第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

ジュネーブMSと東京MCSから見えたこと

ホンダのバイク&クルマの電動化、EVの未来は?

  • 2019/3/30
ホンダEV

2019年3月に開催されたジュネーブモーターショーで、ホンダは2025年に向けた電動化の方向性を発表した。2015年に発覚したフォルクスワーゲングループのディーゼルエンジン排ガス不正事件を発端に、一気に電動化に振れることになったヨーロッパ市場。それを受けて、ドイツメーカーを含め電動化が最優先課題となっているのだ。バイクの世界でも電動化の波が2018年から本格化しており、ホンダも同年11月にPCXエレクトリックを発表。東京モーターサイクルショー2019でもホンダは2台の電動バイクプロトタイプを発表するなど、にわかに慌ただしくなってきた。ここでホンダがバイクとクルマの電動化に対してどんな未来を描いているのか整理してみよう。

’90年代から本格化したEV開発

何でもチャレンジして世の中に送り出してしまうホンダは、ピュアな電気自動車(EV)を1980年代から研究を開始していたが、1990年に米国カリフォルニア州で制定されたZEV(Zero Emission Vehicle)規制をきっかけに開発を本格化。1997年には最高速度130km/h、一充電走行距離210km(10・15モード)の性能を実現した「HONDA EV Plus」を日本国内でリース販売開始している。

HONDA EV Plus [1997]

EV Plus [1997]

その後、かなり間が空いて2009年に三菱自動車が軽自動車「i」をベースとした電気自動車「i-MiEV」を発売。翌年2010年には日産自動車が5ドアハッチバックの「リーフ」が発売され、日本でも電気自動車が一気に一般化した。

その間、ホンダが何をしていたのかというと、トヨタのハイブリッドシステム「THS」に対抗して「IMA(Integrated Motor Assist System)」を開発。1999年に発売した初代インサイトを皮切りに順次このシステムをコンパクトクラス中心に搭載し、現在における日本国内のハイブリッド全盛期をトヨタの全車種に搭載されるに至った「THS」とともに牽引した。

ホンダ電動バイクの変遷

対してホンダ電動バイクは、1994年に原付一種の「ホンダCUV ES」をリース販売。続いて2010年には同じく原付一種の「EV-neo」と積載性を高めた「EV-neo PRO」を同時に発売している。EV-neoは一充電走行距離30kmで、専用の急速充電器(200V電源使用)も用意されているモデルだったが、2015年に販売終了した。

HONDA CUV ES [1994] & EV-neo [2010]

(左)CUV ES[1994](右)EV-neo[2010]

その後2018年11月に、ようやく「PCX ELECTRIC(エレクトリック)」が発売された。原付二種の電動二輪車として登場。動力用電源に着脱式バッテリー「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」を2個搭載し、一充電走行距離41kmを確保。まずは企業や個人事業主に向けリースや東京都および神奈川県在住の一般ユーザー向けにモニター募集を開始した。さらに、沖縄県宮古島でのレンタルサービスも発表されている。2019年中には首都圏でのシェアリング実証実験にもトライしていくとのことだ。

HONDA PCX ELECTRIC [2018]

HONDA PCX ELECTRIC [2018]

ホンダの四輪EVプロトタイプ「HONDA e」

…という経緯を経て迎えた、今回のジュネーブモーターショー2019&東京モーターサイクルショー2019。ジュネーブモーターショー2019では、「Honda e(イー)」と呼ばれる電気自動車のプロトタイプを披露した。

HONDA e [Prototype]

HONDA e[プロトタイプ]

このモデル、新たに開発された電気自動車専用プラットフォームが採用されており、詳細不明ではあるがなんと後輪駆動だ。コンパクトなボディながらロングホイールベースとタイヤを四隅に配置したショートオーバーハングにより、市街地での取り回しの良さと優れた走行性能を両立しているという。そのボディデザインは往年のN360や初期のシビックシリーズをヘリテージしているようなイメージだ。また、一充電走行距離は200km以上(WLTPモード)を達成し、30分で80%までの充電が可能な急速充電にも対応しているとしている。

HONDA e [Prototype]

