ヤマハのスターライダーがドラマチックなレース展開を演じた1985年の物語に続くのは、TT-F1レギュレーションで製作されたワークスマシンの紹介編だ。ケニー・ロバーツと平忠彦が走らせたFZR750[OW74]をピックアップし、それに続くマシンも掲載していこう。
※ヤングマシン2016年8月号より復刻
- 1 ワークス8耐レーサー YAMAHA FZR750[0W74]1985:テック21伝説の幕を開けた水冷直4ワークスレーサー
- 2 ベースマシン YAMAHA FZ750[1AE(海外)/1FM(国内)1985]:ジェネシス思想の原点モデル
- 3 憧れのテック21カラー
- 4 ヤマハ ワークス8耐レーサーと公道市販モデルを一挙紹介!
- 5 空冷4気筒のXJ750EがXJ750Rに[1981-1984]
- 6 まったく新しいジェネシス思想の水冷4気筒が登場[1985-1986]
- 7 ワークスからのフィードバックがベースモデルを進化させ始める[1987-1988]
- 8 伝説の市販車、オーダブリュ・ゼロワン(OW-01)が誕生![1989-1991]
- 9 スーパーバイク前夜、TT-F1ワークス8耐レーサーが最後の輝きを見せる[1992-1993]
- 10 難波江行宏のマニア流チェック「水冷5バルブ前傾エンジンの冒険」
- 11 関連する記事/リンク
- 12 オートバイの写真をまとめて見る
ワークス8耐レーサー YAMAHA FZR750[0W74]1985:テック21伝説の幕を開けた水冷直4ワークスレーサー
ヤマハ初の水冷直4でありデビュー間もないFZ750をベースに、専用設計のアルミデルタボックスフレームやF.A.I.で武装。シリンダー前傾角(対地)を45度→35度にしてホイールベースを短縮している。
ベースマシン YAMAHA FZ750[1AE(海外)/1FM(国内)1985]:ジェネシス思想の原点モデル
重厚長大化するビッグバイク開発に背を向け、コンパクト&ハイパワー=スポーティを追求して登場。ヤマハ初となる水冷750ccエンジンはDOHC5バルブや前傾角45度+ダウンドラフトキャブといった先進的な機構を採り入れ、US仕様では110psを発生。フレームも前傾エンジンの低重心を最大限に活かすように作られ、このトータル設計思想は「ジェネシス」としてヤマハのバイク作りの根幹となった。
憧れのテック21カラー
ヤマハ ワークス8耐レーサーと公道市販モデルを一挙紹介!
※各車の写真は図の下方にあります。
空冷4気筒のXJ750EがXJ750Rに[1981-1984]
まったく新しいジェネシス思想の水冷4気筒が登場[1985-1986]
ワークスからのフィードバックがベースモデルを進化させ始める[1987-1988]
伝説の市販車、オーダブリュ・ゼロワン(OW-01)が誕生![1989-1991]
スーパーバイク前夜、TT-F1ワークス8耐レーサーが最後の輝きを見せる[1992-1993]
難波江行宏のマニア流チェック「水冷5バルブ前傾エンジンの冒険」
’85年のFZ750発売後、メーカー系のチューニングパーツも市販を開始。翌年のリザルト欄にはFZの名が多数確認出来ます。各コンストラクターもオリジナルのシャーシを開発し8耐に臨んでいますが、その中に異彩を放つマシンが本戦に登場します。
ダイシン・DICレーシングは2台のFZ750をエントリー。ゼッケン#34=藤本泰東/鈴木博組は、ダイシンのお家芸とも言える後方排気に改造され、同社オリジナルのアルミフレームに搭載。まさにダイシンチューンの集大成的マシンで、本戦結果は62位、21周リタイヤでした。なお、後方排気については、エキゾーストパイプのストレート化による排気抵抗の減少により、効率的な燃焼が得られると言われており、同社は2スト、4ストともに幾つかのエンジンを後方排気にモディファイしています。中でも4ストのホンダ・CBXと2ストのヤマハTZをベースとするマシンは全日本選手権に参戦して注目されました。
理論的な有用性を語る者が多い技術でも、実践するとなると幾多の問題が山積します。それをあえて実行する姿には、ある種の感銘さえ覚えます。
DICのもう1台(ゼッケン#33車)は通常の前方排気。フロントキャリパーはブレンボ、前後ディスクとリヤキャリパーはスズキ、ホイールはスズキ用マービック、フロントフォークはTZ、スイングアームと乾式クラッチはSUGOとバラエティーに富んだパーツを使用。多数のアルミ角パイプを組み合わせたオリジナルフレームは、当時、7N材(アルミ合金)の入手が難しかったための構成と思われる。
前後片持ち――2輪でこの言葉を聞けば、誰しもあの“elf”が脳裏によぎります。鈴鹿8耐にHONDA elf(RS1000)が現れた2年後の’85年、再び前後片持ちマシンが鈴鹿に登場。それがFZエンジン搭載のリーマンLMR-1です。設計はルマンにも出走したレーシングカー・シグマMC73を手掛けたエンジニアで、4輪の長所を2輪に組み込んだ先進的野心作だったが、残念ながら予選通過ならず。
●文:高橋 剛/飛澤 慎/沼尾宏明/宮田健一 ●写真:鶴身 健/長谷川 徹/真弓悟史
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