国土交通省が、国内のバイクに関する次期「排ガス規制」に関する発表を行った。長らく検討中だった欧州のユーロ5と同様の規制となり、炭化水素は最大で3分の1以下にまで削減。新たに有害物質の規制が規定されるなど大幅な強化となる。
国内ではまず’20年12月以降に生産される新型車から適用開始。これ以前にラインナップされた継続生産車は’22年11月から適用される。このあたりは既報とほぼ同じだが、注目したいのは、原付一種(50cc未満)の継続生産車のみ適用時期が「’25年11月」と遅い点だ。
対象車両 | 適用開始時期 |
新型車(全排気量) | 2020年12月 |
継続生産車(原付一種を除く) | 2022年11月 |
原付一種の継続生産車 | 2025年11月 |
国交省担当者に取材したところ、「環境省の中央環境審議会の答申を踏まえたもの」で、重量、搭載スペース、コストなど「小型車ほど排ガス対策の技術レベルは高くなる。メーカーとのヒアリングなどを考慮した結果、原付一種のみ適用時期を遅らせた」という。当面、現行の50ccが継続販売されることになったのは朗報。メーカーには、この猶予期間で、低コスト&高効率な排ガス対策が求められる。
また、次期規制からエンジンやマフラーなどの劣化を検知するOBD II(車載式故障診断システム)が義務化されるが、原付一種への導入に関しては「法改正の作業中で検討中」(国交省)。高額なOBD IIを含め、様々な排ガス対策で、「規制後は50ccが最低でも20万円超になる」と言われてきた。近年、電動アシスト自転車の増加などで50ccの販売不振が続いており、価格アップが追い打ちになれば最悪”絶滅”の恐れさえある。しかし価格アップを抑えられる可能性はまだありそうだ。
なお、今まで規制値は、排気量や最高速に応じて設定されてきたが、今回から全クラスで統一された点にも注目。一見、小排気量ほど不利になりそうだが、試験方法はクラスごとに異なる。試験は、市街地や郊外の走行を考慮した国際統一基準の”WMTCモード”を引き続き導入。原付相当のクラス1より、大排気量のクラス3の方が走行パターンの負荷が大きい。
走行耐久距離 | ||
現行 | 50cc未満 | 6,000km |
51〜125cc | 8,000km | |
126cc以上 | 24,000km | |
次期 | クラス1および2 | 20,000km |
クラス3 | 35,000km |
「耐久走行距離」は、触媒などが劣化せず、規制値を順守できる距離の目安。軒並み大幅増だが、50ccに至っては何と3倍超の耐久性が求められる。一体どこまで強化される?
とはいえ、欧州ではクラス1を125〜150ccクラスと想定しており、この排気量でギリギリクリアできるほど厳しい(50cc未満&最高速50km未満のモペッドは適用外)。日本でメジャーな50ccスクーターに厳しい数値なのに変わりはない。
今後、50ccに限らず、全ての排気量帯で価格増が見込まれる…が、ユーザーとしては、メーカーの頑張りに期待したい。
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