HONDA e[プロトタイプ]

ホンダはこのモデルの量産車を2019年後半に生産開始。2020年初頭には市場に投入する模様だ。さらに、ヨーロッパでは2019年初頭から販売を開始した「CR-Vハイブリッド」に搭載されている2モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」を今後登場する電動車ラインアップの中核技術としていくということも発表された。これにより2025年までにヨーロッパで発売する四輪商品をすべて電動車両(電気自動車&ハイブリッド)にするとしている。

ちなみに「SPORT HYBRID i-MMD」とは、先に解説した「IMA」の後継システムを指す。直4エンジンに走行用と発電用の2つのモーターを組み合わせており、モーターでエンジンをアシストしていた「IMA」とは異なり、通常時はモーターで走行し高速域ではエンジンのみで走ることもあるというシステムだ。日本向けでは3代目インサイト、アコード、ステップワゴン、オデッセイ、CR-Vに搭載・販売している。

二輪EVプロトタイプも東京MCショーで披露

ホンダの二輪電動化戦略については、ジュネーブモーターショー2019では披露されなかったが、東京モーターサイクルショー2019で一気に動いた。

BENLY ELECTRIC(ベンリイ エレクトリック)

先に取り上げたPCXエレクトリックに続く電動二輪車の第2弾として、ビジネス向けの「BENLY ELECTRIC(ベンリイ エレクトリック)」のプロトタイプをワールドプレミア。ホンダブースで行われたプレスカンファレンスでは、発売に向けて現在鋭意開発中と発表された。

HONDA BENLY ELECTRIC [Prototype]

ベンリイ エレクトリック[プロトタイプ]

WEBヤングマシン編集部調べでは、動力用電源はPCXエレクトリックと同じ着脱式バッテリー2個を搭載、原付一種と原付二種の2種類が用意される模様だ。正式発表は今年10月に開催される東京モーターショーが濃厚。リース販売か誰でも買える形になるかはまだ不明だが、2020年初頭までにはデリバリーされる可能性大である。

CR ELECTRICプロトタイプ

また、コンセプトモデルとして電動モトクロッサー「CR ELECTRICプロトタイプ」も披露された。これはモトクロス競技専用車の「CRF250R」がベースと噂されており、つまりは株式会社M-TEC(無限)が2017年の東京モーターサイクルショーに出品した「E.REX」コンセプトモデルの進化版として無限ブースに展示した「E.REX Prototype」とパワートレーンを共通とした”ガワ”違い。この電動モトクロッサーはホンダと無限の共同プロジェクトで、バッテリーとパワーユニットは無限が担当しているのだ。

CR ELECTRIC [Prototype] & E.REX Prototype [M-TEC]

(上)CR ELECTRICプロトタイプ(下)E.REXプロトタイプ[無限/M-TEC]

ホンダとしては、このCR ELECTRICプロトタイプの市販化の可能性は低いが、過酷なフィールドであるモトクロスで電動二輪車のノウハウを蓄積し、オフロードだけでなくオンロードも含めて開発・研究を進めるとアナウンスしている。

また無限と言えば、独自の電動バイクプロジェクトである「神電」でマン島TTレースTTゼロチャレンジクラスに2012年から参戦。参戦3年目の2014年から2018年まで5年連続優勝している。東京モーターサイクルショー2019では6月6日に開催される2019マン島TTレースへの6連覇へ向けた参戦継続と新マシンの「神電八」を公開した。このようにビジネス向け電動二輪車と電動モトクロッサーの両方でアプローチしてくるというのがいかにもホンダらしい。

神電 八[無限/M-TEC]

ホンダは2020年から、日本においても電気自動車・イーの発売やSPORT HYBRID i-MMDを搭載したハイブリッドカーのフルラインナップ化、そして電動二輪車を正式発売する可能性が高い。その全貌については2019年10月24日から開催される東京モーターショーで見ることができるはずだ。

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いち

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本誌編集長。雑誌は生き残りタイアップ全盛期だというのに、ひとり次期型ネタを嗅ぎまわって反感を買う現代のスクープ魔王。
■1972年生まれ
■愛車:BMW R100GS(1988)