「剛性アップでよりスポーティー」「電子制御で乗りやすさも拡充!」Y-AMT仕様も登場した2025年式ヤマハMT-07〈試乗レビュー〉

  • BRAND POST[PR]: YAMAHA [Y'S GEAR]
2025 ヤマハMT-07

兄貴分・MT-09と共通イメージのスタイリングへ進化した2025モデルのヤマハMT-07。さらにフロントフォークは倒立タイプとなり、ブレーキもラジアルマウント化。フレーム/スイングアーム/ホイールといった主要パーツもリニューアルし、最新の自動変速トランスミッション「Y-AMT」搭載グレードも登場。「さらに初心者が乗りやすくなり、同時にベテランも満足できるキャラクターになりました!」というのだけれど…、実際どうなってるのさ?!

●文:谷田貝洋暁(ヤングマシン編集部) ●写真:富樫秀明 ●BRAND POST提供:YAMAHA [Y’S GEAR]

車体の刷新でスポーツ性を大幅強化

今回の倒立フォーク化&ラジアルマウント化のモデルチェンジでは、本来約4.5kgの重量増になるところを、MT-07ならではの軽さに拘って各部を軽量化。車体のねじれ/縦方向/横方向のフレーム剛性を12~13%向上させながらも、1kgの軽量化に成功している。

また倒立フォークを採用すると、ハンドル切れ角は減少しがちだが、新型MT-07は逆で、2024年モデルの片側32度から35度へ拡大。最小回転半径も2.9mから2.8mとなり、より小回りが効くようになっている(ただし2023年までのモデルのハンドル切れ角は35度で、最小回転半径は2.7mとより小さかった)。

スタイリング変更に加え、車体の大刷新も行った2025モデルのMT-07。写真は自動変速トランスミッション搭載のMT-07 Y-AMT。

走らせてみると、先代のMT-07から走行性能が劇的に変化しているのを感じる。先代は“とにかく初心者ファースト”な設計で、ソフトで動きがいいサスペンションにこれまたしなやかで接地感が掴みやすい車体が組み合わされていた。おかげで低速域ですこぶる安心感があったのは確かであるが、ちょっと速度域を上げるとコーナリングではやや心許なさを感じる場面もあった。

対して2025モデルのMT-07は走行性能が一段引き上げられている。前述の倒立フォーク化&ラジアルマウント化に合わせて、車体剛性の向上を図ったことがその主たる要素だが、合わせて前後のサスペンションに関しても、車体に合わせたキャラクター変更を行ったことで、よりシャープなコーナリングが可能になっている。MT-07らしい車体の軽さはそのままに、走りのスポーティーな要素を強化したというわけだ。

正立フォークからφ41mmの倒立フォークへと変更。ブレーキキャリパーも対向4ピストンは同じながら、アキシャルマウントからラジアルマウントへとグレードアップ。

高剛性な倒立フォーク&ラジアルマウントキャリパーの採用で重量増となるも、トリプルクランプをダイキャストアルミニウム製とすることで0.5kgを軽量化。

フロントまわりの剛性アップに合わせ、鋼管フレームもねじれ/縦方向/横方向の剛性を12~13%アップ。パイプ径や厚みなどを変更したことにより、フレーム単体重量は先代と同じ約14.8kgを維持している。

素材はスチールで従来型と同じだが、形状が改められたスイングアーム。部材の厚さや補強の入れ具合はもちろん、ピボットまわりの構造から改変するリニューアルを実施している。

鋳造でありながら鍛造ホイールに迫る強度を持ち、軽量化が可能なスピンフォージドホイールも今回のモデルチェンジで初採用。MT-07に合わせて設計された専用品で、バネ下重量が0.48kg軽くなり、フロントとリヤの両方での慣性が4%削減。

