ビッグネーム復活にふさわしい王道の走り

2019ニューモデル・トライアンフ スピードツインの試乗インプレッション

  • 2019/4/21

ボンネビルT120の穏やかさと、スラクストンRの高いスポーツ性。そのいいとこ取りを目指したのが、伝説の名を蘇らせたスピードツインだ。その爽快な走りを、鈴木大五郎がスペインのマヨルカ島で確かめた。

TEXT:Daigoro SUZUKI PHOTO:TRIUMPH

よりスポーティなボンネビルを求めるファンの声に応えて

トライアンフのリリースするモダンクラシックシリーズは、そのクラシックな佇まいばかりがフィーチャーされがちであるけれど、個人的にはその走りの良さにいつも注目していた。カッコ重視なだけでなく、しっかり作り込んでいると思わせる走りの深みがあったといえる。とはいえ、それは雰囲気も楽しみつつ走りも楽しむという欲張りな要求を非常に高いレベルで実現していることへの評価がまず大きかったことも確か。よりハードに走らせた場合には運動性能が……といった我が儘な気持ちもないわけではなかった。「それはボンネビルシリーズの領域じゃないよ。そこを求めるならスピードトリプルやストリートトリプルに乗ってくれよ」それが彼らのスタンスなんだろうと、個人的には思っていたのだ。

そんな中、スピードツインが登場。カワサキZ900RSのヒットにも関連しているのだろうかと思えばプロジェクトは3年前からスタートしていたという。そしてその大きい要因のひとつが、よりスポーティなボンネビルの登場を望む市場の声だったという。

ネオレトロなディテールを随所に見せる。

スラクストンをベースとしながらも、よりスポーティなマシンとするべく、エンジンはもとより、足まわりもセットアップ。軽量なキャストホイールの採用や、車体全体の軽量化等、慣性力の大幅な削減を狙ったマシン作り。スポーティではあるが、日常的にそれを感じられるように、ライディングポジションはアップライトなものであるが、肩肘張らずと言うのが開発テーマのひとつでもあるようだ。

地中海に浮かぶスペイン・マヨルカ島にて行われた試乗会では、タイトなワインディングを中心に約270kmを走行した。 スラクストンに対し、前後の荷重配分を48対52から50対50とフロント寄りとし、前輪荷重をより稼ぐ方向としたディメンション。しかしこれは、アップライトなポジションとなったことによる、走行中の荷重配分の補正という意味が大きいかもしれない。決してヒップポイントが高いとか前傾が強いということはなく、シートに座った際の当たりの柔らかさ等、スポーティとはいえ、スーパースポーツをベースとしたスポーツネイキッドなどと比較すれば、その設定は穏やかといえる。

鋭すぎないスポーツ性が走りに没頭させてくれる

しかし、前述した前後の荷重配分に加え、キャスター角を22.8度に設定したことによるものか、低速域での走行ではややハンドリングに重さというか、自由度の少なさを感じる。ダイレクト感とも言い換えられるレスポンスの良さはあるが、穏やかでヒラヒラと自由度の高い兄弟モデルの面影は薄い。

しかし速度を上げていくにつれ、ライダーの意志や操作とマシンの動きがシンクロし、狙ったであろうマシンのキャラクターが顔を出してくる。車体の姿勢や状態にあまり気を使うことなく、スッとマシンが倒れ込み、即座に旋回力を発揮してくれる。

[Tester:鈴木大五郎]アメリカでダートトラック修行を経たのちロードレースへ。鈴鹿8耐でSPPクラス優勝の経験もあるジャーナリストだ。自らライディングスクールも主宰。

クラシックモデル的な、スロットルを開けることでマシンを安定させ、コーナーリングでも軽めのブレーキング、あるいはエンジンブレーキだけ。登りのコーナーでは軽くスロットルを当てたまま……といった、ワインディングで多用する走り方のままでも高い旋回力を生み出し、行ける! 行ける! と走りにのめり込んでいく感覚だ。

逆にハードにブレーキングをして、キャスターを立てて旋回力を高め……といった走り方では、タイヤにやや依存度が高いようなフィーリングになってくる。軽快で自由度のある兄弟モデルとはあきらかにキャラクターが異なるが、その狙いは明確であり、プラスαのスポーツ性能とともにそのマインドがこのマシンの魅力である。

