとして、またグローバル展開も含め、かなり大きなニュースである。実際の統合が実行される日程は「未定」とされているが、もちろんこれは近い未来に起こることだ。
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