2018年4月のフルモデルチェンジで3代目へと進化したホンダPCXシリーズに、量産二輪車として世界初となるハイブリッドタイプが新たにラインナップされた。排気量は原二枠の125ccで、これは日本専用車となる。果たしてベース車両の純ガソリン車とはどのような違いがあるのか? 前編の本稿では、PCXハイブリッドの基本仕様と試乗インプレッションをお届けする。
ガソリン車との違い歴然。アシストはあくまで自然
ガソリン車でエンジンの始動と発電を担っていたACGスターターを48Vモーターに置き換え、駆動アシストにも利用。既存のプラットフォームを生かしながら、最小限の追加装備でエンジン+モーターアシストを可能としたのが、このPCXハイブリッドだ。
専用色となるパールダークナイトブルー、そしてボディ側面に”ハイブリッド”の立体エンブレムがあることから、純ガソリン車のPCXよりも上質な雰囲気が漂う。だが、そうしたあえて差別化を図った装飾を除けば見た目はほとんど変わらず、量産2輪車世界初のハイブリッドシステムを採用しているという凄みは感じられない。
走ってみての印象も同様だ。確かに発進加速は力強いが、明確にモーターが駆動しているというドーピング的な外連味はない。スロットルを戻したときも同様で、メーター上では充電中を示すチャージのバーグラフが反応するものの、特に減速感が強いわけではなく、本当に回生しているのか不安になってしまうほど。ところがだ……。
同じ125ccのガソリンエンジンのPCXに乗り換えた瞬間、明確な違いに驚かされた。まずはアイドリングストップ状態からの発進加速。スロットルを開けてから実際に動き出すまでのタイミングが明らかに短く、この時点で半車身〜1車身の差が付いてしまうのだ。これはエンジンの再始動に要する時間の短縮とクラッチミートの早さによるもので、信号の多い都市部の移動において絶対的に有利な要素だ。
そして、そこからの加速感も明らかに速い。それもそのはず、採用された48Vモーターの出力は1.9ps、トルクは0.44kg‐mと公表されており、単純に足し算すると最大トルクはPCX150を上回るのだ。ホンダによると0→50mの発進加速で4mの差、さらに40㎞/hからの中間加速では200m先で7mも先行できるという(いずれも125比)。実際にもそうで、どのシーンにおいても常にハイブリッドが先行していた。
モーターアシストの特性はDモードとSモードに切り替えられ、全開時のアシストトルクは共通ながら、後者はハーフスロットルでのレスポンスに優れている。前後サスのセッティングはガソリン車と共通で、基本的なハンドリングにも大差はない。だが、右手の動きに対する反応が良くなった分だけ走りがキビキビとしたものに。付け加えると、ガソリン車と比べて車重が5kg増えているが、常用域でのトルクが厚くなったことから、むしろ軽快に感じられるというのは特筆すべきだ。
アシスト時間は、スロットル操作に伴うアシスト開始から約4秒間に設定されていて、その様子はメーターのバーグラフで読み取ることができる。つまり、4秒ごとにスロットルを一瞬でも戻して開ければ再びアシストしてくれるのだ。この”追いアシスト”は特に上り坂で威力を発揮するが、その分だけバッテリーの電力を消費してしまうので、使い過ぎには注意したい。
停車からアイドリングストップ開始までの時間を3秒から0.5秒に短縮したり、ドリブンフェイスを新設計して静粛性を高めるなど、細かい部分にまで上質さを追求したPCXハイブリッド。ABSまで導入しながら価格差を約9万円に抑えたあたりに、バイクにもハイブリッドを普及させたいというホンダのメッセージが伝わってくる。
〈ホンダPCXハイブリッドは純ガソリン車とココが違う#2/2:性能比較編へ続く〉
●写真:真弓 悟史
※『ヤングマシン2018年10月号』掲載記事をベースに再構成