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世界記録337km/h樹立のNinja H2、’19新型の真価は?【カワサキ開発者インタビュー】

Ninja H2 世界最速記録樹立

『ヤングマシン』本誌が主催する読者投票「マシン・オブ・ザ・イヤー」において、2年ぶりにカワサキ Ninja H2がMOTY総合部門の栄冠を奪取したことは既報の通りだが、そのH2は2018年のボンネビルスピードウィークに参戦し、改造が厳しく制限されたP-PB1000クラスにて世界最速となる337.064km/hを達成している。その挑戦の経緯、および’19年型H2の注目トピックについて、開発者の市 聡顕氏(川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー)に話を聞いた。

市 聡顕 氏(川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー)

川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー
市 聡顕 氏

Ninja H2/H2Rの開発リーダー。二輪車カンパニーの枠を超え、航空宇宙やガスタービンエンジンなど別部門の協力を取りつけ、川崎重工として高い技術力を結集した立役者。

圧倒的なパワーで公道モデル最速を記録

「2015年にNinja H2がデビューしてから4年、最新の2019年モデルでは最高出力を231psへと大幅にアップさせました。クローズドコースモデルのNinja H2Rが310psというのから見れば、単純にデチューンの幅を狭めた程度に思われがちですが、実際には細かな部分に仕様変更が加えられています。そのノウハウのベースとなるのが、後発の兄弟車であるNinja H2 SXです。

ご存知の通り、Ninja H2 SXはツアラーモデルですからパワーと燃費を両立しなければなりません。そのために開発したのがバランス型過給エンジンですが、そこで実用化された高効率の技術をNinja H2のパワー型過給エンジンにフィードバックしているのです。

その最たるものが、アルミ製の吸気チャンバーといえるでしょう。従来モデルでは吸気チャンバー自体を扇型にして効率を上げていましたが、2019年モデルでは内部にラッパ状のディフューザーを設置して、スムーズな吸気の誘導を実現しました。スーパーチャージャーによって押し出された過給気が一気にチャンバー内で膨張すると、乱流が発生して効率が低下します。しかし、ディフューザーを設けることで乱流を抑え、より効率良くパワーを引き出せるのです。実感としては、7000回転以上でトルクアップしていますから、まさにスーパーチャージャーの醍醐味がダイレクトに味わえる進化ですね。Ninja H2は高回転の伸びも段違いですから、圧倒的な加速感がさらにアップしています」

Ninja H2 世界最速記録樹立
ボンネビルスピードウィークに参戦したNinja H2は、メーター表示やリミッター、装着タイヤが異なる程度で基本は’19モデルの市販スペック。つまり、ノーマル車なのだ。ほぼこのままの市販車が購入できるとは、ライダーにとってロマンあふれる事実だろう。

「そのスペックをいち早く実証しようと、昨年の8月に社内チーム・Team 38からボンネビルスピードウィークへ3度目のチャレンジを実施しました。以前は自分たちで開発したマシンの可能性を知るため、最高のスペックを誇るクローズドコース用のNinja H2Rで参加しましたが、今回は公道モデル最速を勝ち取るために2019年仕様のNinja H2で参加。改造制限の厳しいP‐PB1000クラスにエントリーし、世界最速記録となる時速209.442マイル(337.064km/h)を叩き出しました。事実としては初日に時速210マイルは超えていたのですが、2日目の記録が朝つゆでタイヤが滑ったことから時速207マイル台と落ちてしまい、平均記録での結果には悔しさを感じています。絶対的なパワーが必要なのはもちろんですが、塩湖の路面や風の影響を受ける難しい競技ですから、なかなか思うようにはいかないですね。とはいえ、ほぼ公道用市販車のままでワールドレコードを樹立できたことは、開発者としてとても嬉しい成果です」

市 聡顕 氏(川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー)

自ら手がけたマシンの性能を証明すべく、開発ライダーの山下繁氏(右)らとTeam38で’15&’16年にNinja H2Rでボンネビルに挑戦(’15年は大会中止によりモハヴェ・マイルに参加)。’18年はNinja H2で記録に挑んだ。

市 聡顕 氏(川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー)

