青木宣篤さんがヤングマシン誌で連載中の上毛GP新聞(じょうもうグランプリしんぶん)から、2019年の鈴鹿8耐に青木さんがライダーとして参戦したMotoMap S.W.A.T.の戦いをクローズアップ。ピレリタイヤに慣れるまで時間がかかってしまったというが……。
ウィーク中に課題をクリア、チームは前に進み続けた
我らがモトマップSWATの鈴鹿8耐は、想定以上の好発進だった。予選ではジョシュ・ウォータースとダン・リンフットが2分8秒台という好タイムをマーク!
我がチームはSST(スーパーストック)クラスへの参戦で、GSX-R1000はほぼノーマル。2分8秒台は改造範囲の広いEWCマシンでも10番手あたりのタイムで、我々の予選はもちろんクラストップだった。
ただ、チームの課題はいくつかあった。ひとつは、ワタシ自身。予選では11秒台ともうひとつだったのだが、これはピレリタイヤの特性把握に時間がかかってしまったから。話は飛ぶが、ピレリの走らせ方がようやく掴めたのは決勝レース中だった……。
通常、リヤタイヤがスライドしたらライダーはそれを止めようとするのだが、ピレリの場合は逆。思い切ってアクセルを開けてスライドさせっぱなしにした方がタイムが出る。オーストラリア選手権、そしてイギリス選手権でそれぞれピレリタイヤを履いているジョシュとダンは、その特性をよく理解していたのだ。
もう少し早くピレリタイヤのことを分かっていれば……と悔やまれるが、せめて決勝中に前進できたのはよかったかな。
どんどん早くなったピットワーク
もうひとつは、ピットワークタイムだった。SSTクラスは改造範囲が狭いので、EWCのようにクイックリリースを使えない。リヤタイヤは「交換がめちゃくちゃ早い」と鳴り物入りで投入されたジョシュの弟、ブローディが活躍してくれたが、フロントタイヤの交換にどうしても時間がかかる。特に問題はブレーキまわりの処理の仕方だった。
レースウィークの最初のうちはタイヤ交換だけで1分かかっていて、「これは……」と思っていたが、いろいろ工夫を施した。最終的には交換するホイールにあらかじめキャリパーを組んでおき、キャリパーごとごっそり交換するやり方に。さらにメカニックたちもどんどんスキルアップして、なんと30秒も短縮できた。
冷静沈着なダンがチームの支柱に
走行後は意外とヒートアップして、マシンへの不満をぶちまけがちなジョシュに対して、ダンは常に冷静沈着。マシンの解析能力も高く、「いいかジョシュ、今はセッティングがコレコレ、こんな感じだからな……」と話すうちにジョシュも落ち着きを取り戻すといった具合で、ライダーのコンビネーションもうまく行っていた。
決勝は、スタートライダーのジョシュが1回目のスティントで転倒! ピットに戻ってからはメカニックたちが猛烈な勢いで修復し、ラジエター交換までしたのにわずか10分でコースに復帰できた。
ジョシュまさかの転倒! 修復は素早かったが……
その後は大きな問題なく最後まで走り切れたが、目標だったクラス優勝は望めず、結果はクラス4位、総合27位。残念だが、ジョシュも少しでも上を狙って頑張ってくれての転倒だし、仕方ないとしかいいようがない。それより、チーム全員が一丸となって全力を尽くせたスバラシイ夏だった。
来年? もちろんクラス優勝をもぎ獲りに行きますよ! 今はもう、来年の鈴鹿8耐の出場資格を得るために、今年末のセパン8耐に照準を合わせている。
後悔しているヒマはない。前進あるのみだ!
チーム総監督は今年もボートレーサー
〈青きの眼〉2度とこんなことがないように……
カワサキ、ヤマハ、そしてホンダ。3メーカーのファクトリーチームにより超ハイレベルな戦いが展開した今年の鈴鹿8耐。
残り6分で後方を走っていたスズキ耐久チーム(SERT)のマシンが白煙を噴き、残り2分を切った最終周にトップのカワサキが転倒。ここで赤旗が掲示され、チェッカーフラッグなしのままレースが終了したことで裁定が揺れ、最初はヤマハの優勝、後に覆ってカワサキの正式優勝となった。
優勝を決める大事な規則に曖昧さがあってはいけないし、何よりライダーの安全を考えSERTのマシンが白煙を上げた時に素早くセーフティーカーを入れるべきだった。
優勝が覆るという何とも残念な結末になった今年の鈴鹿8 耐。さまざまな事態が起こり得る耐久レースだけに、レギュレーションの明確化と適正な運営を強く望みたい。
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