バイクの通行割合は? システム改修費用は?

バイクの高速道路料金、現状から8分の5(普通車の半額)になるか!?

軽自動車と同一という割高な設定になっている高速道路の2輪料金。その解消に向けて、少しずつ、だが着実に前進しつつある。ETCシステムの改修か、ツーリングプランの仕組みを利用するのか……最新状況をレポートしよう。

POINT[1]目標の料金が具体的に!

高速道路の料金区分は現在5つ。バイクは軽自動車に含まれ、普通車を1とした場合、0.8倍の通行料金を支払う必要が。車種区分としてバイクを独立させ、適正な料金設定とすることが議論されている。このたび自民党PTから新案として「軽自動車の5/8、普通車の約半額」という具体的な料金が出てきたのだ。

道路を占有するスペースや、路面への負担が少ないにもかかわらず、バイクの高速道路料金は軽自動車と同額に設定されている。実に「不公平」であり、長年、ライダーを悩ませている問題だ。こうしたバイクを取り巻く諸問題を解消すべく、ユーザーや業界団体の声を背景に、「自民党二輪車問題対策プロジェクトチーム」(詳細は後述を参照)らが関係省庁と議論を重ねているのが現状だ。3月に行われた第13回会合で、高速料金に関する新たな動きがあった。

まず大きなポイントとなるのが、具体的な料金案が出てきたこと。普通自動車の料金を1とすると、軽自動車は0.8となるが、2輪料金区分を新設し、軽自動車の8分の5、つまり普通車の半額である「0.52」を目指す。自民党プロジェクトチームの逢沢一郎座長は、「これを実現することがプロジェクトチームの総意」と述べる。

ここで問題になってくるのが、「ETCのシステムにおける識別」と「通行料金の減収」だ。まず前者は、今まで「バイクと軽自動車はデータ上では同じ区分として認識されており、技術的にシステムの分離が困難」と言われてきた。だが、実際はETCのシステムを改修すれば、分離可能と判明。調査の結果、改修に「約200億円がかかる」(道路会社)という。

一方、事前登録したETC搭載バイクを対象に最大半額となる「ツーリングプラン」(後述)の仕組みを利用した場合、「どの程度の投資で定額割引できるのか」と自民党プロジェクトチームが質問。するとネクスコ東日本は「登録されたお客様は全て2輪車であると見なしているのでシステムとしての改修はほとんどやっていない。コストはゼロと考えて頂いて結構です。事前登録した2輪車を定額割引するのは当社ではETCマイレージ割引のシステムを改修するのが一番近道かと思う」との回答があった。

つまり、工夫すれば改修費用ほぼナシで2輪料金の新設は可能。この場合、事前登録が必要となり、ポイント還元などの形で料金がユーザーの手元に戻されることになるだろう。

POINT[2]バイクの通行料金収入が判明

2017年7月~2018年6月の期間、高速道路3社が全国47料金所で初めてバイクの利用実態調査を実施した。2輪車の割合は全体の0.38%で、通行料金収入は150億円弱になる計算。通行料金を軽自動車の5/8にした場合、収入は50~60億円減の約90億円となる。これを多いと見るか、妥当と見るか?

次は、通行料金の減収に関して。自民党プロジェクトチームの要請に応じ、2017年7月~2018年6月の期間、高速道路3社が初めてバイクの利用実態調査を実施した。それまで全く調査してこなかったことに驚かされるが、全国47料金所でバイクの通行割合は全体のわずか0.38%に過ぎないと判明。高速道路3社の総収入が約2兆2000億円であり、2輪の通行料金収入は140~150億円となる。

「仮に通行料金を軽自動車の8分の5にすると約90億円となる。この数字をお互い頭に入れて真剣に議論をしていきたい」と逢沢座長。つまり2輪料金区分が実現すれば、約50~60億円の減収となるわけだが、昨年、高速道路3社の通行料金収入は2000億円(+10%)も増えている。2輪料金を値下げした場合、利用者は増加するはずなので、減収と言っても、わずかな差で済みそうだが……?

