カワサキがNinja H2で実現したスーパーチャージャー(機械式過給器)を搭載したスポーツツアラー・Ninja H2 SXは、998ccから200psを発揮する。今回試乗した「Ninja H2 SX SE [2018]」は、フルカラーTFT液晶メーターパネルやLEDコーナリングライトなど上級仕様に相応しい機能を採用するモデル。そのツアラーとしての実力をあらためてチェックした。
日常で使える200ps。唯一無二のツアラーだ
SEとSTDとの価格差約38万円。内外ともに特別装備が充実
(○)独特の伸び上がり感と快適な乗り心地が共存
’15年、センセーショナルに登場したニンジャH2。その流れを汲むスーパーチャージド水冷並列4気筒を搭載し、インパクトのあるスタイリングをまとうのが、’18年3月に発売されたスポーツツアラー「ニンジャH2 SX」だ。標準モデルと上位版の「ニンジャH2 SX SE」があり、’19年モデルでは最上位の「ニンジャH2 SX SE+」が追加された。
今回試乗したのは’18モデルのニンジャH2 SX SEで、機能に関わる部分でのSTDと
998ccからニンジャZX-14Rと同等の200psを発揮するエンジンは、低中回転域で拍子抜けするほど扱いやすい。デュアルセカンダリーバランサーのおかげで微振動が限りなく少なく、また滑らかに変速するドッグリングミッションとクイックシフターのタッグにより、フル/ミドル/ローの3段階から選べるパワーモードを最強にしてすら、上質な雰囲気が漂う。過給によって加速感が増してくるのは6000rpm付近からで、ZX-14Rのように強大なトルクでアスファルトを蹴り出すというよりも、まるで滑空しているような伸び上がりを見せる。スロットルを大きく開ければ興奮を覚えるほどパワフルだが、トルクのつながりはバランス型スーパーチャージャーのおかげでスムーズであり、さらにIMUを介した緻密な制御のトラクションコントロールによって峠道でも凶暴さは皆無。上質で実用的なエンジンと言えよう。
ハンドリングは、ニンジャZX-14RよりもニンジャH2 SX SEで9kg軽いこと、またクランクマスが少ないこともあってか、倒し込みや切り返しは見た目よりもはるかに軽快だ。舵角主体で旋回するイメージで、深く寝かさなくてもスイッと向きを変える。剛性の塊のようなニンジャZX-14Rとは対照的に、車体はしなやかでありながら常に路面を捉え続けてくれ、それでいて強いブレーキング時にフロント周辺の剛性不足を感じることは一切ない。高速巡航時の乗り心地は優秀で、大型スクリーンによる防風効果も高い。
(△)KQS(カワサキ クイック シフター)が後付け可ならSTDでもいいのだが…
ニンジャH2が300万円を超えるので、ニンジャH2 SX SEの237万6000円でもかなり安いと言えるのだが、標準モデルとの価格差(約38万円)を考えるともうひと声の感が否めない。STDにクイックシフターがオプションで追加できるようになればさらに売れそうな気も。
※追記:2019年STDモデルにおいて、オプションとしてクイックシフターを後付けできるようになった。
【結論】存在が唯一無二。速いだけでなく快適なツアラー
6000rpm以上でスロットルを急閉すると、ブローオフバルブが開いて「ヒュルルルッ」という音が響き渡る。外観や諸元はインパクト大だが、スポーツツアラーとしては正統派であり、この分野を得意とするカワサキらしい1台だ。
【KAWASAKI Ninja H2 SX [2018] ●価格:199万8000円 ●色:黒】全高が55mm低く、車重が4kg軽い標準モデル。ニンジャH2 SX SEとの装備の違いは上に記したが、スーパーチャージャーをこの値段で味わえるのは魅力だ。
【KAWASAKI Ninja H2 SX SE+ [2019] ●価格:277万5600円 ●色:灰×緑】ミラノショーで発表された最上位モデルは、ショーワと共同開発の電子制御サスペンション、ブレンボのモノブロックキャリパー、自己修復ペイントなどを採用。国内仕様は’19年2月1日に発売された。
●写真: 飛澤 慎
※取材協力:カワサキモータースジャパン
※ヤングマシン2019年1月号掲載記事をベースに再構成
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