しかし、それが先鋭化しすぎたかのような印象とならないのは、マシン全体のパッケージングの良さにあるだろう。やはり肝はエンジンのフィーリングの良さにある。トルクフルでコントローラブルという、現代の大型バイクのマストな性能は当然クリアしているのだが、そこに穏やかさやぼやけた肌触りがあるのだ。

疲れにくいエンジン特性にパワフルさも併せ持つ

極低回転域からトルクフルで使いやすい出力特性はタコメーターやシフトインジゲーターを頻繁にチェックせず、回転数を気にすることのない走りを許容する。3種類のライディングモードにより、出力特性は変化するものの、必要以上にシャープになったりぼやけたりといったことのないフレンドリーな一貫性を持っている。

[ライディングポジション]いわゆるオーソドックスなネイキッドのポジションである。ハンドルはスピードトリプルと同型で幅広。ステップ位置は低めで膝の曲がりが緩め。自由度の高さを感じる。(身長165cm/体重62kg)

適度で嫌味のない鼓動感は長い時間での走行でも疲れにくく、それでいて飽きにくいという優れもの。

しかし、その気になれば十分速く、軽くタイミングを合わせれば、フワッとフロントホイールが浮いてくるほどのパワフルさは旧式の並列ツインではないことをしっかり感じさせる。エンジン出力はスラクストンと変わらないものの、マネージメントの変更や軽量化でこのシリーズ最速と思える速さを備えている。

並列2気筒というエンジンレイアウトによるものか、強烈な個性を前面に出してくる押しの強さはないものの、むしろ自然で速さを引き出しやすく、しかもその操っている感覚も強く得られるキャラクターは、狙い通りの作り込みであったのだ。

TRIUMPH SPEED TWIN/トライアンフ スピードツイン

【TRIUMPH SPEED TWIN 2019】主要装備■全長:未発表 全幅760 全高1110 軸距1430 シート高807(各mm) 装備重量215kg■水冷4スト並列2気筒SOHC4バルブ 1200cc 97ps/6750rpm 11.42㎏-m/4950rpm 変速機6段 燃料タンク容量14L■キャスター22.8°/トレール93.5mm ブレーキF=φ305mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ220mmディスク+2ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ●価格:160万円 ●色:赤、銀、黒 ●発売中

[フロント]1200ccの排気量を持ちながらも、ツインエンジンゆえにスリムさを保つ。モダンクラシックの雰囲気にバーエンドミラーが光る。[リヤ]左右2本出しマフラーからは270度クランク特有のパルス感のある排気音を奏でる。リヤタイヤは比較的スリムな160mm幅を採用する。

スピードツインのディテール詳細

メーターはアナログ表示だが、ライドバイワイヤシステムを起点とした3つの選択式ライディングモードや、切り替え式トラコンなどもここで設定可能。

97psを発揮するバーチカルツイン。軽量クランクと高圧縮ヘッドを採用するほか、マグネシウムカバーなどで軽量化も達成。トルクアシストクラッチも備える。

7スポークアルミ製ホイールを新採用し、φ305mmのダブルディスクにはブレンボ製4ポットキャリパーを組み合わせる。タイヤはピレリのロッソコルサ3。

右側ドライブチェーンが特徴的。ツインショックに2本出しマフラーを備え、スイングアームはアルミ製だ。リヤブレーキキャリパーはフローティング式2ポット。

ミニマルデザインのリヤまわりだが、カスタムスタイルのベンチシートは座面の広さも十分。シート高は807㎜で乗り降りも容易、かつ快適性も確保している。

特徴的なモンツァスタイルのロッキングフィラーキャップを備え、艶のある塗装が施された14Lの燃料タンク筋肉質なスタイリングの要ともなっている。

1938年に生まれた、トライアンフ初の世界ヒット

オリジナルのスピードツインは、パラレルツインを革命的なシャーシに搭載して大ヒット。トライアンフを世界一のモーターサイクルブランドへと引き上げた。1960年代まで名前が引き継がれたのち、途絶えていた。

オリジナルのスピードツイン。トライアンフが世界のマーケットを席捲する原動力となった。

80年以上も前のバイクだが、見比べると新作のオリジナルへのオマージュがわかる。フロントにはガーダーフォークを備え、リヤはリジッド。タンクのメッキも美しい。

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)