マシン・オブ・ザ・イヤー2018
日英のミドル・ネオクラシックを乗り比べ

トライアンフ ストリートツイン vs ヤマハXSR700

近年、隆盛を極めているネオクラシックモデル。中でも注目を集めているのが伝統のボンネビルとXS-1を彷彿とさせる、日本と英国の2大両雄だ。 その本質を直接対決させることで、探ってみたい。

●テスター/丸山 浩(右):国際ライダーやウィズミー代表など、様々な顔を持つ本誌メインテスター。ホンダCB900Fのオーナーで旧車好きとしても知られる。もちろんネオクラも大好物だ。
●まとめ/沼尾宏明(左):一般ライダー代表として参戦。味わい系の外車が好物で、先代の空冷ボンネは意中の1台でもある。初試乗の水冷トラも気に入った様子!

2車ともに味わいは十分。より濃厚で旧車風なのは……

往年の名車イメージを取り込みながら、現代に再構築した「ネオクラシック」は、欧州を中心に人気を集めているジャンルだ。その代表格の1台がトライアンフのボンネビル。元々は1959年に登場した当時の世界最速機で、ロッカーズやカフェレーサーといった流行を巻き起こした傑作だ。21世紀に、この車名と姿が復刻され、現在に通じるネオクラブームの祖となった。’16年に865cc空冷バーチカルツインが水冷化され、1197ccと899ccの2本立てで新生。今回のストリートツインは、ボンネビルの意匠を引き継いだエントリー版の位置付けとなる。

●トライアンフ・ストリートツイン(103万〜105万6000円) 空冷ボンネビルの後継として‘16年にデビュー。新作の水冷ユニットを投入し、従来型から14 kgもの軽量化も果たした。マフラーやアルミキャストホイール、低めのシートなどは専用品で、兄弟車のボンネビルT100や上級版のT120より身近な価格を実現した。

水冷化されても伝統のバーチカルツインは健在。55psを発揮する排気量900ccのOHC4バルブユニットは、270度クランクによる従順さと 3230rpmで発生する最大トルクが特徴だ。電制スロットルにトラコン、スリッパークラッチまで装備。

まず外観は、古き良き時代のバイクそのもの。よく見るとエンジンにフィンが装着され、ラジエターを細身にするなど水冷ユニットに見せない工夫が随所に施される。FIカバーなど細部の質感も高く、クオリティは抜群だ。

走りも、このスタイルを裏切らないものだった。900ccの排気量ながら、出力特性がマイルドで急かされることがない。トルク感を伴った背圧のあるサウンドが常に心地よく、速度を上げるほど強調されていく。だが、真骨頂は、スローに流すシーン。例えば5速60km/h以下など回転が落ちた状態でアクセルを開けるとダダッダダッと振動が大きくなるが、これがまた可愛げがあって味わい深い。わざとギヤを外して乗りたくなるほどなのだ。

一方のXSR700は、かなり対照的だ。外観は、タンクの塗り分けにXS-1の面影を感じさせるものの、他に懐古的な要素は薄く、新しいデザインを試みている。質感はストリートツインほどではないものの、かなり高い。

●ヤマハXSR700(89万9640円)「スポーツヘリテイジ」を標榜する XSRシリーズの第2弾として欧州で 開発。初代 MT-07をベースに、レ トロモダンな専用外装を採用する。 国内には昨年11月から導入された。アルミ製タンクカバーのラインは、 ヤマハ初の 4 スト車として名高い ’70XS-1がモチーフ。

73psを発生するDOHC4バルブの688cc並列ツイン。トライアンフと同じく270度クランクを持ち、リニアなトルクと扱いやすい出力特性が自慢。さらに軽量コンパクトな設計で、400クラス並みの軽さに貢献している。電子デバイスは非装備。

走りも現代的だ。MT-07ベースの高効率なエンジンは、どの回転域からでもスムーズにトルクが立ち上がり、ストリートツインでダダッと振動する状況でも何事もなく加速していく。その分、テイストは薄いのだが、信号待ちからの発進や30~60km/hで流す場面では味わいがきちんとある。一発一発の柔らかい鼓動感と適度な加速に酔うことができるのだ。また、腰高かつアップハンドルのライポジも旧車らしい雰囲気を醸し出してくれる。

