降りしきる雨のなか、カワサキが新投入した「電子制御サス」採用モデルの2台をチェック。驚異的な反応速度を持つ最新のショーワ製電サスは、スーパーチャージドツアラーおよびスーパースポーツ(後編にて紹介)という異色ジャンルとどんな化学反応を見せるのか!? ツーリングに連れ出して徹底チェックした!
テスター:丸山 浩(まるやま・ひろし)ご存じ本誌メインテスター。実は日本一周の経験があるツーリング好きで、ヤマハFJR1300のオーナーでもある。それだけに電サス仕様への興味は満々だ!
- 1 [スーチャーツアラー兄弟比較]Ninja H2 SX SE+ vs SE
- 2 思わず乗り換えたくなる、SE+はそれほどの出来映え
- 3 万能ツアラーとしての完成度が1ステージ上へ
- 4 RIDING POSITION(身長168cm/体重61kg)
- 5 [ライター 沼尾宏明]2nd OPINION
- 6 マシン解説:Ninja H2 SX SE+
- 7 初のスマホ連動は便利!!
- 8 プリロード変更で足着き性も変化
- 9 国産では珍しいスマホ接続機能。設定が一段とラクチンだ
- 10 スーチャーは不変もバッジは異なる
- 11 リヤは上級サスに変更し、セミアクティブ化
- 12 小キズ修復ペイントも採用
- 13 3グレードが揃い踏み!
- 14 グレード別 装備比較
- 15 関連する記事/リンク
- 16 オートバイの写真をまとめて見る
[スーチャーツアラー兄弟比較]Ninja H2 SX SE+ vs SE
思わず乗り換えたくなる、SE+はそれほどの出来映え
路面状況に応じてリアルタイムに減衰力を変化させる魔法の脚こそ電子制御サスペンション。セミアクティブサスとも呼ばれ、従来はオーリンズやボッシュら海外勢の独壇場だった。だが’18年、ショーワが国産サスメーカー初の電サスを開発。これをZX-10Rに搭載した「SE」がカワサキ初の電サスモデルとして市販化された。そして’19年型で、スーパーチャージャー搭載のH2 SXにも最上級グレードとして電サス仕様の「SE+」が加わった。
電サスのKECS(カワサキエレクトロニックコントロールサスペンション)は、反応速度が従来の電サスより2倍以上速く、制御の正確性にも優れるとのこと。俄然期待が高まる中で試乗した。
まずはH2 SX SE+とSEを比較テストしてみた(続編記事でNinja ZX-10R SEに試乗)。結論から言えば……SE+は非常にツアラーとして優秀。私はFJR1300を普段の足として愛用しており、現在は4台目の’14年型が愛車だが、真剣に乗り換えを検討したくなるほどの出来だったのだ。
そもそもH2 SXは、スーチャーによる唯一無二のエンジンが魅力のツアラー。一般的な自然吸気直4より軽やかに、モーターのように回る洗練されたフィーリングが心地いい。中低速でマイルド、6000回転以降ではスーチャーが効いてパキーンと力強くなる。
万能ツアラーとしての完成度が1ステージ上へ
レスポンスが良好なのにギクシャク感のないエンジンに加え、車体も軽快だ。FJRはもちろん、同門のZX-14R、ハヤブサらライバルより常にハンドリングに軽さを伴う。足着き性も大型ツアラーにしてはイージーだ。
こうした素性は不変ながら、SEとSE+の乗り味はかなり異なる。サス設定が硬めのSEに対し、SE+は全般的にソフト。SE+には、「スポーツ」「ロード」「レイン」、任意設定の「ライダー」の4モードが用意され、3つの出力特性&トラコンと同時に、3種のサス設定も連動して一括変更される仕組みだ。
電サスの違和感は皆無で、反応速度や正確性に関しては公道レベルでは試しきれなかったが、実に自然。さらにモードを変更すると明確にサスの動きが変化する。最もソフトなレインはよく動き、乗り心地が非常にいい。中間のロードもSEより柔らかく、スポーツにしてやっとSEと同等の硬さに。途方もない性能のマシンだけに、SEでは硬いサスを標準にしたのだろう。
一方、SE+は電サスを用いることで、通常の走りはソフトでも、ブレーキングやコーナリング時では瞬時にダンパーを硬めてくれる。実際、ロードやレインモードで走っていても、サスが奥に入る場面ではノーズダイブを抑えてくれていることを実感できた。特にレインは、濡れた路面で安心感があるだけでなく、普段使いも優秀。ギャップをしっかり吸収し、のんびりと下道や高速をツーリングするのに最適だ。
