コンセプトKXの発表でも大きな話題となったロイヤルエンフィールドから、270度クランク採用の新型パラレルツインを搭載するニューモデルの登場だ。以前の記事(コチラ)でも紹介したように、いまロイヤルエンフィールドは大きな変化を見せようとしている。
空油冷並列2気筒でビッグネームが復活
’17年11月5日にイギリス、セントラルミッドランド地区にテクノロジーセンターを開設したロイヤルエンフィールドは、その前後に新型の648cc、空油冷2気筒エンジンを搭載した2車の開発を発表していた。それがこれから紹介するインターセプター650と、コンチネンタルGT650だ。
トコトコと走る単気筒で知られるロイヤルエンフィールドだが、かつて英国産バーチカルツイン(シリンダーが直立した並列ツインエンジン)が栄華を誇っていた1960年代に、736ccの空冷パラレルツインを搭載したインターセプターというバイクを生産していた。また、コンチネンタルGTは単気筒の250ccで同時期に存在しており、のちの2013年には新開発の535cc単気筒を搭載したカフェレーサーとして復活を遂げている。いずれもロイヤルエンフィールドのブランドにとって大切なビッグネームであり、新型エンジンの投入とともに2車が出揃うことには大きな意味があるといえよう。
ミラノショーで発表されたイタリア/スペイン/ポルトガルにおける価格は、インターセプター650が6200ユーロ、コンチネンタルGT650は6400ユーロだった。どちらも日本円に単純換算すれば90万円以下。輸送など地理的なことを考慮しても、100万円を大きく超えることにはならなそうだ。早期の日本への導入に期待したい。
西海岸の雰囲気を漂わせるロードスター
インターセプター650は、1960年代のアメリカ西海岸の文化に溶け込んでいた当時のインターセプターにインスパイアされたもので、英国産ロードスターの確かな走りと、カリフォルニアのデザートレーサーのエッセンスをを併せ持ったバイク。モダンクラシックらしいティアドロップ型の燃料タンクやタイヤモンドキルトパターンのシート、幅広のハンドルバーなどを備えている。フロントフォークはφ41mmの正立タイプで、リヤは5段階のプリロード調整機構を備えたツインショック。タイヤは前後18インチだ。
ブリティッシュ・カフェレーサー
コンチネンタルGT650は、1950~1960年代のカフェレーサー文化の中で生まれたコンチネンタルGT250が祖先。彫りの深い燃料タンクに低いクリップオンハンドルをセットし、クラシカルでスポーティなライディングポジションとしている。とはいえガチガチのスポーツバイクではなく、街中でも楽しめるマシンに仕上がっているという。サスペンションはインターセプターと同じくφ41mm正立タイプのフロントフォークに5段階プリロード調整機構つきツインショックという組み合わせ。
270度クランクを採用した並列2気筒
ヘリテージデザインに忠実な空油冷並列2気筒エンジンは、90度Vツインと同じ点火間隔となる270度クランクを採用。一体構造の鍛造クランクシャフトはカウンターバランサーによって振動を最小限に。圧縮比は9.5対1でフューエルインジェクションを装備し、2500rpmで最大トルクの80%を発揮するという。また、ロイヤルエンフィールドでは初となる6速ギヤボックスを備えている。ハイパフォーマンスよりもリアルワールドで楽しめるエンジンとして開発された。
カギを握るのは経験豊かなイギリス人エンジニア
技術センター設立からさかのぼること2年以上も前。ロイヤルエンフィールドは2015年に、目には見えない大きな変革を成し遂げた。それはサイモン・ウォーバートン(Simon Warburton)氏とマーク・ウェルズ(Mark Wells)氏、そしてハリスパフォーマンス(HARRIS Performance)を相次いで迎え入れたことだった。
製品開発のボスを務めるウォーバートン氏は、もともとはトライアンフでチーフエンジニアとして活躍していた人だ。キャリアの初期には車体設計、のちにエンジン設計に携わるようになった。
製品戦略やデザインを担当するウェルズ氏は、2001年に自分のデザインオフィスを構え、ロイヤルエンフィールドのクラシック500/350やコンチネンタルGT535にかかわった経験を持っている。
そしてハリスパフォーマンスだ。1972年創業の同社は伝説的なフレームビルダーとして知られているが、とくに有名なのは1990年代前半にヤマハYZR500のエンジンを積んだWGPマシンを走らせていたことだろう。ハリスヤマハ(ロックヤマハなんていうのもあった)と聞いて懐かしく思う読者もいるのでは? ほかにもドゥカティエンジンを搭載したBOTTマシンなどを手掛け、2008年からはロイヤルエンフィールドのバイクの車体開発を請け負っていた。そして2015年6月にロイヤルエンフィールドの親会社であるアイシャーモーターズの傘下に収まったのだ。
ロイヤルエンフィールドのCEOは叩き上げの情熱家
これだけの役者を揃え、イギリスでのテクノロジーセンター開設を実現するには、多大な労力と情熱が必要だ。インドでイギリスブランドのバイクを作っているメーカーとして、着実に成長を続けてきたロイヤルエンフィールドだが、その情熱を持ち続けてきた原動力とはなにか。CEOの経歴のなかにヒントがあった。
ロイヤルエンフィールドのCEOであるシッダールタ・ラル氏は、1995年にロイヤルエンフィールドの研修生としてキャリアをスタート。同社は前年にエンフィールドインディアからロイヤルエンフィールドへと改名し、1996年にインドの大手自動車メーカーのアイシャーモーターズの傘下に収まった。そのなかでラル氏は2001年にロイヤルエンフィールドのチーフエグゼクティブに任命され、成功を収めたのち、2006年には親会社であるアイシャーモーターズのCEOになっている。モーターサイクルの世界で叩き上げられ、モーターサイクルに情熱を傾けた人物というわけだ。
新型ツインで早くもカスタムマシンを提案
新型並列2気筒を使用したカスタムマシンが、ロイヤルエンフィールドブースに3台展示された。その車両をベースとしたイメージの広がりを表現するために、こうしたカスタムバイクたちをニューモデル登場時から投入するのは、もはや当たり前になりつつある。国産でいえばZ900RSなどが記憶に新しい。
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