第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

華男(はな)よりバイク!! by 岡崎静夏

岡崎静夏、Moto3挑戦を語る【苦戦するのは分かってた。でも自分を確かめたかった】

  • 2019/1/13

岡崎静夏

無理を承知で、戦わなければならない時がある。そこに身を置いた者にしか、分からないことがあるからだ。’16年に続き2度目となるモトGP・モト3クラスにワイルドカード(推薦枠)参戦を果たした、岡崎静夏ちゃんのリアル・バイク・ドキュメント!

岡崎静夏

岡崎静夏(おかざき・しずか)’12年から全日本ロードJ-GP3クラスに参戦し、’16 年にはランキング6位に。今季は筑波大会での負傷が響きランキング13位に沈んだが、チャンピオン獲得を決して諦めない26歳。

MotoGP Moto3クラス

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毎戦のように僅差のバトルが繰り広げられているモト3クラスは、4スト単気筒250ccエンジンを搭載したマシンで競われる。新規参戦資格は16〜25歳まで、継続参戦資格は28歳まで(いずれも開催年の1月1日時点の年齢)と定められており、最高峰モトGPへのステップアップを狙う若手の登竜門となっている。

年齢的に最後のチャンス。岡崎は迷わず飛び込んだ

見た目こそかわいらしい女性ライダーだが、岡崎静夏の内面はピュアな”男の子”だ。

負けず嫌いで、意地っ張りで、まわりには目もくれず、自分を貫く。正直に、率直に、自分のいいところも悪いところを認め、もがく姿を隠すこともなく、とにかく足を前に出す。その先に何があるかは分からないけれど、きっと何かが変わる気がして、ワクワクしている。

’18年の日本GPで、モトGP・モト3クラスに2度目のスポット参戦を果たした。前回の’16年は、予選は出走35台中34番手、決勝は完走最下位の26位。マシンの性能も自分の技量も足りないことは分かっていたが、凄まじいスピードの渦に身を置けたことは大きかった。翌’17年は全日本ロードが不調で、モト3に挑戦するどころではなかった。

岡崎静夏

姉弟GPチャレンジ。姉の静夏ちゃんはライダー、弟の慎さんはMoto3メカニックだ。

そして、今回。オートバイレース・モト3には「ワイルドカード参戦できるのは(その年の1月1日時点で)25歳以下」という年齢制限があり、彼女にとっては最後のチャレンジになる。

モト3にワイルドカード参戦できるのは2名だけだ。当初は別の2名で決まっていたが、ギリギリのタイミングになってキャンセルが出て、再び可能性が浮上した。マシンはどうにか間に合いそうだが、準備不足は否めない。

前回以上に苦しい戦いになることは分かっていた。前回があるだけに、周囲の目の厳さも感じる。でも、全日本でできるようになった走りが通用するかどうか、確かめたかった。

そして彼女は「モト3に出たい」と言った。言ったからには、「やれるだけのことをやろう」と思った。

全日本第5戦筑波大会で両足を骨折し、6週間の松葉杖生活を送り、筋力は落ちている。「アスリートだったのに、普通の人になっちゃった」という状態では、思うように走りれないだろう。それでも「きっと何かを掴める」。彼女はそう信じていた。

ベストタイムを狙おうと頑張ったモト3最終ラップ

ツインリンクもてぎで彼女を待ち受けていたのは、想像以上の厳しさだった。最初の走行セッションである10月19日(金)1回目のフリー走行からタイムが出ない。「何でなんだろう……」と焦った。

普段走らせている全日本ロード・J‐GP3のマシンはアナログメーターだが、レンタルしたモト3マシンはデジタルメーター。特にデジタルタコメーターに慣れず、シフトダウンのリズムが取れなかった。

だが、それ以上にライディングそのものがしっくりこなかった。「前回のタイムは簡単に出せるはず」と思い込んでもてぎ入りしたのに、まったくうまく行かない。焦りが焦りを呼んで、何がなんだか分からないままセッションが進んでいく。どうしても前回のタイムを上回れない。10月20日(土)の予選タイムは、前回を0.8秒下回ってしまった。

