「普通2輪免許を取って、念願のバイクを手にしたい」そんなエントリーユーザーの憧れに一番近いのがニーゴースポーツ。普段使いメインか、ツーリングメインか、はたまたサーキット一筋でバリバリか。それぞれフルカウルをまとっていても、得意分野はちょっと違う。
新R25も出揃い、フルカウルの戦いは第2幕へ
カワサキの旧ニンジャ250が、フルカウルニーゴー人気に火を点けてから早10年あまり。その間、ライバルメーカーもどしどしと対抗馬を送り込み、特にホンダが価格も作りも「別格」と呼べるCBR250RRを出したのには世界中が衝撃を受けた。そこで再び勢いづいたフルカウルニーゴー界。昨年にフルモデルチェンジした新ニンジャに加えて、今年は兄貴分のYZF-R1やR6と同系の顔付きと倒立フォークを手にした新YZF-R25も登場した。いずれもCBRと同じ「別格」路線には進まないものの、大幅にスポーツ性能をアップ。これまでは街乗り〜ツーリング〜ワインディングを主体としていたが、これにサーキットも加えるマルチなものにその世界観を広めた。
一方、忘れてはいけないのが、これら3車とは路線を変えて街乗りやツーリング部分のみにもっとフォーカスしたGSX250Rの存在。外国車のRC250も独自の魅力を持っている。はたしてそれぞれの乗り味やいかに。
YAMAHA YZF-R25[サーキット戦闘力ゲット]倒立フォークが◎
ストリートの乗り心地は損なわずにサーキットでも速さを示す。これが新型YZF-R25の最大の凄みだ。従来型のエンジンとフレームを踏襲するが、フロントフォークの倒立化とともに大型車向けでコストのかかるカートリッジ式を新採用。これが走り全体の質を高めている。従来の正立に比べて剛性感があり攻めた際の安心感が絶大。その一方で初期からよく動き、サーキットレベルで強くブレーキングしても奥でグッと踏ん張る。単純に「硬い」わけではなく「しなやか」だ。前後サスのバランスも素晴らしい。リヤサスはフロントに合わせてイニシャルとバネレートをアップしたが、まるでリンク式のように奥でコシを発揮してくれる。ギャップの収束性や追従性も良好で旋回中の安定感や脱出速度も抜群。こうした扱いやすいハンドリングこそ新型の真骨頂であり、サーキットでは大きな武器だ。
低回転からよどみ無く吹け上がり、4000rpmからさらに力感がアップ、トルクの谷を感じさせず1万4000rpmまでキッチリ伸び切るエンジンも、この足まわりによって一段と活きている。パワースペック的には旧型と同じなのに、CBRと勝負できるかもと思わせるタイムを出せるのには驚き。いたずらに高価格路線へ進むのではなく、あくまで手の届きやすいところでここまで性能を上げたのは素晴らしい。
KAWASAKI Ninja250/KRT Edition[決してブレない]軸足はストリート
アグレッシブなスタイルとともにエンジンや車体もまったく新しくなった現行型。スポーツ方向に大きく振ったかと思いきや、従来のニンジャが持っていたハードルの低さはそのままに、速さを上乗せしたのが現行型。SS性能を高めたとは言えハンドルが低いわけでもなく、ライポジ的には街乗り~ツーリングでも違和感のない設定。モデルチェンジしても決してブレていない。
エンジンは発進時からトルクが盛り上がり3000rpmも回せば普通に走れてしまう。以降も谷はほとんど感じさせずキレイに上昇。中速域のパワーバンドは広く、レスポンスも自然だ。電子制御スロットルじゃないのに上も下もスムーズな出力特性に驚かされる。そして従来型より高回転まで回るようになり、サーキットではこれが大きな武器に。
ハンドリングもスポーティになった。倒し込みこそシャープではないが、ほどよく軽快。接地感が高いため、誰でも安心して寝かせていけるフィーリングだ。高速コーナーでもフロントに安定感があり、しっかり荷重をかけて旋回力を引き出せる。大径化した正立フォークにより対応できる速度域が広がったのも大きい。また、従来はサスの動きに固さがありコストダウンの影響を感じたが、現行型はダンピングが効き、奥で踏ん張る。路面追従性も良好で上質なサスだなと感じられる。
HONDA CBR250RR[現時点の最強ニーゴー]作りも走りもすべて別格