ステージ別の比較では、街乗りでストリートツインの扱いやすさが光った。ビッグバイクとは思えないほどスリム&コンパクトな車体と両足ベッタリの足着き性で、気軽に走れる。クラッチレバーの操作感もXSRより軽い。対するXSRは車重が30kgも軽量で楽々操れるが、足着き性は今ひとつ。身長168cmだと両つま先が接地するものの、170cm以上でないと手軽さは感じにくい。とはいえ前述の通り両者とも街乗りの楽しさは格別だ。

続いて高速道路。味があるのはストリートツイン、疲れにくさではXSRに軍配が上がる。前者は、フロント18インチによる安定感が抜群で、ズッシリした印象。サウンドと振動は高速でも濃厚で、ゆったり走るのが楽しい。XSRはF17インチとアップハン、ソフトなサス設定により挙動にやや落ち着きがないものの、シートがストリートツインより分厚く、ヒザの曲がりが少ないため、長時間走行がラク。両者とも段差でガツッとした衝撃があるが、XSRは厚く柔らかいシートで緩和される。味が薄いとはいえ、8000rpm以降で伸び上がり、表情が変わるエンジンを楽しむことも可能だ。

【トライアンフ ストリートツイン】両足が余裕で接地する足着き性が美点。ハンドルはフラットで、広さは肩幅 より拳半分程度。上体が起きた自然なライポジだ。ヒザがタンクにフィットしないのも旧車っぽい。

【ヤマハXSR700】両つま先の腹が着くが、ステップが当たる。ヒザの曲がりが緩やかなので長距離はラクだ。ハンドルは幅広く、上体が少し前傾する。(ライダーは身長168cm・体重61kg)

トラはマシンと対話する、昔ながらの喜びまで再現

ワインディングでは、両者のキャラクターがより鮮明になった。ストリートツインは、パルス感とサウンドを味わいながら、峠を駆け回るのが実に愉快だ。フロントに18インチのバイアス、リヤに17インチのラジアルタイヤを履き、後輪を主体に後ろ乗りで曲がるハンドリングはまさに’60~’70年代風。激攻めは得意ではないものの、フロントに粘りを伴ってリヤから自然に旋回する。サスは適度に硬く、ブレーキも必要十分な効力だ。

低回転で盛り上がるトルクは、薄い領域と分厚い領域が明確にあり、回した際のパワーもバンク角もさほどではない。だが、頻繁にシフトして、エンジンと対話しながら美味しい領域を探す楽しみがある。タコメーターが非装備なので、体で覚える必要があるのもいい。エンジンもハンドリングも、まさに昔ながらの味わいだ。

XSRは、オフ車的なハンドリングがユニークだった。足まわりを引き締めた現行MT-07と違い、旧型のソフトなサス設定を採用。加えて、高い着座位置とアップハンにより前後の接地感が希薄だ。高回転域ではパワフル、かつ倒し込みが鋭く、ブレーキの効力も抜群とスポーティなのだが、峠ではフワフワとサスが動くため、激しいアクションは苦手。リーンアウトで流すように走らせる方がスムーズで楽しい。峠ではXS-1というより、オフロード車のXT500の系統かもと思ったりした。

【トライアンフ ストリートツイン】

【ヤマハXSR700】

一口に「ネオクラ」と言っても、レトロさを追求するか、もしくはデザインの一部として取り入れるか、で大きくキャラクターが異なってくる。前者がストリートツインであり、後者がXSR700であると言えよう。現代的な装備を持った、昔ながらのマシンに乗りたい人にはストリートツインがお勧め。懸命に古き良きバイクを追求したトライアンフに拍手を贈りたい。一方、新しい進化で、伝統にこだわらない人向けなのがXSR700だ。2台の性格に違いはあれど、ともに日帰り程度なら、あくせくせず緩やかに流れる時間が心地よかった。あとは貴方の好みで選んで欲しい。