岡崎静夏

「まだ、遠い。でも、見えている」by 岡崎静夏

予選を終えて、彼女は気付いた。「マシンが違ってた!」

前回の’16年のモト3は、TSRホンダを使った。そして今回は、ホンダNSF250Rだったのだ。

「前回のTSRはフレーム剛性が高かった。進入でバチンと向きを変えて荷重をかければ、立ち上がりまでのラインが1本決まる。その分、進入を決めなければタイムが出ないし、ラインの自由度も少ないんです。

今回のNSFは逆。フレームがしなやかだから進入が決まらなくても立ち上がりのラインが選べる。つじつまを合わせてタイムを出しやすいんです。ただ、動きやすいフレームだから、コーナーの最後までしっかり自分で曲げ切らないといけない」

モト3参戦に臨み、ずっとTSRの走りでイメージトレーニングしていた。フリー走行も予選もNSFに乗りつつ真逆のキャラクターであるTSRのつもりで走っていたのだから、うまく行くはずもなかった。

「気付くのが遅すぎました」。今でこそ笑いながらそう振り返れるが、もてぎでは焦りに押し流されて何も分からない状態だった。

決勝は走りのイメージを切り替えたが、うまく行かなかった。

「まわりよりも自分の方が焦っちゃってました。ミスだらけだった。突っ込みすぎるとか、ちゃんとインにつけてないとか、ゼブラにビタビタに寄せられないとか、そんなのばっかりだったんです。

一番よくなかったのは、『前回よりタイムが出ないパターン』を想定していなかったこと。『絶対に前より速く走れるはず』と信じて疑っていなかったから、そのパターンから外れた時にどうしたらいいか分からなくなってしまった。

タイムが出ないことも事前に想定していれば心の準備もできたし、対応もできたはずなんです」

負傷による下半身の筋力不足から回復していなかったことも響いた。

「ブレーキングでも足でしっかり堪えられない分、手に力がかかってしまう。だから肩が痛くなって、うまく体が支えられませんでした」

メンタルも、そしてフィジカルも。すべてがまとめ切れないまま、タイムを更新することも叶わず、彼女のモト3チャレンジは終わった。

岡崎静夏

「絶対、必ず何かをつかむ」by 岡崎静夏

「周回遅れにだけはなりたくなかった。最終ラップのサインボードで周回遅れにならずに済むと分かった瞬間に、初めてまわりが見えました。たくさんのお客さんも見えて、『ああ、モト3を走れるのはこの周で最後なんだな〜』と思って……。

で、ベストタイムを狙おうと頑張ったら最終コーナーの手前で失敗しちゃって、アワアワでしたよ(笑)」

口さがないレースファンは、彼女のモト3参戦に「また下位を走るだけじゃないか」と辛辣だった。しかし彼女は「自分もそう思ってたんで」と気にしなかった。そして実際に参戦して下位であったとしても、世界を走った彼女には、彼女にしか見えないものがあった。

「目が変わったんです。これ、メカニックたちには笑われるんだけど、本当に目が変わった。自分が『イケる』と思える範囲がかなり先まで広がりました。

全日本では今まで、自分はバイクの限界を超えられなかった。でも今は、自分がマシンの限界を超えている気がするんです。自分のところまでオートバイを引き寄せるようなセッティングができれば、今までとは違う段階に行けるんじゃないかなって」

次にもし彼女が世界に打って出るとしたら、モト2だ。「いやぁ、でもなあ、自分はまだスライドコントロールできないからなぁ。無理ですよ〜」と言いながらも、大きな瞳をキラキラと輝かせている。彼女の中の”男の子”が、もう次を見ている。

岡崎静夏

「まだまだ足りない。だから頑張れる!」 by 岡崎静夏

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●まとめ:高橋剛 ●写真:佐藤寿宏/川越憲/Honda
●取材協力:ホンダモーターサイクルジャパンアライヘルメットヒョウドウプロダクツアルパインスターズ
※ヤングマシン2019年1月号掲載記事をベースに再構成

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高橋 剛

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カート上がりのバイク野郎。心震わす原稿が得意で、あのスポーツ名門誌・Sports Graphic Numberにも寄稿したりしなかったり。セッティングさえ出れば怖いものなしの隠れ文豪。