速いだけではない。存在が唯一無二の快適ツアラー

カワサキ ニンジャ H2 SX SE試乗インプレッション【日常で使える200ps】

KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]

カワサキがNinja H2で実現したスーパーチャージャー(機械式過給器)を搭載したスポーツツアラー・Ninja H2 SXは、998ccから200psを発揮する。今回試乗した「Ninja H2 SX SE [2018]」は、フルカラーTFT液晶メーターパネルやLEDコーナリングライトなど上級仕様に相応しい機能を採用するモデル。そのツアラーとしての実力をあらためてチェックした。

日常で使える200ps。唯一無二のツアラーだ

KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]
KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018] ●色:緑×黒 ●価格:237万6000円
KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]
主要諸元:全長2135 全幅775 全高1260 軸距1480 シート高820(各mm) 車重260kg(装備) 水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブスーパーチャージャー 998cc 200ps/11000rpm 14.0kg-m/9500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量19L ブレーキF=Wディスク R=ディスク タイヤ F=120/70ZR17 R=190/55ZR17
KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]
その斬新なスタイルはニンジャH2譲りだ
カワサキ '18ニンジャ H2 SX SE
ニンジャH2と同様の解析技術で設計されたトレリスフレームは、ニンジャ1000と同等の195kgという車載可能重量を達成。片持ち式スイングアームはアルミ鍛造で、ニンジャH2より15mmロング化されている。
カワサキ '18ニンジャ H2 SX SE
シート高は欧州仕様の835mmに対して国内仕様は820mm。ニンジャZX-14Rの800mmよりは高いが、ご覧のとおり足着き性は良好。ハンドル位置も近く、意外にもコンパクトだ(身長175cm、体重62kg)。
KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]
(左)遊星ギヤで駆動される12枚羽根のインペラは、鍛造アルミ材から5軸CNCで削り出したもの。最大加圧は約2気圧で、インテークチャンバー内にECU制御のブローオフバルブを設置。(右)ショックユニットは前後ともにフルアジャスタブルで、鋳造ホイールはSX専用設計だ。
KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]
(左)キーでロックを解除するとリヤシートが取り外せ、フロント側は工具なしで脱着が可能。(右)リヤシートの下にはETC2.0車載器を標準装備。ロゴ入りの専用ポーチに収納される。

SEとSTDとの価格差約38万円。内外ともに特別装備が充実

カワサキ '18ニンジャ H2 SX SE
カラーリング以外で外観上の大きな違いはコーナリングライトの有無だ。縦に3つのLEDバルブが並んでおり、バンク角に応じて点灯する個数が増え、旋回方向を明るく照らしてくれる。
KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]
(左)ニンジャH2 SX SEはより防風効果の高い大型スクリーンや電源ソケットを採用。(右)メーターもフルカラーTFT液晶となり、2つの表示モードが選択可能に。スポーツモードではIMUのデータを視覚的に強調して表示する。
KAWASAKI Ninja H2 SX SE [2018]
グリップヒーター(左)と2500rpmでアップ&ダウンとも使用可能なクイックシフター(右)。その他の特別装備として、ローンチコントロールやセンタースタンド、切削加工の前後ホイール、プレミアムシートなどを採用。

(○)独特の伸び上がり感と快適な乗り心地が共存

’15年、センセーショナルに登場したニンジャH2。その流れを汲むスーパーチャージド水冷並列4気筒を搭載し、インパクトのあるスタイリングをまとうのが、’18年3月に発売されたスポーツツアラー「ニンジャH2 SX」だ。標準モデルと上位版の「ニンジャH2 SX SE」があり、’19年モデルでは最上位の「ニンジャH2 SX SE+」が追加された。

今回試乗したのは’18モデルのニンジャH2 SX SEで、機能に関わる部分でのSTDとの差異はローンチコントロールやクイックシフター、LEDコーナリングライト、大型スクリーン、グリップヒーターなどで、それ以外は外観をより豪華にするためのパーツが中心となっている。

998ccからニンジャZX-14Rと同等の200psを発揮するエンジンは、低中回転域で拍子抜けするほど扱いやすい。デュアルセカンダリーバランサーのおかげで微振動が限りなく少なく、また滑らかに変速するドッグリングミッションとクイックシフターのタッグにより、フル/ミドル/ローの3段階から選べるパワーモードを最強にしてすら、上質な雰囲気が漂う。過給によって加速感が増してくるのは6000rpm付近からで、ZX-14Rのように強大なトルクでアスファルトを蹴り出すというよりも、まるで滑空しているような伸び上がりを見せる。スロットルを大きく開ければ興奮を覚えるほどパワフルだが、トルクのつながりはバランス型スーパーチャージャーのおかげでスムーズであり、さらにIMUを介した緻密な制御のトラクションコントロールによって峠道でも凶暴さは皆無。上質で実用的なエンジンと言えよう。

ハンドリングは、ニンジャZX-14RよりもニンジャH2 SX SEで9kg軽いこと、またクランクマスが少ないこともあってか、倒し込みや切り返しは見た目よりもはるかに軽快だ。舵角主体で旋回するイメージで、深く寝かさなくてもスイッと向きを変える。剛性の塊のようなニンジャZX-14Rとは対照的に、車体はしなやかでありながら常に路面を捉え続けてくれ、それでいて強いブレーキング時にフロント周辺の剛性不足を感じることは一切ない。高速巡航時の乗り心地は優秀で、大型スクリーンによる防風効果も高い。

(△)KQS(カワサキ クイック シフター)が後付け可ならSTDでもいいのだが…

ニンジャH2が300万円を超えるので、ニンジャH2 SX SEの237万6000円でもかなり安いと言えるのだが、標準モデルとの価格差(約38万円)を考えるともうひと声の感が否めない。STDにクイックシフターがオプションで追加できるようになればさらに売れそうな気も。

※追記:2019年STDモデルにおいて、オプションとしてクイックシフターを後付けできるようになった。

【結論】存在が唯一無二。速いだけでなく快適なツアラー

6000rpm以上でスロットルを急閉すると、ブローオフバルブが開いて「ヒュルルルッ」という音が響き渡る。外観や諸元はインパクト大だが、スポーツツアラーとしては正統派であり、この分野を得意とするカワサキらしい1台だ。

KAWASAKI Ninja H2 SX [2018]

【KAWASAKI Ninja H2 SX [2018] ●価格:199万8000円 ●色:黒】全高が55mm低く、車重が4kg軽い標準モデル。ニンジャH2 SX SEとの装備の違いは上に記したが、スーパーチャージャーをこの値段で味わえるのは魅力だ。

KAWASAKI Ninja H2 SX SE+ [2019]

【KAWASAKI Ninja H2 SX SE+ [2019] ●価格:277万5600円 ●色:灰×緑】ミラノショーで発表された最上位モデルは、ショーワと共同開発の電子制御サスペンション、ブレンボのモノブロックキャリパー、自己修復ペイントなどを採用。国内仕様は’19年2月1日に発売された。

●写真: 飛澤 慎
※取材協力:カワサキモータースジャパン
※ヤングマシン2019年1月号掲載記事をベースに再構成

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