電子制御を拡充、新型サスペンションも

ヤマハ 新型YZF-R1/R1M 2020年モデルの変わった点&国内仕様は来夏

突如登場したヤマハの新型YZF-R1およびYZF-R1Mは、来たる2020年施行のユーロ5排出ガス規制に対応するだけでなく、走りを全体に底上げするパフォーマンス向上が図られている。見た目にも特徴的な空力ボディと電子制御の項目追加、そして新型サスペンションの投入など。一方でパフォーマンスにあまり影響のない部分は従来型を踏襲している。

ユーロ5対応のエンジンと空力ボディ、そして新型サス

新型YZF-R1/R1Mが前触れなく発表されたのは既報どおり。マイナーチェンジという触れ込みだが、その内容は走行パフォーマンス向上に的を絞ったもので、戦闘力を増してきた外国車勢を迎え撃つ体制は万全のようだ。

エンジンは、新デザインのフィンガーフォロワーロッカーアームやカムロブのプロファイル刷新のほか、吸気レイアウトの更新でスロットルバルブと燃焼室の距離を近づけ、新しいボッシュ製10ホールインジェクターをφ45mmのスロットルボディに設置。……といった細部にわたる変更を受けた結果、2020年から施行されるユーロ5排出ガス規制に対応しながら、200馬力をキープしつつも高回転域のトルクアップを果たしている。

注目したいのは電子制御のアップデートだ。ライドバイワイヤ採用のスロットルは新たにAPSG(アクセルポジションセンサーグリップ)を採用。従来のコーナリングABSに2モードのBC(ブレーキコントロール)が加えられ、さらにエンジンブレーキマネジメント(EBM)も追加することで、もっともタイム差に影響するブレーキングのパフォーマンス向上を果たしている。

YZF-R1/R1Mとも、リヤビューに大きな変化はなく、ブリヂストンの新型タイヤ・バトラックスRS11を履いているのとR1Mのテールカウルがカーボン製となったことが目立つぐらい。フロントビューは、カウルデザインの変更により新世代を感じさせる佇まいとなった。[写真はR1M]

デザイン変更もパフォーマンスアップを狙ったもので、MotoGPマシン・YZR-M1で得たテクノロジーを反映したボディワークにより、エアロダイナミクス効率の5%以上もの向上と、さらなる人車一体感を強化を図っている。

YZF-R1が採用するサスペンションは前後KYB製。倒立フロントフォークは内部のシム構造をアップデートし、リヤもそれに対応したセッティングへと改められた。

上級バージョンとなるYZF-R1Mは、オーリンズ製の新型倒立フォークを採用したほか、カーボン外装の使用領域をシートカウルにまで拡大。また、燃料タンクカバー前端には個別のシリアルナンバープレートが設置される。欧州では7月25日に予約受付サイトが稼働開始、そしてデリバリーは9月となっている。

さて、気になるのは日本仕様が設定されるのか、それともしないのかだろう。情報筋によれは日本仕様は予定アリで、2020年夏頃に発表されたのち同年秋頃にデリバリー開始となりそうだ。

YZF-R1Mで見る新旧の違い

YZF-R1/R1Mともに変更を受けているが、R1のほうのサスペンションは内部構造のみのアップデートで見た目にはわからない。というわけで、見た目に変化がわかりやすいYZF-R1Mのほうで見比べてみたい。

表情を決定づけるポジションライトの位置は新型でグッと下がり、ナックルガードは面積を拡大。その下のスリットは空力効果を狙ったもののようだ。アッパーカウルの隆起も従来より大きくなり、新世代らしい表情を表現している。
R1Mが採用するオーリンズの新型フォークはガスチャンバー設置タイプに。左の従来型に比べると、キャリパーマウントブラケット中央にチャンバーが内蔵されているのがわかる。ガスチャンバー内では0.6Mpaの内圧がかけられ、リバウンドストローク時のキャビテーション(サスペンションオイルの泡立ち)を抑制する。
同アングルの写真素材が揃わなかったが、新型R1Mはテールカウルがカーボン製になっている。形状変更は特にないようだ。
メーター表示は大きな変更こそないものの、2モードのBC(ブレーキコントロール)と3モードのEBM(エンジンブレーキマネジメント)の項目が追加になり、同一ページにあったERS(電子制御サスペンション)の項目が別ページへ移動。2018年モデルから追加されたクイックシフトのダウン側などはそのまま引き継がれている。

