’14年のミラノショーで発表されたコンセプトモデルそのままの姿で登場したヴィットピレン401。これぞ現代版カフェレーサーだ!
【〇】扱いやすいレスポンス 驚くほど軽くて小さい
久しぶりに戸惑った。ライポジが特殊なのだ。真一文字に近いセパレートハンドルと後退気味のステップにより、上半身の前傾角はスーパースポーツ並みに深い。しかも、ほぼフラットなシートはどうにも腰が落ち着かず、足着き性も決して良いとは言えない。体幹でしっかり上半身を支えていないと、体重の多くがハンドルに掛かってしまいそうだ。
戸惑いはまだ続く。そうした前荷重気味のライポジでありながら、フロントタイヤはトレールが短いかのように落ち着きがない。ベースとなったKTMの390デュークは傑作と言えるほど快活なハンドリングの持ち主だが、ヴィットピレン401にその面影はほとんどない……。
ところが、しばらく試行錯誤しながら峠道を流しているうち、ピタッと気持ち良く旋回するシーンが現れた。どうやら着座位置を後ろ気味にすると、前後輪の動的な分布荷重が適正になるようで、それが分かってからはとにかく楽しくて仕方がなかった。とはいえ、座る位置がどこであっても、常に揺らぎというかしなりを感じさせるシャシーの雰囲気は小排気量のオフロード車に近く、コーナーの入り口にギャップがあろうものならかなり慌てることに。しかし、そうした挙動も車体が軽いからこそ許容でき、気が付けば久しぶりに心地良い汗をかいていたのだ。
そんなジャジャ馬的な走りを支えているのは、390デューク譲りのエンジンだ。1万rpmまで勢い良く吹け上がるほどシャープな特性ながら、スロットルレスポンスが優しいので扱いやすく、エンジンによって走りを乱すことがない。アシスト&スリッパークラッチはレバー操作が軽い上に、急激なシフトダウンでもリヤタイヤがロックする心配はなし。シングルらしい歯切れのいい排気音も含めて非常に気に入った。
同じく390デューク譲りのブレーキセットは強力かつコントローラブルで、これもエンジンと同様にライダーを慌てさせない要因の一つとなっている。スタイリング重視のカフェレーサーだが、基本となる要素はまったく妥協していないのだ。
【×】ライポジは賛否両論 荷物の積載もほぼ不可
冒頭でも述べたが、やはりライポジが特殊なので合う合わないが明確に分かれそう。また、ご覧の通りタンデムシートの面積が極端に狭いので、荷物を大量に積んでのツーリングはかなり困難と言えるだろう。
【結論】気分転換の相棒としては最高の選択だ!
久しぶりに乗り方で試行錯誤させられたが、その過程はむしろ楽しかった。そして、何よりスタイリングが個性的で、注目度は満点だ。ベースとなった390デュークより15万円以上高いが、伊達を気取るのならいいチョイスだろう。
写真:飛澤慎
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