ストリートツインは、360度クランクの865cc空冷ボンネに比べ、高速走行でのまろやかな振動や伸びが減った。だが、取り回しと運動性能が断然、軽快になり、メリットは大きい。ビギナーにもお勧めしたい。XSRは、柔らかいシートとライポジが絶妙に旧車風。乗った印象もベース車のMT-07と全く別で驚いた。エンジンは中低速の鼓動感が意外と外観に似合って楽しい。(沼尾宏明)

【2人乗り】リヤシートが広く、タンデムステップが低いのがストリートツイン。ただし座面は硬い。XSRはやや後端が狭いが、座面が柔らかく収まりがいい。 運転してハンドリングの変化が少ないのはストリートツインだった。

【取り回し】XSRは大柄に感じるが、車重186kgと超軽量だけにやはり楽勝だ。ストリートツインは、ハンドルが近い上に重心が低いせいか、意外とラク。さすがに坂やバランスを崩すと重さを感じるが、ビッグバイクとしては平均的だ。

【フロントまわり】ストリートツインはKYB製φ41mmフォークにφ310mmシングルディスクと片押し2ポットキャリパーを組み合わせる。リヤのKYB製ツインショックはプリロード調整が可能。XSRはφ41mmフォークとリンク式モノショックを採用。ブレーキはフロントにφ282 mmのWディスク&対向4ポットを備え、シャープに効く。

【ハンドルまわり】アナログのシンプルな1眼メーターを持つストリートツイン。液晶にはギヤポジションと燃料計を示す。左手元のスイッチで、オド、時計など表示を変更できて便利。昔ながらの回転式タンクキャップはキー付きだ。XSR700のアルミ製テーパーハンドルはワイドな740mm幅。 各部は円がモチーフで、メーターにはギヤポジションや時計を表示。コーヒーカップ状の燃料計が面白い。

【シート】ストリートツインのダブルシートはスタイル抜群。薄手のためか座り心地はやや硬い。前側が絞られ、後席にはタックロールを施す。対して分厚く、柔らかいXSRのシートは座り心地が良好。スエード調など3種のレザーを使い分け、高級感もある。

【細部:ストリートツイン】トラクションコントロールとABSはオフも可能。シート下にはUSB充電ソケットとメットホルダーも備える。【細部:XSR700】モダンかつクラシカルなメーターまわりのデザイン処理はお見事。アルミ製タンクカバーは、バフ仕上げの素地をライン部のみ露出させる凝った仕上げ。

【ストリートツイン&XSR700・諸元表】

+20万円でオフも走れるネオクラも!

オフロードのイメージを 持たせたスクランブラー は、大柄で上体が起きたポジションとなり、ワイルド感満点。またがった際のアップマフラーによる左右非対称感も古きマシンの印象で、これも実にいい。フロント19インチはストリートツインより一段と旋回中に安心感があり、体を起こしたまま入り組んだ峠を豪快にねじ伏せて走 るのが最高に楽しかった。不整地では車重がネックとなるが、F19 インチが切れ込みを抑えてくれる場面も。ストリートをメインに、ちょっとしたダートまで楽しめる。

●トライアンフ ストリートスクランブラー(125万5000〜129万3800円)ストリートツインをベースに、映画『大脱走』で有名な ’60 年代のTR6を再現。アルミ製ヒートガード付きの2本出しショットガンマフラーがシンボルで、前後スポークホイールにブロックタイヤも採用。フロントホイールは19インチだ。アップハンドルやロングなリヤサスも採用する。

金利0.99%・アクセサリー50%OFFの特別キャンペーン実施中!

ストリートツインとスクランブラーは現在、0.99%の特別低金利ローンを実施中(10月末まで)。さらに前述2車を含むモダンクラシックシリーズ全12車はトライアンフ純正アクセサリーの半額キャンペーンも12月28日まで実施している。11月25日までに試乗すれば オリジナルマグカップも貰えるぞ!

●問い合わせ先:トライアンフコール☎03-6809-5233  https://www.triumphmotorcycles.jp

●写真:真弓悟史

ヌマ王

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ヤングマシン編集部出身の敏腕フリーライター。特にバイクの社会&時事ネタに詳しく、20年以上にわたって特ダネを追い続けている。趣味はユーラシア大陸横断。

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