CESエキジビションセンターの屋外エリアで、BMWモトラッド(バイク部門)は従来とはまったく異なる、新しいテクノロジー体験を紹介している。誰も乗っていないのに見事な走りを披露する、自動運転システムを搭載したR1200GSだ。
バイクが自ら発進、加速、コーナリングする
ラスベガスで開催中のCES(コンシューマーエレクトロニクスショー)でBMWモトラッドが披露したのは、’18年秋に発表された自律運転式のR1200GSの研究車両だ。ヤマハのモトボットやモトロイド、ホンダのライディングアシストとは異なり、自立するわけではなく、人間が手を貸してスタートする必要があるのはご愛敬だが、ベテランライダーでなければ難しいとされる低速ターンをリズミカルにこなす姿には驚かされる。
この自律運転式R1200GSは、発進、加速、コーナリング、そして減速操作を行い、停止までをすべて自動でこなしてくれるのだ。
そこで気になるのは、自動運転技術の発展とともにライダーのスキルが必要とされなくなり、乗り手が上達しないまま混合交通のなかへ分け入っていくことになるのでは……ということだ。とくに自力でライディングスキルを高めてきたベテランほど、こうした未来がくるのをを憂慮しているのではないだろうか。
しかし、どうやらそれは無用な心配であるようだ。BMWモトラッドによれば、このテスト車両の開発はライディングダイナミクスに関する貴重な洞察を得ることが目的だという。ライダーが危険な状況を認識し、難度の高い操縦技術を身につけるのを手助けするための技術なのだ。
理想的な走行ラインと完璧なコーナリング、正しいブレーキングポイント、そして最適なトラクションを得るためのスロットルコントロールを、バイク自体が理解している。そのことが、ライダーのスキル向上に役立つというわけだ。この点では、ライダーが転ばないように手助けする日本製の研究車両/研究ロボットとは、思想がずいぶん異なると言っていい。
BMWのライダートレーニング(ライディングスクール)では、公道で役立つ実践的な項目が多く、障害物を避けたりABSを作動させるほどのブレーキングにトライしたり、といったトレーニングが行われる。なんのためにそのスキルが必要なのかを頭と身体で理解しながら進めていくことで、世界的にも高い評価を受けているのだ。こうした思想が研究車両にも反映されているということなのだろう。
研究車両ということで詳細は不明だが、ステアリング操作やスロットルコントロール、ブレーキコントロールがバイワイヤーで制御される仕組みのようだ。ここで得られた知見が我々ライダーにもたらされる日を心待ちにしたい。
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