2018年7月16日と9月24日、ツインリンクもてぎの南コースでホンダコレクションホール開館20周年記念イベントが開催された。いつもの動態確認テストはレーサーなどが多かったが、今回は20周年記念ということで市販製品特別走行が実施され、ホンダの黎明期から現在までのエポックメイキングなバイクが走行を披露した。
本気で挑んだ”打倒2スト”
爆発的に売れた2ストロークのRZ250に対抗するため、’82年、ホンダは4ストロークV型2気筒のVT250Fを投入する。ホンダには4ストバイクへのこだわりがあった。’79年、2スト全盛のWGPに、ホンダは斬新な水冷4ストV型4気筒のNR500を引っ提げて12年ぶりにカムバック。高成績こそ残せなかったが、そこで得た新技術を元に開発されたのがVTだった。
250クラス世界初の水冷90度Vツインは4バルブを持ち、RZと同じ35psを1万1000回転という超高回転域で発生。車体をコンパクトにするため、スチール丸パイプフレームの一部を冷却水の通路にするなどの工夫が施され、125cc並みのスリムさを実現した。さらにクラス初のフロント16インチやブーメランコムスターホイール、リンク式モノショックまで備えていた。
打倒2ストのリアルスポーツながら、非常にコントロールしやすい性格により、実際の戦闘力はともかく、腕に覚えのないライダーにとって「RZより速く走れる」と評判のオートバイだった。発売直後から大ヒットとなるが、後に小柄な車格と扱いやすさが知られると、初心者や女性の人気も集中。改良が進んだ’84年型は、初期型を超えるベストセラーを記録し、’85年には累計生産10万台を突破した。誇張ではなく、街でVTを見かけない日はないほどだった。
RZと比較するとどうだったのか?
比較ツーリングでたっぷりと250ccスポーツの実用上の使い勝手を比較したYMテストスタッフは5台のテスト車を今度は茨城県にある谷田部の日本自動車研究所(JAR)のテストコースに持ち込んだ。詳しいテストデータは数値を見てもらえれば一目瞭然だが、結果から言えばやはりRZ250の底力には驚かされる。高速道路や峠道での比較ではRZもVT250Fもほとんど互角のパワーフィーリングが体感されるのだが、全開の定地走行ではやはりRZの優位は動かなかった。しかし、VTもさすが打倒RZのために開発されただけあり、このクラスとしてはやはりトップクラスのタイムである。 ※ヤングマシン1982年8月号より
取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン