スパチャツアラーの実力検証!

ニンジャH2 SX vs ニンジャZX-14R・速攻比較インプレッション!

市販車初のスーパーチャージドエンジンを搭載するカワサキ・ニンジャH2。そのツアラー仕様として3月1日に発売されたばかりの「ニンジャH2 SX」に試乗することができた。スペック的には同じ200psを発揮する、1441ccの自然吸気エンジンを搭載するメガスポーツ・ニンジャZX-14Rとの比較も交えて、その印象をレポートする。

「長/低」の14R、「短/高」なH2 SX

今回のレポートでは、SX/14Rともに高速道路を100km程度、郊外の一般道を20〜30kmに加え、クローズドのテストコースもわずかに走行。高速道路は交通量も少ない路線だったため、メガスポーツらしい走りを満喫することができた。ちなみに試乗したSXはコーナリングライトやクイックシフターが非装備のSTDで、14Rはオーリンズ製リヤショックを装備するハイグレードだ。

またがってみると、14Rは車体が長く、重心を低く感じるのに対し、SXは前後に短く、重心も高めでやや腰高。アップハンドルこそ付いているが、メガスポーツよりもスーパースポーツに近い雰囲気と言えるかもしれない。シート高は14Rが800mm、SXが820mmで、身長170cm・体重70kgの筆者だと足着き性に大差は感じられなかったが、重心の違いから来るものか、14Rの方が微速で動くような場面の安心感は高いように感じた。

<カワサキ・ニンジャH2 SX>コーナリングライトやクイックシフターを持つ上位機種・H2 SX SE(トップ画像の車両)も存在する。

<カワサキ・ニンジャZX-14R>こちらはブレンボ製ブレーキシステムやオーリンズ製リヤショックを標準装備する上級仕様「ハイグレード」だ。

ロー2灯/ハイ2灯の四眼ヘッドライトを持つ14Rに対し、H2 SXはニンジャH2譲りのプロジェクター式単眼。

H2 SXの車体左側にはヘッドライト右横の吸気口からスーパーチャージャーへの導風ダクトが存在。燃料タンクは19L。

H2 SXの右1本出しと異なり、五角形の左右出しマフラーを持つZX-14R。22Lの燃料タンクはシート下まで大きく回り込む。

「バランス型スーパーチャージャー」の印象は?

注目のエンジンだが、SXはとにかくアクセル操作への反応がいい。特に3つあるエンジンモードのうち、フルパワーのFモードでのレスポンスはツアラーの範疇から飛び出るほど鋭く、256kgと軽くはない車体をスパッ、スパッと移動させられる。出力が50%に絞られるLモードではかなり穏やかになるものの、この鋭さがゼロになるわけではない。

H2 SXのメーターはニンジャH2と共通意匠のモノクロ反転液晶型。上位機種のSEではカラー液晶となる。

14Rのメーターは今やクラシックな趣すらある指針式の二連。上部に外気温やバッテリー電圧などを表示する液晶表示を持つ。

スーパーチャージャーを備え、200ps・14.0kg-mを発揮する998cc直4のフィーリングは「速く走るための超強力な武器」という感じ。振動もさほど感じさせずシュワっと一直線に回転上昇し、気づくととんでもないスピードに……というタイプだ。8000rpm 位から「キタキタ〜ッ!」と感じる、ナマナマしいブースト感はH2には敵わないが、それがカワサキの狙った「バランス型スーパーチャージャー」の特性なのだろう。余談ながら、スロットルをオフした際にブローオフバルブから過給圧が抜ける「ピュルルル」という音は、外部にはよく響くものの、ライダーには残念ながらさほど聞こえない。

