人気のZ900RSに、待望のCAFEも国内販売開始。買うとしたら王道スタイルのSTDがいいか、それともレーシーなZ900RS CAFE(カフェ)がいいか。どちらを選べばいいか悩ましいところ。そこで丸山浩が2台を高速道路・ワインディング・市街地の3テージで違いを探ってみた。 ※ヤングマシン2018年5月号(3月24日発売)より
【高速道路】一般的にはカウルのあるカフェが有利だ
往年のZ1イメージを持つスタンダードのZ900RS。そして今回登場した派生モデルのZ900RS CAFE(カフェ)。この2台はエンジン自体のスペックは同一で、ギヤ比も変わらない。最大の違いは、カウルのあるなしと、アップライトか前傾かのライディングポジションで、これがすべてにおいてキャラクターを分ける決め手となってくる。まずはそれが大きく影響する高速道路のステージから見ていこう。
結論から言うと、高速道路を走ることの多い人はカフェを選ぶ方がいい。なにしろ、スピードレンジが上がっていくほど、カウルが防風性を大いに感じさせてくれるし、前傾姿勢がほどよく走行風による圧力を中和してくれる。カフェは前傾といってもスーパースポーツほどきつくはないので、300〜500km走ったところで、そんなにつらくはならないはずだ。逆に直立ライポジのSTDの方が、風の影響をモロに受けるので、長距離になると疲れてくるかも。それになんといってもカフェは分厚いシートが優秀。足着きは少々悪くなるが、得られる乗り心地のメリットはそれ以上だ。
まあ、そうは言っても、法定速度100km/hのつもりで景色を見ながらのんびり走っていたら、気が付くと80km/hだったなんて人には、STDも捨てたもんじゃない。このくらいなら走行風も許容範囲だし、周囲を見渡せる余裕感と旅してる感はカフェに勝る。結局は、スピードレンジと走行距離によって得意どころが分かれた感じ。景色観賞と比較的短距離移動がメインならSTDだ。
【ワインディング】より速くより曲げたい、それに応えるのがカフェ
ワインディングはカフェレーサースタイルの面目躍如といった感じで、攻め攻め気分で楽しみたいならば、ここはもうズバリカフェ。Z900RSはSTDも雰囲気こそネオレトロながら、その走りは今どきのスポーツネイキッドとして満足いくワインディング性能を見せてくれるのだが、ローハンドルと高いシート高からくるカフェのライディングポジションはフロントへの荷重のかけやすさが段違い。ブレーキング時もフロントの接地感がしっかり伝わってくるし、旋回力も荷重がかかってキャスターが立つことで、より引き出されていく。自ずとSTDよりワインディングペースは高くなっていくのだ。その点、ハンドルが高めで地面から遠いSTDは、接地感がカフェに比べると希薄になるのは仕方がない。逆にそんなに飛ばさないペースなら、ハンドルが軽く感じられるSTDは、見ている方向にススっと曲がっていってくれる軽快なハンドリングで、それはそれで悪くない。あくまで、より速く、より曲げたいと思ったときに有利なのがカフェだということだ。
【市街地】STDの良さがカフェにも継承されている
そもそもSTDのZ900RSは、ビッグネイキッドの中ではオーバーリッターのモデルに対し、コンパクトさとフットワークの軽さで市街地の扱いやすさには光るものがあった。カフェも基本的にはそれを踏襲しており、いくらカフェレーサースタイルにしたと言っても、使い勝手を大きくスポイルはしない「やりすぎない」バランスで、うまくまとめられていた。Uターンするにしても、ハンドルの高さや絞り角もタンクに手を挟んで困るような設定ではないし、左右切れ角もSTDとまったく一緒。車重はSTDより2㎏増えたが、それでも217kgと一般的なビッグネイキッドの230~240kg台よりは圧倒的に軽い。単体で見ればカフェの市街地性能もなかなかのものなのだ。たしかに20mm高くなったシート高は、特に女性だと足着きで苦労しそうだが、試しにSTDのシートを装着してみると、その問題は解決するしスタイルも結構さまになる。バックミラーもライポジに合わせたショートタイプで見やすさも健在と、思った以上に隙が無い。それだけに買うなら、どっちがいいか悩むところだ。
【まとめ】CAFEはメーカー純正”改”だ
今回、2台を比べてみた感想は、カフェは「改造車」だ。STDのライポジまわりを変えて仕立て上げた本来のカフェレーサーどおりのことをやった。それもメーカー自らが行うことで、どこにもネガが出ていない。いい意味で改めて造り直したという「改造」という言葉をレトロな雰囲気に合わせて贈りたい。バイクに乗るときは気合を入れて楽しみたい人にはカフェを、カジュアル派にはSTDをオススメという感じだが、カフェは尖りすぎてるわけじゃなく市街地ユースもこなす。STDの火の玉カラーとカフェの価格的な開きは2万円強と近いし、いっそ形や色で選ぶというのもありかも。
撮影:長野浩之
まとめ:宮田健一
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