サーキット性能を本気で狙った「別格」な作りで、現時点での最強ニーゴーと言っても過言ではない存在。跨ると腰高感があって、低めのハンドルバーに手を伸ばすとしっかりフロントに荷重がかかるスーパースポーツらしい前傾ポジションが得られる。スクリーンは低めでカウル横幅も狭く、サーキットではレーサーらしく身体を小さく折り畳んで乗る感じだ。ただ、腰高だが足着き自体はタンクもスリムでかかとまで接地するため、まったく問題はない。
12500rpmでピークパワーを発するエンジンは、レッドゾーンの14000rpmまできっちり回り、その高回転でのパンチ力が強烈。スロットルレスポンスもスポーティだ。ヤマハ、スズキ、カワサキにない電子制御のライド・バイ・ワイヤーを持ち、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツ+」と3段階のライディングモードがあるが、「Sports+」だとちょっと行き過ぎなくらい。街乗り用のコンフォートモードでも、低速から力強いトルクとキレのあるレスポンスでスポーティだ。あまりの元気良さに街中では物足りなくなり早く峠に行きたくなる。
ハンドリングはまさしくスーパースポーツで、寝かし込み、切り返しも躊躇なくスパッといける。これは倒立フォークやトレリス構造で再現したツインスパーフレームと、フロントまわりにしっかり感を持たせたスーパースポーツのノリに忠実な作りのおかげだ。そのぶん価格もズバ抜けて「別格」だが、速さを求める人にとって、それだけの価値は十分にある。
「別格」だけに妥協しない
SUZUKI GSX250R[乗り手は超余裕]スゴそうなルックスでも
超本格的でカッコよさの光るスーパースポーツルックス、しかし乗り味は極めてフレンドリーで扱いやすい。そんな2つのギャップが魅力となっているがGSX250Rだ。GSRシリーズ用をルーツとするエンジンは、最高出力が24psとマイルド。だが、低中回転域を重視したセッティングは発進時や市街地での極低速走行時にアドバンテージとなる。半クラッチを多用しなくても、平地で1速なら歩くようなスピードでエンストすることなく走り続けてくれる。エンストの不安が減るので初心者やリターンライダーには嬉しい仕様だ。加速性能は高回転域までフラットに吹け上がり、どこかで極端にトルクやパワーが落ちることもない。どの回転域でも思い通りのパワーが得られ、峠でもイージーにスポーツライディングが楽しめる。車格は前後方向がやや大きめ。そのためコーナリングはしっとりとした安定感があり、過敏すぎないフィーリングだ。
ライバルよりやや車重があるが、実際のライディングでそれをネガに感じるシーンはほとんどない。極端なクセもなく、どんなコーナーもスルリとクリアしていける。ブレーキはコントローラブルで制動力も必要十分だ。スゴそうなバイクに乗っているけど、実は超余裕。ツーリングや街乗りでも快適に乗れるというのはエントリーライダー中心に大きなメリットだ。
KTM RC250[クラス最強シングル]KTMらしい鋭い切れ味
エンジンはDOHCの水冷シングル。しかし125/200系のスケールアップではなく、RC390をベースにボアとストロークを縮小したもの。これは耐久性などを優先した結果だと言う。それでもエンジンの単体重量は37.2kgと非常に軽く、車重も半乾燥で147kgと同じシングルのホンダCBR250Rより約10kg前後軽い。そのエンジンは、KTMらしい張りのあるレスポンスと快活な吹け上がりが特徴で、パワーとシャーシのバランスもベスト。スリッパークラッチは、減速の度合いが大きなヘアピンの進入でその効果を実感。クラッチレバーを多少ラフに離してもリヤタイヤがホッピングしないので倒し込みに集中できる。
ハンドリングは1次旋回に優れたスーパースポーツらしいもので、標準装着のピレリ・ディアブロロッソⅡの高いグリップ力と相まって、切れ味鋭いスポーティなライディングに没頭できる。そんなKTMらしいレーシーさが前面で際立つRC250だが、ライディングポジション自体は軽い前傾でヒザの曲がりも穏やかなので、ツーリングでも疲労は少なめな印象だ。世界的に見ると、小排気量クラスは300cc前後と125~150ccの二極化にあるなか、日本やインドネシアなどアジアの一部地域に向けてわざわざ“250”を投入してくるところにKTMのヤル気が感じられる。そんなアツさが走りに現れたマシンだ。
※表示価格はすべて8%税込です。
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