YZF-R1Mで調整できる電子制御は下記のとおり。このほかGPSロガーやスマホでセッティングできるアプリなども備えている。スタンダードのYZF-R1はサスペンションも電子制御なしのKYB製だ。

YRC:走行モードを4種類のプリセットに一括変更できる。個別調整可。
PWR:パワー特性。アクセル操作に反応や最高出力を制御する。
TCS:トラクションコントロール。加速時のホイール空転に対応。
SCS:スライドコントロール。旋回時の横滑りに介入する。
LCS:ローンチコントロール。回転を抑制しスタートダッシュを決めやすく。
QS▲:クラッチを使わずにシフトアップ可能に。
QS▼:スロットルを閉じたままシフトダウン可能に。
LIF:リフトコントロール。加速時のウイリーを抑制する項目。
EBM:エンジンブレーキマネジメント。エンブレの利きを調整。
BC:ブレーキコントロール。制度~旋回時のABS特性を設定。
ERS:電子制御サスペンションのモード変更や調整を行う。

新型YZF-R1Mのディテール追加

ここでは、前記事で紹介しきれていなかった写真を中心に解説。

メーターはラップタイム表示に切り替えることも可能。電子制御の各項目の状態も一目両全だ。通常のモードでも電子制御等の表示は変わらず。
吸気レイアウトを見直し、スロットルボディを燃焼室に近づけたほか、新デザインのフィンガーフォロワーロッカーアームを採用するなどして燃焼効率と高回転域のパフォーマンスを向上したエンジン。200psは変わらないが最大トルクは0.1kg-mアップしており、このモデルチェンジがただのユーロ5対応ではないことを示している。
YZF-R1Mが装着しているカーボンパーツ群。テールカウルにまで拡大(従来は樹脂)したことで、質感向上のみならず重心から遠い位置のパーツの軽量化にも貢献している。

[YAMAHA YZF-R1M 2020 model]主要諸元■全長2055 全幅690 全高1165 軸距1405 シート高860(各mm) 車両重量202kg■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 998cc 200ps/13500rpm 11.6kg-m/11500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L■キャスター24度 トレール102mm ブレーキF=φ320mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ220mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=200/55ZR17 ●価格未定 ●発売時期:9月 ●色:カーボン×青 ※諸元等はすべて欧州仕様

[YAMAHA YZF-R1 2020 model]主要諸元■全長2055 全幅690 全高1165 軸距1405 シート高855(各mm) 車両重量201kg■水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ 998cc 200ps/13500rpm 11.6kg-m/11500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L■キャスター24度 トレール102mm ブレーキF=φ320mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ220mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●価格未定 ●発売時期:9月 ●色:青、黒 ※諸元等はすべて欧州仕様

新型YZF-R1/R1Mのギャラリーをお楽しみください

YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1[2020 model]
YAMAHA YZF-R1[2020 model]
YAMAHA YZF-R1[2020 model]
YAMAHA YZF-R1[2020 model]
YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1M[2020 model]
YAMAHA YZF-R1[2020 model]
YAMAHA YZF-R1[2020 model]

関連する記事/リンク

関連記事
2019/07/14

2015年に登場し、今年の鈴鹿8耐では5連覇を狙うなど、そのパフォーマンスに翳りは見えないヤマハ YZF-R1/Mだが、ライバルをさらに突き放すべく5年振りに新型を投入することがわかった。欧州で発表さ[…]

関連記事
2019/07/17

さらなる続報だ! ヤマハの新型YZF-R1/R1Mがモデルチェンジした内容については既報通りだが、新たに新作フィンガーロッカーアームと、新作シリンダーヘッド&インジェクターの図版を入手したのでお届けし[…]

関連記事
2019/05/01

スプリントにおける究極の「走る・曲がる・止まる」を追求したカテゴリー。1000ccは、スーパーバイク世界選手権(SBK)や世界耐久などレースを視野に入れた公認取得マシンとしての性格も併せ持つ。今や20[…]