電子制御スロットルを得て電脳面が劇的進化

デザイン&車体刷新と並ぶ大きなブラッシュアップポイントが、ライダーのスロットル操作を電気信号に変換する電子制御スロットル(YCC-T)の採用だ。

持ち前の車重の軽さはそのままに俊敏性がアップしたMT-07。同時に従来のワイヤー引きスロットルから、電子制御スロットルへ変更された。

これによって電子制御系の装備が大幅に進化。新たに得た機能を書き出せば、

  • 3レベルから選べるエンジン出力特性
  • 2段階+OFFのトラクションコントロールシステム
  • クルーズコントロールシステム(Y-AMT仕様に標準装備)
  • アップ/ダウン対応のクイックシフター(STDにオプション設定)

あたりとなるが、これらの装備は排気量688ccのCP2系エンジンとしては初採用。実際に走らせて確認してみると、乗り手を選ばない従来からのMT-07のキャラクターが、これら電子制御システムを搭載したことでさらにエントリーモデルとしての裾野を広げたことを実感した。その効果がもっともわかりやすいのが、エンジン出力特性(PWR)やトラクションコントロール(TCS)の介入度を切り替えられるようになったYRC(Yamaha Ride Control)だ。

このYRCのモードを切り替えるだけで、初心者がより安心して乗ることができるソフトなキャラクターになり、元気に走りたいベテランなら“SPORT”モードを選べばよりピックアップのいいエンジンフィーリングを楽しめる。とくにスポーツランに関しては、剛性アップした車体性能と合わさることでより速度レンジの高いコーナリングが楽しめるようになっている。

出力特性やトラクションコントロールを統合制御するYRC(Yamaha Ride Control)では、SPORT(PWR:1/TCS:1)、STREET(PWR:2/TCS:2)が選択でき、CUSTOMではオリジナル設定が可能。走りのフィーリングも大きく変わる。

また、エンジンそのものの出力特性も先代に比べて元気になったと感じた。エンジンの仕様や最高出力の数値は従来型から変わっておらず、最大トルクもわずか0.1kgf-m増えている程度なのだが、スロットル操作に対する反応が大きく変わっているのだ。

これはエアクリーナーボックスまわりのレイアウトを変更して吸気特性を変えたことよるところが大きいようだが、先代のやや線の細かったトルク特性に対し、発進時や再加速する際のトルクが厚くなって、エンジンの鼓動感がより際立っている。

この鼓動感に関しては、新たに取り入れられた“アコースティックアンプリファイアテクノロジー”の影響も大きいようだ。この技術は増幅したエンジン吸気音を、燃料タンク後部に開けられた4つの穴からライダーに聞かせるというものだが、実際にMT-07を走らせているとかなり元気なエンジンサウンドが楽しめる。

このシステムで面白いのは、乗り手と周囲でサウンドの感じ取り方が違うことだ。乗り手はかなり大きなエンジン音に聞こえるのだが、周囲に発する排気音は意外なほど小さく静か。周囲に迷惑をかけず、乗り手はしっかり高揚感あふれるサウンドを楽しめるようになっている。

688ccの並列2気筒エンジンは、歯切れの良いトルク特性が楽しめる270度クランクレイアウト。エアクリまわりの吸気系レイアウトを変更したことで、先代に比べてトルクフィーリングの粒感が増している。

燃料タンク後部下側にあるエアクリーナーボックスの吸気音を、タンクカバーに設けられた4つの穴からライダーに聞かせる音響増幅システム“アコースティックアンプリファイアテクノロジー”も新採用。

先代に比べてハンドルバーは幅が18mm広く、22mm低く、9.3mm後方に移動した新ポジションを設定。

画面サイズは5インチで変わらないものの、メーターは新作。画面のデザインが変更され、4種類のテーマから選べるほか、Bluetooth系のコネクト機能も強化。GARMIN製アプリとの連動でナビゲーション表示も可能になっている。

