第47回マシン・オブ・ザ・イヤー2019

電動二輪車用交換式バッテリーのコンソーシアムを創設

日本のバイク4メーカーが史上初のスクラム! バッテリー規格の早期策定へ

  • 2019/4/4

本日2019年4月4日、ホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハの4社による日本国内における電動二輪車の普及を目的とした「電動二輪車用交換バッテリーコンソーシアム」の発足と協働の開始が発表された。世界4大メーカーたる日本のバイクメーカー4社がこのような協議体を発足するのは史上初。いったい何が起ころうとしているのか。

4社共同で声明を発表し、来るべき電動バイクの時代に備える

「VHSなのかベータなのか、そういった不必要な混乱を招かないためです」という例え話で質疑に応じた通り、4メーカーがバイク用交換式バッテリーの統一規格を定めるのは、無駄なく速やかに車両開発を進めるためと、市場の混乱を未然に防ぐことが目的だ。

では『決めるべきバッテリーの仕様』とは何か。簡単に言えば単3電池を使うのか単2電池を使うのか、といったイメージに近いと思っていただいていいだろう。バッテリーの大きさと形状、ジャックの形、電圧などが決まれば、あとは中身がパナソニック(ホンダとEVで協業中)だろうが東芝だろうが構わない。これに加え、交換式バッテリーをどのように運用していくのかも、各社それぞれということになりそうだ。いずれにしろ、交換式バッテリーの互換性が保たれるような規格を早期に策定することで、各社の車両開発に弾みがつくことは間違いない。

すでにPCXエレクトリックをリリースしているホンダ、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」でおなじみのヤマハはEビーノを販売中、スズキは2012年にEレッツを登場させた。そしてカワサキについては電動車両の販売こそないものの、過去にコンセプトモデルを製作などEVに意欲を見せている。

ということで、まずは各社から共同で出されたプレスリリースの内容を紹介しよう。

各社から出されたプレスリリースの内容は以下のとおり

二輪業界としては、より環境にやさしく利便性の高いモビリティとしての電動二輪車の普及を業界全体で検討しています。電動二輪車普及のためには、航続距離の延長や充電時間の短縮、車両およびインフラコストが課題となっています。これらの課題を克服するためにさまざまな取り組みがありますが、その対応の一つの手段として、コンソーシアムでは共通利用を目的とした交換式バッテリーとそのバッテリー交換システムの標準化の検討を進め、技術的なシナジーやスケールメリットを創出することを目指します。

コンソーシアムの活動を通じ、二輪業界全体で多様な議論をおこない、電動二輪車の普及により、低炭素社会の実現に貢献することを目指します。

左から[本田技研工業株式会社 二輪事業本部 二輪事業企画部 部長 三原大樹氏][川崎重工業株式会社 モーターサイクル&エンジンカンパニー 企画本部 渉外部 部長 古橋賢一氏][スズキ株式会社 二輪カンパニー 二輪企画部 部長 福留武志氏][ヤマハ発動機株式会社 MC事業本部 戦略統括部 統括部長 有西達哉氏]

代表幹事:本田技研工業株式会社 常務執行役員 二輪事業本部長 安部典明氏のコメント

「電動二輪車の普及には、航続距離や充電時間等の課題解決が必要であり、交換式バッテリーは有効な解決策と言えます。お客様の使い勝手を考慮すると、交換式バッテリーの標準化や交換システムの普及が不可欠と考えています。このコンソーシアムにおいて、まずは国内二輪4社で協働検討をすすめるとともに、この考えにより多くの方々に共感いただくことで、電動二輪車の利用環境が改善され、お客様の利便性を向上させる一助となればと思っています。」

どのように進め、どのように広げていくのか

発表の後に行われた質疑応答を要約すると、まずは国内の原付一種&二種のコミューター領域を対象に交換式バッテリーの仕様を決めることが先決。インフラについてはその後の話ということで明言されず、都市部以外の地域での整備が課題に挙がっていることが伺える。ヤマハは台湾のGogoroとの協業を検討中だが、これについては今回のコンソーシアムに影響を与えるものではない、とのこと。

また、各社が同じバイクを共有するということではなく、あくまでも交換式バッテリーの仕様のみを決めて、あとは各社の戦略次第であることも伺えた。各社のコメントは次のようになっている。「EV化はバッテリーが固定式や着脱式など様々ありますが、交換式はインフラを通じてできるため、顧客の利便性に役立ちます。とはいえ、インフラの費用を個社で賄うのは難しい。この4社でのコンソーシアムは意義あるものです(ヤマハ)」「ヤマハさんと同様ですが、Eレッツは使い勝手や価格の面で受け入れていただけたとは言えません。個社では難しく、コンソーシアムには意義を感じています(スズキ)」「原付一種を持たないカワサキは、小型EVを作ろうとすると数が少ないゆえに各種部品の調達に不利な面があります。将来的にEV化へと進むことになった際、メリットがあると考えます(カワサキ)」(ホンダは質疑応答の大半に応じていたため、個社としてのコメントはなし)