14Rは「漢カワサキ」度が濃厚

対する14Rは、アクセルの開閉に対する反応がとにかく滑らかだ。いわゆるドンツキなどは皆無で、いい意味でキャブレター車のような、ちょっとタメ感のある反応がライダーを急かさない。スポーツ性を重視するライダーだとかったるいかもしれないが、高めのギヤで、2〜3000rpmくらいからスロットルを開けたときの「ズロオォ……」という音や振動はいかにも「カワサキ・ヨンパツ」といった趣で、以前ZZ-R1100を所有していた筆者は思わず膝を打ちたくなった。「そうそう、コレコレ!」なのだ。

いい意味で昔ながらの「カワサキ感」を残す14R。各部の上質感あふれるタッチも魅力の「高級車」だ。

もちろん、SXと同じ200psを公称し、トルクに至っては16.1kg-mを炸裂させる1441cc直4の力感も強烈だ。スロットルを開ければ瞬間ワープなのはSX同様だが、高回転へ突入した際、速度上昇とともにバイブレーションがいっそう鋭くなる感じなど、旧来の内燃機関らしいライブ感も備えている。シフトタッチの良さも14Rの美点だ。

車体の印象もかなり異なる。アルミ製のモノコック・バックボーンフレームを持つ14Rは、ドッシリした重量感や、「高級」の2文字がふさわしい作動性のサスペンションなど、安心感のカタマリのよう。もちろんスポーティな走りにも対応するのだろうが、大舟に乗ったかのように、バイク任せで淡々とハイペースを保つことも許容してくれる。

エンジンのシリンダーヘッド上を通る、14Rのアルミ製モノコック・バックボーンフレーム。’00年のZX-12Rで登場し、以来20年近く熟成を重ね続けてきた、カワサキ独自のフレーム形態だ。

対してSXは、軽快感や入力に対する反応の鋭さが表立つ。鋼管製トレリスフレームを核とする車体は柔らかさすら感じさせ、「乗せてもらえる」14Rに対して、ライダーが能動的に操ってこそ面白さが見えてくるように感じられた。筆者の技量(+日本の法律)ではとても踏み込めない領域だが、200km/hオーバーですらライダーのアクション次第でイキイキと走るのだろう。路面の状況やライディングがリアルに車体挙動に反映される、インフォメーションの多さやリアクションの大きさも14Rとは一線を画す。ここでもドッシリ感よりも「運動性」なのだ。

カワサキが’15年のニンジャH2/H2Rから採用している、鋼管トレリスフレームをH2 SEも踏襲。製造の手間は掛かるが、微妙な剛性の調整が行いやすく、鉄パイプのしなりが生むフィードバックの豊かさも持つ。

ベンツかBMWか

総括すると、SXはベースモデル・ニンジャH2の血脈を隠せないというか、その軸足はあくまでもスポーツなのだと感じた。H2よりはライポジは楽だし、タンデムもしやすいハズだし、パニアケースも装着できるが、鋭いアクセルレスポンスや反応のいい車体は、乗り手が相応にスポーティに操ってこそ活きてくるはず。その走りをクルマに例えるなら、高い実用性とスポーティさを兼ね備えたBMWと言えるだろうか。

対して14Rはエンジンやサスペンションなど、全ての反応がシルキーで上質だ。ライダーは絶大な安心感に包まれながら「バイクに乗せてもらう」感覚が強い。開ければとんでもない速度に達する実力があるのに、法定速度で淡々と流していても「いいバイクに乗っているなぁ」としみじみ思える。高級でラグジュアリー。言うなればメルセデス・ベンツの世界感に近いかもしれない。

カワサキはH2 SXをZX-14Rの後継機と考えているのかもしれないが、筆者の印象としては、この2台は似て非なるものだと感じた。どちらがいいとか悪いではない。今なら好みや使い方に合わせて選べる、魅力的な選択肢が2つもある……。そう考えればいいのではないだろうか。

マツ

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「西部警察」と「北の国から」をこよなく愛する本誌編集部員。NSR専門誌・PROSPECのほか、フリーペーパーとして復活を果たしたビッグマシン零(ゼロ)の編集長も兼任する。
■1975年生まれ
■愛車:HONDA NSR250R(1992)/HARLEY-DAVIDSON XL883(2009)

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