設定画面ではCUSTOMモードのパラメーターをPWR:1~3段階/TCS:1~2段階で変更可能。一番初心者に優しい設定は、PWRが3でTCSが2となる。

クラッチレバー&シフトペダルレスのY-AMT仕様も登場

MT-07 Y-AMTにはクラッチレバーがなく、代わりに人差し指で引いてアップ(+)、親指で押してダウン(−)という、パドル型のシフトボタンを装備する。

Y-AMTとは“ヤマハオートメイテッドマニュアルトランスミッション”の略で、クラッチ操作とシフトチェンジ操作を電子制御化し、マニュアルミッションのエンジンをオートマチック化する技術だ。今回のモデルチェンジで電子制御スロットルを得た新型MT-07は、このY-AMT仕様もバリエーションモデルとして新登場。ちなみに車両重量の差は、MT仕様のSTDが183kgなのに対し、Y-AMT仕様は+4kgの187kg。価格差はSTDが96万8000円で、Y-AMTは+8万8000円の105万6000円となっている。

クラッチレバー操作やギヤチェンジ操作がない…なんてことを言ってしまうと、これからシフト操作に慣れなければいけないビギナーはともかく、これまでさんざんギヤ付きモデルを乗ってきたベテラン勢は「シフトチェンジがバイクの醍醐味だろ?」と眉をひそめるかもしれない。しかし実際に乗ってみると、Y-AMTはギヤチェンジ好きのライダーにも違和感のないオートマチック機構になっていることに驚かされる。

停止状態からスロットルを開けると、変なギクシャク感もなくするすると前に進み出すし、発進停止におけるクラッチ制御も自然で違和感がない。坂道発進やスタンディングスティルなど、スロットルやクラッチレバーの細かな操作が必要な状況でも、つい足を出したくなるような不安を感じる場面が少ないのだ。

ATモードのシフトスケジュールもライダーの心情に寄り添っていて興味深い。スロットルをゆっくり開けていくような場面の加速では、低めの回転数からポンポンと小気味良くシフトアップしていくのに対し、スロットルをワイドオープンするような状況では、エンジンをより高回転域まで使う引っ張り気味のシフトスケジュールとなるのだ。

シフトスケジュールに関しては、スポーツ走行を突き詰めれば好みの違いがどうしても出てくるもの。ただY-AMTの場合、ATモードであってもパドルスイッチを使えば任意のタイミングでのシフトダウンも可能なのでとくに不足を感じない。

さらにびっくりしたのは、減速時のシフトダウン制御。MT-09 Y-AMTでも感じたことだが、スポーティーな走行でスロットルを急閉するような場面では、4→3→2としっかり2段ほどギヤを落とす“気の利いた制御”を入れてくるのだ。しかもそれを6軸IMUを使わず、車輪速センサーやスロットルセンサーといった既存のセンサー類だけで判断しているのがY-AMTのすごいところ。高価なバイクが多く採用するような6軸IMUなどを装備しなくても、ヤマハはここまでライダーに寄り添った変速制御を可能としているのだ。

筆者はMT-09 Y-AMTにも試乗経験があるが、MT-07 Y-AMTで感心させられたのは巡航走行時のギヤチョイス。というのも、MT-09 Y-AMTのATモードは60km/h以下で淡々と走るような場面ではギヤが3速までしか上がらず、少々ヤキモキしたのだ(MTモードに切り替えれば手動でシフトアップは可能)。ところがMT-07 Y-AMTのATモードは同じような場面で5速に入り、MTモードなら6速まで使えるようになっていた。Y-AMTも2モデル目となりどんどん進化している印象だ。

左スイッチボックスのパドルスイッチではMTモードはもちろん、ATモードでもギヤチェンジ操作が可能。ちなみに人差し指で引けばシフトアップで親指で押せばシフトダウン。また人差し指で奥へ押すことでもシフトダウンが可能。

Y-AMTのモードにはATモード(D/D+)とMTモード(SPORT/STREET/CUSTOM)があり、右スイッチボックスの“AT/MTスイッチ”、“MODEスイッチ”で切り替える。MTモードでも変速はパドルタイプのシフトボタンで行うので、シフトペダルは装備されない。

Y-AMT仕様はレジューム機能付きのクルーズコントロールを装備。設定条件は3速以上で約40~180km/hとなっている。

ウインカーは新スイッチボックスの採用とともに、軽く押すと3回点滅でキャンセル/消し忘れ防止(オートキャンセル)/エマージェンシーストップシグナルといった新機能が搭載された。

車体左側にあるのがY-AMTの電子制御シフトユニット(撮影のためにカバーは取り外している)。

電子制御クラッチユニットは車体右側にある(撮影のためにカバーは取り外している)。

まとめ:電子制御の充実で懐がさらに広く!