質疑応答のなかで、ひとつ注目すべきコメントがあった。「アジアで安全な規格を定めたい」というものだ。日本や欧米などの先進国では、電動で走る乗り物であっても安全のための法規はしっかりと整備されており、「いつ、どのような製品をリリースするのか」にある程度フォーカスすることができる。しかしアジア圏では様相が異なり、乱暴な言い方をすれば有象無象の電動バイクが跋扈している状況だ。

なし崩し的に安かろう悪かろう(バッテリーが燃えるなどの事故も起こりがち)の激安電動バイクが合法的に走れてしまう環境になれば、世界で売れているバイクの2分の1程度のシェアを誇る日本製バイクが受け入れてもらえない土壌になりかねない。そうした状況を避けるためにも、各国政府に働きかけ、法規の整備を促すことが重要なのだ。また、囲み取材では「免許制度についても働きかけが必要だろう」との言及もあった。このコンソーシアムの立ち上げには、現在の状況に対する大変な危機感と、オールジャパン体制で電動バイクの領域においても世界的なシェアを確保するという意図が透けて見える。

内燃機搭載のバイクにおいて大きなシェアを誇る日本車が共同で交換式バッテリーの規格を定めていけば、アジア諸国の政府に対する影響力も必然的に大きなものになるだろう。各国のインフラでスタンダードの地位を獲得すること以上に、まずは健全な市場を育成することが優先されるに違いない。

きっかけは2016年のヤングマシンだった!?

じつは、ヤングマシン本誌2016年1月号において、「電動バイクがつくる未来」と題してホンダの二輪事業本部長(当時)・青山真二氏と、ヤマハのMC事業本部長(当時)・渡部克明氏が対談を行っている。以下にその内容を紹介しよう。これがコンソーシアム設立の決め手になったとまでは言わないが、多少の影響を与えた部分もあったのではないだろうか……。

左から[本田技研工業株式会社 取締役 執行役員 二輪事業本部長(当時) 青山真二氏][ヤマハ発動機株式会社 取締役 上席執行役員 MC事業本部長(当時) 渡部克明氏]

「電動バイクがつくる未来」第44回東京モーターショー2015開催記念 ヤマハ×ホンダ EV対談

8月(2015年)に「E-Vino」を発売し、東京モーターショーでも「PES2」「PED2」を展示したヤマハ。同じく東京モーターショーにて市販を前提とした「EV-Cub Concept」を発表したホンダ。EV(電動バイク)による原付市場の再生と利用環境改善の可能性を探るべく、今号はその両社の対談を実現。EVの大きな課題、バッテリー問題克服への協働、その第一歩となるか。

YM:これまでのEVへの取り組みと今後の計画を教えてください。

ホンダ青山氏「もともとEVという意味合いで言うと’80年代後半から研究開発が始まり、1994年には「CUV ES」という「Dio」の外観をベースにしたニッカド電池搭載車両を出しました。3年間のリース販売かつ85万円からというもので官公庁にも利用いただいたのですが社会からの認知にまでは至りませんでした。その後も継続して研究・開発を進め、2010年に「EV-neo」という車両を約200台、新聞販売店やピザなどの宅配業務用にリース販売しましたが、使い勝手や価格面で通常のエンジン車両のようには市場に浸透しませんでした。

今回、「EV-Cub Concept」を東京モーターショーに出品しましたが、弊社社長の八郷のプレゼンテーションにもありましたように市販を前提に開発しています。使い勝手を考えて着脱式バッテリーを採用し、駐輪場でのプラグインと家庭のコンセント、その両方で充電できるように進めています。航続距離もかなり伸ばす予定で「ダントツに使い勝手を向上させたい」という認識でやっています」

YM:“EVカブ”は一般ユーザー向けに発売するということでしょうか。

ホンダ青山氏「そうです。ただ今回は、日本国内だけでなく、グローバルに展開するという計画です」

ヤマハ渡部氏「うちも1990年くらいから開発していて、2002年に「パッソル」でスタートし、それから「EC-02」「EC-03」、パッソルのモデルチェンジである「パッソル-L」、そして今回の「E-Vino」となるので、この12~13年で5モデルを発売しています。基本的には一般ユーザー用にと販売しているのですが、実際には全部足しても1万台にもいかないくらいです。やはり普及は非常に難しいんです。

歩いている人が自転車に乗って、次に原付に乗ってという間に「パス」のようなアシスト付き自転車の領域があるのですが、そこから「もっと楽だろう」と言って原付に入ってくる間のところがうまく取れていないと思います。

