風切り音が静かで頭の位置も安定

【最高峰の安全性と快適性】SHOEI X-Fourteen(エックス-フォーティーン)の試用インプレッション

シヨウエイ(SHOEI)が誇るレーシングフルフェイスヘルメットのX-Fouteenは、同社のレースサポートから得たノウハウを投入したトップモデル。筆者がバイクの試乗やサーキット走行、時に通勤なども含め約3年間、使用してきて感じることを率直に記していきたい。

走行の合間にかぶりっぱなしでも気にならない

まず触れておきたいのは、そのかぶり心地だ。レーシングモデルということでソリッドな印象を持ちかねないが、頭全体をしっとりと包み込み、ブレないホールド感は快適のひとこと。同社のZ-7に比べればやや大きく、また重量も多少は重くなっているのだが、それを感じさせないのは頭のどこかにかかる力が集中したりしないホールド性のたまものだ。しかも筆者は日本人にありがちな絶壁アタマの傾向が強めで、さらには側頭部がやや角ばっており、けっしてヘルメットにとっても包み込みやすいカタチではないと自負しているのだが、それでもそっとホールドしてくれて、風圧や振動でブレることがない。夏場を除けば、長時間にわたってかぶりっぱなしでもまったく大丈夫なほどだ。

【SHOEI X-Fouteen】●価格:6万4800円(単色)/7万8840円~8万2080円(グラフィック)※冒頭写真のX-Fourteen ASSAILは7万8840円 ●サイズ:XS(53-54)/S(55-56)/M(57-58)/L(59-60)/XL(61-62)/XXL(63-64)※単位はcm ●規格:JIS規格、SNELL規格、MFJ公認

転んでみてわかった重心位置(転びたくはなかったが……)

体感上の重量が軽いということは、重心に偏りががないということでもある。実際に頭を振ってみても、どこかに重量がかかって揺り戻しがある……なんていうこともない。そして、“振られない&揺すられない”ということは転倒時の首への負担が少ないということでもある。恥ずかしながら実際に転倒したこともあるのだが、背中から落ちたものの頭が大きく振られることはなく、ヘルメットは1ミリも接地しなかったうえに、首に筋肉痛が残ることもなかった(大きな転倒ではなかったというのも理由のひとつ。念のため)。

【左:リアフラップワイド/右:リアフラップナロー(オプション)】X-Fouteenの特徴でもあるリアスタビライザーは、両サイドに装着するシアフラップでさらに空力を向上。直進方向の空力を重視するワイドタイプ(標準装備)に加え、運動性能を考慮したナロータイプをオプション設定する。
こちらはロアエアスポイラー。脱着式で、内部への走行風の巻き込み防止と風切り音低減に役立つ。チンカーテンとの併用も可能。筆者は特に使用していない。

SHOEIが持つ風洞実験室でテストを重ねているだけあって、空力性能も優れている。ヘルメットに起因する乱流の発生は感じたことがなく、また風切り音もきわめて少ない。ヘルメットが浮き上がるような感覚もなく、常に頭の位置が安定していて視界がクリアなのは印象的だ。前後にやや長い形状となっていることから、身体を起こした状態で横を向くと空気抵抗はやや大きめになるが、高速道路を含む一般道の速度域ではまったく気にならないし、サーキットであれば(アップハンドルであっても)伏せ気味の状態が標準となるため、やはり実際には気にならない。

クリアな視界で安心&快適に走れる

視界についていえば、前述のように安定性にもとづく視界のクリアさがあり、またシールドも歪みはまったく感じず、気になることが何もない。レーシングポジションに対応して内装の角度を変えることができ、伏せた状態での前方視界を確保する仕掛けもあるが、筆者は標準位置が好みなのでそのまま使っている。「直線は常に燃料タンク上に顎を載せて走るものでしょ」というガチ勢であれば、レーシングポジションで使うほうが快適なのだろう、とは思う。

アップライトなライディングポジションのネイキッドやモタードなどと、上半身が前傾するスーパースポーツ/レーシングマシンでは、乗車姿勢を取った際のヘルメット位置が変わる。これに合わせてチークパッドとセンターパッドの装着位置を変更し、かぷり角度を4度変えることが可能となっている。

ベンチレーション機能も快適だ。筆者はどこかに風が集中して偏った冷え方をすると頭痛が発生しやすい傾向があるのだが、全体にムラなく涼しいため快適至極。口元のベンチレーションを開けても目が乾きにくいのは嬉しいところだ。雨の日にも使用したが、走行していれば曇ることもなく、またピンロックシールドを装着していれば長丁場のツーリングでも安心だろう。しいて言えば、通常の視界がクリーンすぎるがために、目線の近くに虫が付着したりすると、やや気になりがちな面はなくもない……と言えなくもないかもしれない。

チークベントシステムにより、インテークから導入した走行風は、チンバー内に設けられたエアルートを通り、チークパッド裏側よりウレタンに直接送風。ウレタン内部の熱こもりを抑える。
100km/h相当の風を30秒送風した時点で前作のX-TWELVEと比べると、まんべんなく温度が下がっていることがわかる。これが快適さのもとだ。
分割可能なパッド類であらゆるライダーにフィッティング。もちろん外して洗えるということは内装を清潔に保てるということでもある。

万が一のアクシデントに備えた緊急用ヘルメット取り外しシステム「エマージェンシークイックリリースシステム=E.Q.R.S.(Emergency Quick Release System)」も備えており、幸いなことにお世話になったことはないものの、これも安心感がある。

フィッティングについて不満を感じたことはないが、それでも人の頭のカタチは千差万別。当然、微妙に合わない人も出てくるだろう。いわゆる「俺はシヨウエイアタマだから」とか話題にあるアレだ。が、SHOEIではPFS(パーソナルフィッティングサービス)というものがあり、頭部のサイズを計測して適切なヘルメットサイズのアドバイスや無料フィッティングサービスを実施してくれる。これは通常、サービスを展開している店舗で購入した際に受けられるものだが、各種イベントに出展しているときにSHOEIブースを訪ねると、その場でフィッティングを実施することも可能。メンテナンスサービス(ヘルメットのクリーニング)と合わせてぜひとも利用したい。

気になる点があるとすれば……

被り心地や走行中の安定性など、使用時に不都合を感じる場面はまったくないが、持ち運びの際にはやや大きいと感じることもある。これは同じSHOEIのZ-7の際立ったコンパクトさを知っているから、そう感じてしまう面もあるのかもしれない。

いずれにせよ、非常に満足感の高いヘルメットであることに違いはない。グラフィックモデルでは8万円を超えるものもあるが、命を守り、安全で快適な走りを手に入れられるのだ。筆者としては、けっして高い買い物だとは思わない。

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