インディアンの“サンダーストローク111”エンジンが、’19年モデルで3種類から選べるライドモードを追加。その実力を「チーフテン ダークホース」で確認した。
ルックスはよりモダンに
’19年モデルは外観/内部をブラッシュアップ
(○)従順なハンドリングと重厚なトルク感に酔う
ハンドルマウントのフロントカウルにサドルバッグを備えるインディアンのチーフテン。直接のライバルと思われるのはハーレーのストリートグライドで、車重は1kgしか違わないなど両車のスペックはかなり近い。
まずはエンジンから。3000rpmで最大トルクを発揮する空冷49度V型2気筒は、’19年型で出力特性を3種類から選べるライドモードを追加した。最も穏やかなツアーモードは’18年以前のエンジン特性に近いとのことで、スムーズなレスポンスと大排気量Vツインらしい蹴り出しの強さ、巡航時の豊かな鼓動感など、実によく調教されている。
これがひとつ上のスタンダードモードになると、スロットル開度に対するパワーの出方が鋭くなり、特に追い越し加速で恩恵が感じられる。さらにスポーツモードでは突進と表現できるほどパワフルになり、音量も明らかに大きく変化する。それでいてどのモードでもパーシャル時にギクシャクしないなど、セッティングにも感心しきり。クラッチ操作は重すぎず、シフトフィーリングも良好。そして、49度というやや中途半端なVアングルとリジッドマウントを採用しながら、体に伝わる不快な振動がほぼ皆無という点は驚くしかない。
ハンドリングも非常にいい。アルミダイキャストフレームにエンジンをリジッドマウントしているため全体の剛性が高く、入力に対して遅れることなく倒し込みや切り返しが決まる。そして、フロントカウル内の重量物がステムに近い位置にレイアウトされているからか、見た目から想像できないほど舵角の付き方が速くてスムーズだ。何より感心したのは、パワフルなスポーツモードにおいても車体や前後サスに不足を感じることがなく、またコントローラブルかつ強力なブレーキのストッピングパワーも余裕で受け止めること。気が付けば375kgの車体を振り回しながら峠道を楽しんでしまった。
電動可変式スクリーンを備えたカウリングの防風効果は高く、より高音質になったオーディオと合わせて巡航が非常に楽しい。総合的なツーリング性能はドイツ車に比肩するほどだ。
(△)ライバルよりも高いが、それを補う魅力がある
先にも記したように、スペックや装備はハーレーのストリートグライドに近いが、車両価格はチーフテンのほうが100万円ほど高い。とはいえ、クラシカルな見た目とは裏腹に走りは最先端であり、そこにハーレーでは超えられない壁がある。
こんな人におすすめ:ハーレーでは物足りないと思っている人へ
オフロードビークルやスノーモービルで有名なアメリカのポラリス社で生産されているインディアン。先人に敬意を払いつつも、過去に縛られない新しい技術を導入して作られたチーフテンは、多くの人に知ってほしい秀作である。
●写真:飛澤 慎
※ヤングマシン2019年2月号掲載記事をベースに再構成
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