第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

佐藤寿宏のレース通信

3大ワークスのぶつかり合い! 後味の悪い幕切れとなった2019年の鈴鹿8耐

  • 2019/7/29

なんとも後味の悪い幕切れだった。レース序盤は#12 YOSHIMURA SUZUKI MOTUL RACINGがレースをリードしたが、その後方につけていた#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM、#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8H、#33 Red Bull Hondaの駆け引きが始まっていた。近年にない僅差のトップ争いは終盤まで緊張感を保ち続け……。

二転三転したレース結果、しかしジョニーは明らかに速かった

トップ3が順位を入れ替えながらの熱い戦いは残り10数分というところまで続きました。レース終盤になると#33 Red Bull Hondaの高橋巧が走るとトップに、#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hのジョナサン・レイ(ジョニー)が走るとトップに立つという展開が続きます。そして残り約1時間半というところで高橋巧に代わり、そのまま走り切るかと思いました。なぜなら序盤にセーフティーカーが入ったことで#33 Red Bull Hondaは、34周まで1スティント目を引っ張り、他のチームよりも3、4周も長く走っていました。燃費的にもギリギリ行けるのか!? 6回ピットか!? と思いましたが、残り45分でピットに入り、タイヤ交換と給油を行い、ライダー交代はせずにピットアウト。その後方からは、ジョニーが、ここぞとばかり猛追。200周目にファステストラップとなる2分06秒805を記録すると、その勢いのまま高橋巧をパスし、一気に引き離して行きました。あとはチェッカーフラッグを受けるだけと思われたのですが……。

残り5分というところで#2 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAMのGSX-R1000が1コーナーにさしかかったところでエンジンブロー。そのまま白煙を吹きながら、しばらくコース上を走り続けてしまいました。本来なら、この時点で赤旗、もしくはセーフティーカーを導入という場面だったでしょう。このころ、おまけに小雨も降っており、路面はすべりやすい状況でした。そして、オイルの餌食になってしまったのが#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hのジョニーだったのです。S字コーナーで転倒した瞬間、グランドスタンドからは大きな悲鳴が上がりました。このジョニーの転倒の直前に#25 Honda Suzuka Racing Teamもオイルに乗り転倒したことから赤旗が提示。そのままレース成立という稀に見るフィナーレとなったのですが、暫定表彰式に現れたのは、#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMと#33 Red Bull Hondaと#1 F.C.C. TSR Honda Franceという面々。#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hは、5分以内に車両保管場所に戻れなかったため失格という暫定結果でした。

ヤマハにとっては幻の頂点となってしまったが、運営の裁定を受け入れ、抗議することはなかった。

これに対し、#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hは、プロテスト(抗議)を行い、EWCルールには、5分以内に車両保管場所に戻るという記載はなく、赤旗が提示される1周前の順位がレース結果となるということが発表されました。これにより#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hが優勝。#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAMが2位、#33 Red Bull Hondaが3位という結果になりました。これも、また暫定である、という注釈がありましたが順当な結果に落ち着いたと思いますね。

ワークスチームで参戦し、26年振りの優勝という悲願を達成したカワサキ。表彰台の中央に乗った姿をファンに見せることはできませんでしたが、来年の鈴鹿8耐でもジョニーやハスラムに強くて速い姿を見せて欲しいものです。

当初の暫定結果が覆ったことで、記者会見は表彰台と異なる顔ぶれに

当初の暫定結果が覆ったことで、ホテルに戻っていたKRTの面々が呼び戻された。二転三転はしたものの、やはり3大ワークス強し! を印象づけた。※現状ではまだ“暫定”が付き、最終結果の発表には至っていない

優勝:#10 Kawasaki Racing Team Suzuka 8h

ジョナサン・レイ

暫定結果が覆り、僕たちが優勝となって本当になんと言えばいいか分からない。すでに僕たちはがっかりして、ホテルに戻ってディナーをしようと思っていたらマネージャーが来て“僕たちが優勝した”と聞いたからね。本当にびっくりしたよ。決勝を2人で走ることは今朝決まったことだったけれど、筋肉もつっていて辛かったが、レオンも体調が悪いのに4スティントも走ってくれた。チームワークのおかげで優勝でき感謝している」

レオン・ハスラム

レース結果が変わってジェットコースターのような気分だね。優勝できなくてがっかりしたのに、今は優勝したと聞いて喜んでいるからね。鈴鹿8耐は本当にタフなレースだと実感したよ。実は体調が万全ではなかったが、チームメイトがそれをカバーしてくれた。本当に感謝している。

トプラック・ラズガットリオグル

8時間ずっと観ている鈴鹿8耐も辛かったよ(笑)。でも、僕たちは優勝することができたから、本当に幸せだよ。チームメイトに感謝したい。

「疲れたよ(笑)」とおどけるのは右端のラズガットリオグル(走っていない)。

2位:YAMAHA FACTORY RACING TEAM

中須賀克行

今年はレースウイークに入ってから初めて3人が揃うことができましたが、楽しくレースを戦えたと思います。レース結果は二転、三転しましたが、ライダー3人がそれぞれ100%の力を出し切れたと思いますし、来年につながる鈴鹿8耐になったと思っています。

アレックス・ローズ

レース結果についてはコメントしたくないですが、私たちにとって鈴鹿8耐はとても重要なレースであり、チームメイトでもあり、親友でもある中須賀選手と今年も鈴鹿8耐で組めたことは最高でした。

マイケル・ファン・デル・マーク

不思議な終わり方になってしまったがけれど、3人で力を合わせて、それぞれが似たようなペースで走ることができましたし、ベストを尽くせたと思っています。来年もまた、この場に来ることができればいいですね。

3位:Red Bull Honda

高橋巧

自分の中ではいいペースで走れたし、こんなに攻めたことはなかったので、自分の中ではこれ以上ないくらい出し尽くしました。ステファン選手も2人で乗ることになっても頑張ってくれたし、清成選手も最後まで決勝を走れるようにと努力してくれました。結果には満足していないけれど、この結果は受け止めて、また来年チャンスをいただけるのであればチャレンジしたいですね。

清成龍一

決勝は走れず、予選もたいして走っておらず、チームメイトの力になれず申し訳なく情けないです。チームメイトのおかげで表彰台に上がらせてもらったことは感謝しています。またチャンスをいただければ全力で走れるようにしたいですね。

ステファン・ブラドル

鈴鹿8耐という特別なレースに出場できうれしかったし、レース中は走っていてもファンの応援を感じられて励みになりました。僕にとっては大きなチャレンジとなった週末でしたが、このレースがとても好きになった。来年もまた、戻ってきたい。

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佐藤 寿宏(ことぶき)

佐藤 寿宏(ことぶき)

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ロードレースを追いかけること20年以上のフリーライター。国内外の様々なレースを現場取材しており、若手ライダーにも慕われる。愛車はスバル・レガシィから乗り換えたレヴォーグというボクサー党だ。