SEは同様の場面でゴツゴツ感があり、姿勢変化にも乏しい。峠を攻めたり、超高速クルーズならSEの設定で問題ないが、そんなシーンはほぼない。その点、普段使いもハードな走りにも瞬時に対応できるSE+は、H2 SXが本来持っているポテンシャルを常に発揮可能。ネイキッド的な気軽さとツアラーとしての安定感を併せ持ち、まさに「2台持ち」の感覚と言えるだろう。
スマホとの連動機能で、出力とサス設定を任意に変更できるのも便利。自分なら、日常用にフルパワーと柔らかいサスの組み合わせをオススメしたい。メールや電話の着信をメーターパネルに表示する機能は、相手の名前を表示して欲しいところだが、インカムを使わない人には役立つはずだ。
加えてSE+専用のブレンボキャリパー「Stylema」も絶品だった。パッドによる部分も大きいのだろうが、SEは2次曲線的に制動力が立ち上がる印象。SE+は、レバーを握った分だけ利き、しかも常に最初のタッチが柔らかい。スーッと握ると奥でギューッと止まり、それ以上制動力が立ち上がらない。ノーマルは奥でギャーン、ンッとなるため、コントロールする手間があるのだが、SE+は実に使い勝手がいい。
優れた素性に電サスを追加したことでオールラウンダーとしての実力をより高めたSE+。より豪華に、付加価値が高まり、ややキャラが被り気味だったZX-14Rとの差別化も進んだと言えよう。H2 SXには3グレードあるが、私ならSE+の一択。SEから約38万円高だが、その価値は十分ある。
ただし、ここまで豪華ならスクリーンの調整機構は欲しいところ。また、サスのイニシャルをボタン一つで変更でき、車高を増減できる(詳細は後述)が、シート高の電動調整機構も開発してくれないかな、と思った。シートの厚みを変更できれば、ヒザの曲がりが緩やかになり、ロングランがよりラクになる。こんな贅沢を考えてしまうのもSE+の完成度が素晴らしかったからこそ。試乗中にFJRオーナーとして羨ましくなる場面が何度もあった。……SE+は次の愛車候補筆頭である。
RIDING POSITION(身長168cm/体重61kg)
[ライター 沼尾宏明]2nd OPINION
SEは街中レベルでは、しっかり荷重をかけないと曲がってくれないので若干気を遣う。片やSE+は、一般ライダーの私でもモード変更でサスの動きがしなやかに変化するのを体感できた。扱いやすさや気軽さは断然SE+だ。取材日は終始雨だったが、SE+のレインモードが実に心強かった!
マシン解説:Ninja H2 SX SE+
初のスマホ連動は便利!!
プリロード変更で足着き性も変化
国産では珍しいスマホ接続機能。設定が一段とラクチンだ
電サスは、リアルタイムの可変制御に加え、前述のとおりリヤのプリロード(初期荷重)もボタン一つで変更可能。SEも手動で調整できるが、SE+は「ソロ」「ソロ+荷物」「タンデム+荷物」の3モードがあらかじめ設定され、走行中も変更OKなのがうれしい。
カワサキ初のブルートゥースによるスマホ接続機能にも注目だ。これも外国車では採用例が多いが、国産車では導入が進んでいないアイテムの一つ。SE+では、専用の無料スマホアプリ「RIDEOLOGY THE APP」を使うことで、各モードや電サスの詳細な設定が可能。車両のスイッチとメーターでも設定できるが、タッチパネルのスマホの方がより操作が簡単だ。また、走行ルートのほか、最大バンク角、車速、水温、燃費などが記録され、ツーリング後に閲覧可能。H2 SXのある生活が一段と楽しくなるはずだ。
スーチャーは不変もバッジは異なる
リヤは上級サスに変更し、セミアクティブ化
小キズ修復ペイントも採用
3グレードが揃い踏み!
STDは200万円を切る価格でスーチャーを堪能できるのが魅力。SEは快適なツアラー装備を満載。SE+はより豪華だ。3車とも’19で国内仕様が設定され、ETC2.0車載器を全車標準装備する。
Specification■全長2135 全幅775 全高1260[1205] シート高820 軸距1480(各mm) 車重262【260】[256]kg(装備)■水冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ998cc 最高出力200ps/11000rpm 最大トルク14.0kg-m/9500rpm 燃料タンク容量19L■ブレーキF=Wディスク R=ディスク■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ※【 】内はSE、[ ]内はSTD
グレード別 装備比較
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