ロイヤルエンフィールドが英国発でコンセプトKXを披露

世界最古のバイクメーカーが戦前の高級モーターサイクルをオマージュ

20世紀末までは、走るシーラカンスとも言われたクラシックバイクを継続的に生産してきたロイヤルエンフィールドだが、今世紀に入って以降は着々と進化を続け、新エンジンの開発や往年のビッグネーム(コンチネンタルGTなど)の復活など、近年の勢いはとどまるところを知らない。そして今回のミラノショーではコンセプトKXを発表し、目の肥えた欧州のジャーナリストたちをも唸らせた。

イギリスのテクノロジーセンターで一気の開花!

‘17年11月5日、ロイヤルエンフィールド(Royal Enfield)社はイギリスの中央ミッドランド地区に新たな技術センターを立ち上げた。もともとイギリスの会社だった世界最古のバイクメーカー、ロイヤルエンフィールド社は戦前から戦後にかけてブリットやインターセプター、そして今回紹介するKXといった名車を輩出していたが、長い歴史を経て1970年に倒産の憂き目にあう。しかしインドで生き残っていたサテライト工場が本体となり、エンフィールドインディア、そして現在の社名へと変更したのちアイシャーモーターズの傘下となった。生き残っただけでなく、そのブランドの発展に力を尽くしてきた。そんなロイヤルエンフィールドにとって、経験豊かなイギリス人エンジニアと手を組んでの技術センター設立は悲願であり、ブランドへのリスペクトとさらなる発展への決意を表明するものでもあったといえよう。資本力だけではない、魂のこもった開発に期待が高まる。

テクノロジーセンター開設からの1年間で大きな変化を見せようとしている。

1938年製造のKXがオリジナル

コンセプトKXの元ネタになったのは、ロイヤルエンフィールドが1930年代後半に生産していたKXという名の高級モーターサイクルだったようだ。記者は寡聞にして知らないのだが、資料には1140ccVツインのサイドバルブエンジンを搭載していたと書いてあり、当時のブラフシューペリアやハーレーダビッドソンに匹敵する大排気量車だったことがうかがえる。調べた範囲では、欧州のオークションで数百万円以上の値がつくこともあるようだ。

【Royal Enfield Model KX 1938】
カッコイイのでカット数が多めになります。

英国製Vツインエンジンを搭載

この古いKXを特徴づけているのは、まずVツインエンジンだろう。Vツインのアングルはわからないが、見たところ60度まではいかない……55~58度くらいだろうか。前後気筒で共有されるキャブレターはサイドバルブということで低めの位置にマウントされ、排気管もシリンダー横あたりから出ている。ギヤボックスはこの頃のバイクらしく別体式だ。

詳細は不明だがセルフスターターが付いているようにも見える。

特徴的なフロントサスペンション

次いで、リジッドフレームにガーダーフォーク(ガーターフォークと呼ばれることが多い)という組み合わせが挙げられる。リヤにサスペンションはなく、そのままでは乗り心地が悪いのでシート下にスプリングを備えている。フロントのガーダーフォークは、リーディングアーム式の2本のリンクで支えられていて、ダブルウィッシュボーンにも似ている、と言えなくもない。そして流麗なタンクは(ブリティッシュ?)グリーンに塗られ、そのサイドには現代にそのまま引き継がれるロイヤルエンフィールドのロゴが配されている。

シートのスプリング、ガーダーフォークなど。グリーンのタンクも気品を漂わせる。
こちらはEICMA会場で撮影した別アングルのカット。ガーダーフォークの構造がむき出しでわかりやすい。エンジンのVアングルは60度足らずといったところか……。

コンセプトKXもVツインエンジン搭載

そして新型である。新型というかコンセプトモデルであり、ロイヤルエンフィールドとしてはデザインスタディ的な位置づけでもあることから、生産を目的とはしていないという。とはいえ、これは文句なしにカッコイイ。

新型コンセプトは新しさがありながらも往年の高級モーターサイクルに負けてはいない。

そのままとは言わなくとも、ぜひ市販化を検討してもらいたいと思うのは、記者だけではないんじゃないだろうか。いずれにしろコンセプトKXは、ガーダーフォークなどの個性を最新鋭のモーターサイクルと組み合わせ、傑作と呼ばれたデザインを再現しようと試みたもの。その実現にかかった期間は、プロジェクトがはじまってからわずか6か月にすぎないという。オリジナルと新型では、使われる技術には80年もの隔たりがあるものの、同じ系譜にあるものだとわかるはずだ。

[1938] Original KX/[2018] Concept KX
1140ccのサイドバルブVツインだったオリジナルに対し、コンセプトKXは838cc(?)のVツインエンジンを設定。見た目にはSOHCだが詳細は明かされていない。マフラーは右2本出しで、テールピースはスクエアを採用している。
ガーターフォークを現代風に解釈し、アルミの一体式アームを使用。構造はダブルウィッシュボーンにも似る。オリジナル同様、ヘッドライトはフォークとともに上下に揺れ動く構造だ。キャリパーはブレンボのアジア向けブランドであるバイブレ製。
ドロップインホイールと呼ばれる足にリジッド風のフレームを組み合わせ、シート下のパイプにショックユニットを内蔵。よくよく観察するとリンクが隠されているようだ。ちなみにスイングアームは片持ち式。
灯火類やメーターでもブランドイメージを表現する。真円のメーターパネルは全面液晶(のダミー)。マップやモバイル通信、ブルートゥースのアイコンもある。ヘッドライトはLEDのデイタイムランニングライトを備え、テールランプも同じマークを光で表現している。ユーこのまま発売しちゃいなよ、と思わずにはいられない。
ピンストライプのラインは手描き。燃料タンクに描かれるロゴはオリジナルと共通しており、その書体はまぎれもなくロイヤルエンフィールド。シンプルで暖かみのあるレザーシートの高級感といったらない。
【Royal Enfield Concept KX 2018】

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