POINT[3]システムの改修費用

2輪料金を新設するには、料金所におけるETCのシステム改修が必要。その費用に約200億円がかかるという。だが、ツーリングプランのように、事前登録して請求時に割引されるシステムを利用すると、ほぼコストはゼロで済む。「2輪車料金を軽自動自動車に対して5/8にすることは、それほど大きな投資ではないだろう」と逢沢座長。
ETCなしでも割引を実現してほしいが、現状ではETCが必須となりそう。ちなみにETC1.0でも車種の判別は可能だ。

一方、道路を管轄する国土交通省高速道路課は、自民党プロジェクトチームに対し、次のように回答した。

「2輪料金のあり方については多くの先生方からご指摘をいただいているので重々認識している。しかしながら他の車種区分との兼ね合いもあるので2輪車料金だけを見直すのは難しい。そのためにツーリングプランから得られるデータや先生方のご指導を頂き、課題をどうクリアしていくのか議論したい」

他の車種には各々の料金が設定され、バイクのみ軽自動車と同一という「そもそもの前提が間違っている」と思うのは筆者だけだろうか? 残念ながら「重い腰」を動かすには、“ツーリングプランが好評”“ETC搭載バイク”が増加するなどの大義名分が必要かもしれない。ともあれ2輪料金の独立化が具体的な形として見えてきたのは確かだ。

高速料金ほか、問題解決の原動力となっている「自民党二輪車問題対策プロジェクトチーム」とは

自民党オートバイ議員連盟が中心となり、2016年3月に発足。正式な機関として政務調査会に設立され、プロジェクトチームで承認された政策は、即ち国策となる。会合は、議員、関係省庁、2 輪関連団体らが公式に直接議論できる場となるのだ。利用環境の改善には、政治の力が不可欠で、過去には教習所での大型2 輪教習や、高速道路のタンデム解禁など様々な改革に影響を与えてきた。近年は、ツーリングプランのほか、AT限定125cc免許の教習短縮、消費増税時のバイクへのポイント還元なども成果だ。

自民党二輪車問題対策プロジェクトチーム

衆院議員の逢沢一郎氏(写真)がプロジェクトチームの座長。三原じゅん子氏が事務局長を務める。関係省庁の代表者を招いた会合を定期的に行い、3月の会合には総勢22名の国会議員が出席した。

2017年から実現「ツーリングプラン」

「2輪料金は割高!」という自民党プロジェクトチームらの要望を受け、2017年7月から実現したETC搭載バイク限定の「ツーリングプラン」。2輪料金の独立化&定額割引の第一歩となるもので、事前申請しておけば一定のエリアが定額で乗り降りし放題に。料金は最大で半額程度になる。初回は首都圏限定だったが、好評につき、昨年は14コースに拡大され、約7万8500件が利用。2019年は4月から実施中だ。

2019年は北海道と四国をカバーし、19コースに。ただし中国ブロックは対象外で、定額割引が待たれる。

「今後も働きかけを強化したい」

議員や関係省庁と様々な交渉を重ねている2輪団体の一つがAJ。大村直幸会長にコメントを頂戴した。「今後は、現在実施中のツーリングプランの検証と、さらなる拡大実施を進めながら、本来の主張である2輪車の高速道路料金の適正化(普通車の半額)へ近づけたいと思っております。しかし、現状は関係する様々な業界や組織、行政庁の抵抗等により、簡単には行かないという実感を持っております。今後も自民・公明のバイクを応援する議員連盟との連携強化による働きかけの強化と、関係行政機関へのアプローチにより、バイクへの理解者を増やし、また2輪車へのETC付帯を推進し、ETC限定等の実行可能な内容検討も含め、結果に結びつけたいと考えております」。

「AJ」とは

「AJ」とは…………1992年に設立された2輪販売店の組織が「全国オートバイ協同組合連合会」(AJ)。これまで議員と関係省庁に、要望や陳情を行ってきた。様々な2輪関連の改革が行われてきたが、どれもAJの活動があってこそだ。初代会長は吉田純一氏、2017年から大村氏(写真)が会長を務める。

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