第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

東京モーターショー開発者インタビュー

ホンダCT125 開発者に聞く「モチーフは1980年代ハンターカブですが、新しさも盛り込んでいます」

  • 2019/10/25

ホンダが東京モーターショー2019で世界初公開したCT125は、“ハンターカブ”の愛称で知られる往年のCT110を現代の技術で復刻したコンセプトモデル。このデザインを担当したモデラーの鳥山英二さんに、外観上のポイントや気になる今後のことを聞いてみた!

TEXT:Toru TAMIYA

スーパーカブC125とモンキー125に続け!

1961年に開発された、米国市場向けのC100T(初代スーパーカブC100ベースのトレールバイク)が先祖とされ、1963年に54cc仕様のC105Hが後継機種として登場した際に、日本でもハンターカブC105Hとして発売。“ハンターカブ”という愛称の由来は、ここがルーツとされる。このモデルは、1960年代後半にCTシリーズへと進化を遂げ、アメリカやオーストラリアなどで狩猟や農作業や牧場移動用のツールとして受け入れられた。1981年には、105ccの空冷SOHC単気筒エンジンを搭載したCT110へと発展。日本ではわずか2年ほどで販売が終了されたが、オーストラリアでは2012年まで継続販売され、これが日本にも輸入されて“ハンターカブCT110”として親しまれてきた。

今回ホンダが発表したCT125は、そんなCT110を現代的な技術も用いながら復刻させたコンセプトモデル。これまでのCT110にはかなり根強いファンも多く、それだけに、まだコンセプトモデルの段階とはいえ開発やデザインには苦労もあったはずだ。そのあたりのことを、モデラーとしてデザインを担当した鳥山英二さんにお聞きした。なおこのモデルは、スーパーカブC125やモンキー125の開発で知られる、ホンダがタイに開設したデザインR&Dセンターでつくり上げられている。

デザインモチーフはCT110だが、すべてを踏襲したら面白くない[一問一答]

編集部:これまでも多くのファンが、いわゆるハンターカブの再登場を待ち望んできました。なぜこのタイミングで、CT125コンセプトモデルを発表したのでしょうか?

鳥山さん:タイミングを計っていたとか、そういうことはないんです。もっとシンプルに、現在のお客様が望んでいるものを考えたとき、こういう機種も受け入れられるのではないかと考えて、今回はコンセプトモデルとして提案させていただきました。

編集部:開発はタイのデザインR&Dセンターが担当したとお聞きしています。これは、タイでこのような機種の要望が高まっているということでしょうか?

鳥山さん:とくにタイがとか、あるいは特定の国や地域を意識したということはありません。この車両に関しては、いわゆるホンダの伝統がふんだんに含まれています。そういう要素を用いながら、多くの方々に好まれるようなモデルの提案を目指しました。

編集部:ベースとなっているのは、スーパーカブC125と捉えてよいのでしょうか?

鳥山さん:エンジンなどに関しては、C125ベースです。

編集部:ホンダの現行モデルには、クロスカブ110も存在します。かつてのCT110を彷彿とさせるなら、こちらを使用してもよさそうな気がするのですが?

鳥山さん:たしかに現在のラインアップには110もあります。しかし、よりパワー&トルクに余裕がある状態で、トレッキングのような遊びをゆったり楽しんでもらうためには、C125のパワーユニットをベースにするほうがよいと判断しました。

編集部:全体的な車両のイメージとしては、排気量が違うとはいえ日本では同じ原付二種クラスとなるクロスカブ110と、やや被る要素もあるように感じます。このあたり、制作サイドとしてはどのように捉えているのでしょうか?

鳥山さん:我々としては、もちろんこちらはハンターカブがモチーフの125ccクラスということもありますが、クロスカブ110よりもさらにオフロード性能を強調したデザインとアクティブな走行性能を目指すことで、差別化は図れていると思っています。

クロスカブ110よりもオフロードテイストを強めた。大きなリヤキャリアやアップマフラーなどが“ハンターカブ”をイメージさせる。

編集部:では車両デザインに関して、とくに重視した部分はどこでしょう?

鳥山さん:まずは、スーパーカブシリーズのフレームが持つ、S字状のシルエットがしっかり映えることにこだわりました。同時に、フロントまわりで力強さを表現するというところにも気を遣っています。

編集部:ハンターカブがモチーフということで、マフラーは当然のアップタイプ。しかしそのヒートガードは、CT110のようなスリットではなくパンチングメッシュのデザインです。ここにはどのような意図が?

鳥山さん:全体的なデザインモチーフはかつてのCT110ですが、すべて踏襲してしまったのではおもしろくありません。やはり、新しさも感じてほしいということで、パンチングメッシュ風のデザインを提案しました。

編集部:アップタイプということではもうひとつ、車体左側の吸気ダクトが、リヤキャリヤに刺さっているのがとても気になります。これはダミーではなく、実際の機能として想定しているのでしょうか?

鳥山さん:はい、その通りです。デザイナーとしては、前後タイヤがほぼ水に浸かったような状態でも走らせたいという思いがあります。現段階では想定としてという話なので、実際に機能するのかは検証していかなければいけませんが、モデルの提案ということでは、そこまで過酷な状況でも走らせたいと夢見ています。

編集部:前後ブレーキはディスク式です。レトロなデザインを求めて、ドラム式にしたいなんて要望はありましたか?

鳥山さん:いえ、そのようなことは一切ありません。やはり現代のバイクとして、安全性や操縦性を優先し、付加価値を高めるというのが、開発陣共通の考えです。レトロなルックスを重視して性能を犠牲にすることはありません。

パンチングメッシュのマフラーカバーやスイングアームのステップ取り付け穴の跡(?)に注目。

編集部:塗装が施されていて一見しただけではわかりづらいのですが、スイングアームにはタンデムステップ装着用のネジ穴があるようですが……?

鳥山さん:これは正直にお話してしまいますが、スーパーカブC125から流用しています。とはいえ、このCT125にはモデルのコンセプトに合うかなり大きなリヤキャリアを装着してあり、このままタンデムするというのは、どう考えても快適性という点でムリがあると思います。そういう事情から、今回はタンデムステップを装着していません。ちなみにリヤキャリアは、ボルトで着脱できるような想定です。コンセプトモデルなので、あくまで“想定”とか“世界観”という表現になってしまいますが、キャリアの上にタンデムシートを装着するというようなことも、イメージとしてはありますね。

編集部:ずばり、評判はいかがですか?

鳥山さん:東京モーターショーが開幕する前から情報は公開されていたこともあり、初日からわずかな時間で、かなり良好な反応をいただいています。我々にそういう声が多く届くことで、市販化に向けた社内での議論に盛り上がりが増すと思います。

編集部:となると、まだ気の早い話だとは理解していますが、なんだか車名のことが気になります。少なくとも日本では、やはり“ハンターカブ”という愛称こそがブランドのようにも思うのですが……?

鳥山さん:車名に関しては、すでに多くの意見をいただいています。我々として申し上げられることは、これはあくまでコンセプトモデルで、それを「CT125」として提案させていただいたということ。そこから先は、今後の展開を自由に想像してお楽しみいただければと思います。

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)