ドゥカティ・スクランブラー最大排気量の長兄・1100シリーズは、専用車体に1100ccエンジンを搭載し、IMUを用いたトラコンやコーナリングABSも装備。強豪揃いのリッター級ネオクラに立ち向かう。今回はスクランブラー1100スペシャル(’18)の試乗インプレッションをお届けする。
車体を刷新しホイールベースも延長したスクランブラー1100スペシャル
今回試乗したスクランブラー1100スペシャルは、800シリーズと同レイアウトながら、スチールパイプの直径や肉厚を変更した新フレームを採用。またスイングアームも専用設計。その結果ホイールベースは69mm延長されており、フロント荷重が増え、よりスポーティなハンドリングとなる。また、スポークホイールやクローム仕上げの排気管なども有する。
(○)ドゥカティらしい荒々しいエンジンの鼓動感
【TESTER:河野正士(こうの・ただし)】フリーライター。二輪雑誌の編集者を経てフリーに。EICMAや海外カスタムバイクイベント、また国際試乗会などに参加する。
カジュアルでシンプルなドゥカティの世界を味わうために構築されたスクランブラー・ブランド。コンパクトなエンジンとフレームを採用したスクランブラー・ファミリーの各モデルは、その世界観とプロダクトが合致し、世界中で成功を収めた。
そんなスクランブラーに、1100ccエンジンと電子制御技術を搭載したモデルが必要なのだろうかという声は、発表された2017年のミラノショーでも聞こえてきた。しかしスクランブラー1100を走らせると、ドゥカティのスポーティさと、スクランブラーのカジュアルさが見事に融合していた。それには新型エンジンと高剛性の新型フレーム、それらを使いこなすための電子制御技術が不可欠である。
エンジンは「モンスター1100 EVO」用がベース。吸気系の変更とともに16度に設定したバルブオーバーラップによって、最大トルクを4750rpmという常用回転域で発生させるなど、エンジンキャラクターは大幅に変更している。
そのエンジンこそが、スクランブラー1100のキャラクターの源だ。アクセルをジワッと開けたりパッと開けたり、そんなライダーのイメージにエンジンがしっかりと反応し、その分だけ車体を前に押し進める。そのときのエンジンの鼓動は、空冷デスモドロミックの特徴でもある、少し荒々しい、ザラッとした爆発感なのだ。
そしてその個性的なエンジンこそ、昨今盛り上がりを見せるネオクラシック・カテゴリーでスクランブラー1100が存在感を高めるためのキーポイントとなる。ネオクラシックは、エンジンが個性の源。そんななかにあって大排気量空冷デスモドロミックは、見た目も乗り味も唯一無二である。
また専用設計されたフレームとスイングアームにより、800cc版よりも大幅にホイールベースが延長されている。しかしそれは前輪荷重を増やし、よりスポーティな走りを可能にしているのだ。車体に関して言えば、少しモンスター・ファミリーに近づいたと言っても良いだろう。
スポーティなハンドリングに、ドゥカティ味が濃い目のエンジン。これがスクランブラー1100である。
(△)足まわりはしっかりとしたナラシが必要
近年のドゥカティ・モデルは、新車時にサスペンションの動きが硬い傾向にある。したがって単に距離を伸ばすのではなく、サスペンションの動きを意識した、メリハリの効いたナラシ走行が必要となるだろう。
こんな人におすすめ:気負わず乗れるけどドゥカティらしさ満載のネイキッド
ドゥカティのラインナップのなかでも、空冷L型2気筒最大の排気量を持ち、エンジンの個性はピカイチ。デスモドロミック特有のピックアップの良いエンジンながら扱いやすく、ドゥカティ初心者からベテランまで満足できるはずだ。
●まとめ:河野 正士 ●写真:ドゥカティ
※ヤングマシン2018年9月号掲載記事をベースに再構成
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