持ち前の軽い車体を維持したまま、倒立フォーク化やラジアルマウントキャリパーといった上級装備を得て走りのステージを引き上げたMT-07シリーズ。面白いのは、ただ上級者向けに車体性能をリファインしただけでなく、電子制御装備を充実させたことで初心者にも扱いやすくなっていることだ。

初心者にとってはより扱いやすく、ベテランにとっては一段走りの質を引き上げることになった2025モデルのMT-07シリーズ。

電子制御スロットルを得たことで、エンジン出力特性やトラクションコントロールを搭載でき、乗り手のレベルに合わせたセッティングが可能になった。しかも、バリエーションモデルにはオートマチックのY-AMT仕様が登場したことで、ギヤチェンジに不慣れな初心者はもちろん、クラッチレバー操作が億劫になってきたベテランライダーへの親和性もアップ。

個人的に驚かされたのは、数日間乗り回しているうちに、MTモードは使わずATモード一択で走り続けるようになってしまったことだ。筆者はすでにバイク歴が30年を超え、「この先あと何台のバイクを乗ることができるか?」なんてことを考えるお年頃。体力が落ちれば当然、ダウンサイジングといったことを考えるようになるだろうが、このMT-07 Y-AMTがあればそんな場合でもまだまだバイクを楽しめる、乗り続けられそうな確信を得ることができた。

YAMAHA MT-07 Y-AMT【2025 model】

【2025 YAMAHA MT-07 Y-AMT】主要諸元■全長2065 全幅780 全高1110 軸距1935 シート高805(各mm) 車重187[183]kg(装備) ■水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 688cc 73ps/8750rpm 6.9kg-m/6500rpm 変速機形式6段リターン 燃料タンク容量13L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ■価格:105万6000円[96万8000円] []はSTD

体格やスキルに関わらず、誰もが扱いやすい車体デザインという意味の「Natural Simplicity for everyone」というデザインコンセプトを掲げてリニューアルした車体デザイン。日本の伝統的な建築方法“嵌合(かんごう)”の考え方を随所に取り入れている。

フロントマスクは2024年にリニューアルしたMT-09と同じデザインテイストのフロントマスクに。

第4世代の新デザインを得た新型MT-07。シュラウドをはじめとした外装部分のボディーワークだけでも0.6kgの軽量化に成功。

フォークオフセットも変更し、トレール量をアップしたことで、軸間距離は先代比-5mmの1395mmに。前後の分担荷重はわずかに変わり、フロント側が-0.4%となっている。

バッテリーはYTZ10SからYTZ7Sへと仕様変更して軽量化。シートフレームは積載能力アップのために強化されており、リヤキャリアを装着するためのボルト穴やカウルの切り欠きも設けられた。

RIDING POSITION

シート高は足着きの良さで定評のあった先代と同じ805mmを確保。ハンドルとフットペグのポジションは、大柄なライダーでもゆったり乗れるような位置に再設定。両足を着こうとすると若干浮くぐらいの足着き性だ。【ライダー:身長172cm/体重75kg】

大柄なライダーでもゆったり乗れるよう、ステップの位置を10mm下げ、乗車時の膝の曲がりを緩やかにしている。

やや内腿への干渉が気になるようになったシート。従来型は踵までべったりだったが、新型は若干浮くように。それでも足着き性が良好なのは変わりない。

TESTER:谷田貝 洋暁

『レディスバイク』『Under400』『タンデムスタイル』など、初心者向けバイク雑誌の編集長を経てフリーランス化したライター。“無理/無茶/無謀”の3ない運動を信条としており、毎度「読者はソコが知りたい!」をキラーワードに、キワどい企画をヤングマシン編集部に迫る。ガチテストやオフロード系を担当することが多く、叩けばたぶんホコリが出る。プライベートではMT-07と同系のCP2エンジンを搭載するテネレ700(2020モデル)に乗っている。


※本記事はYAMAHAが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。