革新的な過給エンジンを搭載するNinja H2/H2Rは、本誌MOTY(マシン・オブ・ザ・イヤー)に輝いた他にも第69回自動車技術会賞の技術開発賞を受賞! また、昨年度の日本燃焼学会で技術賞というアカデミックな表彰も受けている。

スマホとの連携機能が新たな可能性へと導く

「2019年モデルのトピックとしては、フルカラー液晶メーターの採用も大きなポイントです。これもNinja H2 SXと共通する部分で、表示内容が一部異なる以外は基本的にベースを同じくする部分ですね。その最大の魅力は、スマホと連携できるアプリ”RIDEOLOGY THE APP”です。一般的には着信やメールをメーター画面にお知らせする程度の機能と思われがちですが、カワサキの凄さは電子制御に活用する車両情報も積極的に表示&ロギングできるという点です。スマホのGPSを活用しながらロギングしたデータをグーグルマップに投影できますので、どこでどんな走りをしたのかリプレイが可能。2019年モデルではフロントのブレーキキャリパーも小型・軽量なブレンボ製ストリート向けの最上級モデルに進化していますが、そのブレーキの液圧まで表示できるなんて、ちょっとヤリ過ぎかも? と思えるほどです。現在搭載するスマホアプリとの連携は、まだサーキットロガーと呼べるスペックではありません。しかし、将来的にはそこまでアップデートさせたいですね。

今年モデルではECUも変わっていますが、変更のメインはアプリ連携機能への対応です。車両のCAN通信から情報を拾ってスマホに転送しているのですが、これはユーザーとのインターフェイスとして今後の核になる存在だと考えています。今はモーターサイクルの状態を把握するツールという位置づけですが、将来はAIを駆使してモーターサイクルと会話できるようになれば、もっとモーターサイクルライフは楽しくなるでしょう。

いよいよ2019年モデルのNinja H2が国内デリバリーされますが、御注文を頂いてから1台1台丁寧に製作するため大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。販売モデルはNinja H2カーボンのみで、つや消し銀鏡塗装は戦闘機風のスパルタンな仕上げです。ハイリーデュラブルペイントも引き続き採用していますので、小キズなんて気にせずどんどん乗り回してください! みなさんに期待される過給エンジンの魅力を、今後さらに発展できればと思います」

吸気チャンバーの改良などで231psをマークした3代目

2019 KAWASAKI Ninja H2 CARBON
2019 KAWASAK Ninja H2 CARBON ■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ998cc 231ps/11500rpm 14.4kg-m/11000rpm■価格:356万4000円

2015年に200psという超弩級パワーでデビューしたNinja H2。2017年モデルで205psへと僅かにアップしたが、2019年モデルでは他を圧倒する231psへと大幅に進化している。これにはNinja H2SXに搭載されるバランス型過給エンジンの開発から得たノウハウも盛り込まれており、吸気経路はより高効率な形状へと進化。エアフィルター素材の変更やプラグ電極の突き出し量が0.1mmプラスされるなど、細かな仕様変更が施される。

2019 KAWASAKI Ninja H2 CARBON
Ninja H2 SXと同形状のアルミ製吸気チャンバーを採用。内部に乱流を抑えるディフューザーを装備し、過給をスムーズに誘導する。
2019 KAWASAKI Ninja H2 CARBON
実は2017年モデルから採用しているというハイリーデュラブルペイント。ワイヤーブラシ程度の擦りキズなら自己修復できるのだ!
2019 KAWASAKI Ninja H2 CARBON
クッション性に優れたウレタン塗装を自社で開発。軽い擦りキズなら1日ほどで復元でき、美しい銀鏡塗装を永く保つことができる。

●文/写真:川島秀俊
●取材協力:川崎重工業/カワサキモータースジャパン

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世界中から最速の称号を求めて猛者が集う「ボンネビルスピードウィーク」のP-PB1000クラスにて、ほぼ市販仕様ながら2018年最速記録である337km/hを樹立したニンジャH2。その記録がプリントされた非売限定Tシャツ(Mサイズ)を、『ヤングマシン』2019年9月号の読者限定で1名様にプレゼント。本誌をお手元に用意して、ヤングマシンメンバーズのページからお申し込みください(応募期間:2019/7/24〜8/22)。

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