今、「パス」はもう50万台くらいの市場になっていて二輪の市場を上回っていますから、ああいうサポートのあるモビリティ市場というのは需要があるんです。ただ、「パス」を買った人たちはその後どうしているのかというと、子供ができて子供を乗せる「パス」を買ったら、その後、子供が手離れしたら家族で乗る「パス」を買うのですが、そこから先に行かないわけです。そこからはもう車になってしまうんです。原付という次の乗り物があるので、その提案がどうしたらできるのかというのがキーではないかと感じています」

YM:そのハードルとして“免許”という壁がありますが、原付クラスをEV化すれば国内販売100万台を後押しし、免許制度の改定などで様々なインセンティブも得られるのではないでしょうか?

ヤマハ渡部氏「そういうことも、一つの方法論にはなるかもしれないですね。法整備や環境整備というのはやはり業界で行いたいですし、バイクラブフォーラムでもSNSなどを使った若者への発信について議論されました。今の自工会は非常にいい動きだと思いますね。

ただ、今の原付がEVに置き換わるかというと、そんなに簡単な話ではないと思います。例えば、8月に出した「E-Vino」は台湾での製造とすることで価格を抑えていて、理想から言うと「Vino」を買いに来られたお客様に、「では、駆動力は何にされますか? エンジンもありますよ。電気もありますよ。電気はこういう特徴があって航続距離が少し短いのですが燃費はいいですよ。エンジンの方はもっとトルクも出るしパワーを感じるし、長い距離を走りますよ」

というぐらいの選択肢になれば一番ベストなんです。やはり今の技術で言うとエンジン車に比べるとはるかにコストと航続距離が足りないのでEVに置き換わるのは相当先になってしまうと思いますね」

ホンダ青山氏「100万台を目指すなかにあってEVのハードの課題は山積しています。「うるさい」とか「危ない」とか「くさい」とか「事故がどうの」などの意味合いにおいてEVの方がイメージ的にはそういう部分を払しょくする可能性は確かにあります。

しかしながら、今でいう「原付一種の法定速度の30km/hって危なくないんですか」と問われれば「絶対にそれで安全です」と言えるかというとそんなことはないですし、EVだったらそれが消えるのかというと、さっと消えることはほぼないでしょう。だからハードで「こんなにいいんですよ」と言ってもなかなか変わっていかないんです。

YM:航続距離が短くても買い物や通勤程度なら問題なく、高校生のバイク通学に使ってもらえれば学校も保護者もより安心です。どこからどうやって普及させるかですが、公益であれば国や自治体などの支援も受けやすい。実際にEVの市場を創ったとしたなら、二輪業界や社会に何をもたらすとお考えですか?

ホンダ青山氏「プランニングが描き切れていないのですが、「公益のために」というのは確実に思っていまして、EVによって何が変わるかっていう意味合いにおいては、最後は環境の保全とか資源の有効活用に行き着くと思います。二輪がEV化されることによっては、クリーンなイメージだとか環境に対してという意味合いであるとか、そういうところに尽きるんだと思います。

だからEVが本当に社会に認知され、受け入れられれば市場が活性化するのは確実ですし、ラストワンマイルのようなモビリティとしての意味合いは大きいと思います。やはり、そこにもっと積極的に意志を入れて介入していかなきゃいけないですし、EVの方が市場に受け入れられやすいというのであれば、当然EVにも注力していく必要があります。

ヤマハ渡部氏「車に行く前の間に、いかにEVを使って今のエンジン車だけじゃない、もう少し幅を持った選択肢で市場を広げられるかどうかということだと思うんです。その提案がうまくできればいいんでしょうけど、今はなかなかそれが見つかっていません。

うちが「E-Vino」を出したのは、原付に乗っている都会の女性の半分が一日5km以内しか使わないという調査結果を踏まえて、では、その人たちをターゲットに都会乗りに特化して、「ちょっとファッショナブルなのをやろうよ」と言って売り出したんですが、選択肢として広がってくれるかどうか、まだ結果はわかっていません」

ホンダ青山氏「ヤマハさんも我々も同じですが、現状ではバッテリーがなかなか安価にならなくて、そこに対してやはり積極的な研究・開発、さらには市販化への何らかの支援体制をいただけると、お客様もよりガソリン車とEVという選択肢が広がるといったことはありますよね。

――この対談は以下のような見出しで締めくくられている。「EVがうまく広がれば市場は拡大する。」

●インタビュー構成:田中淳麿

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帰ってきたネイティブ足立区民。ヤングマシン、姉妹誌ビッグマシンで17年を過ごしたのち旅に出ていた編集部員だ。見かけほど悪い子じゃあないんだぜ。
■1974年生まれ
■愛車:MOTOGUZZI V7 SPECIAL(2012)