マシン・オブ・ザ・イヤー2018
2018 NEW NAKED TEST

MT-07とZ650、どっちが買い?!

人気のMTシリーズとライバルを比較試乗する当コーナー。今回のカードは、手頃かつパワフルな600cc+αの排気量を持つ2台だ。同じ並列2気筒を積み、価格帯も同等とあって、ガチ対決が予想されるが、果たして!?

●テスター/丸山浩(写真右):ご存じ国際ライダーにして本誌メインテスター。MT-07はサーキット走行も体験済み。先日、知人のビギナー女性ライダーに07を推薦したばかりだ。
●まとめ/沼尾宏明(写真左):ユーラシア大陸横断が趣味のフリーライター。Z650と従来型MT-07 は、以前試乗した時からお気に入り。初試乗の新型07 に興味津々でライドした。

ともに従順だが、よりMTは鋭く、Zは気軽

扱いやすいビッグバイクと言えば、一昔前は600㏄が主流だったが、現在ではモアパワーを求め、排気量をチョイ乗せしたクラスが人気だ。中でもMT-07は、’14年の登場以来、高い人気を維持し続けている。’18年型では、より力強いイメージのヘッドライトでMTシリーズの共通性を強調しつつ、バネレートと減衰力を高めた前後サスペンションを採用。一段とスポーティな領域を拡大した。

またがると、引き締まったサスと着座面を拡大したシート幅により、若干腰高になった印象。とはいえ、両足親指の付け根がしっかり着くので、足着きは悪くない。エンジンは、発進や低速時のレスポンスが滑らか。4000〜8000rpmの幅広い回転域でリニアにトルクが発生する。加えて、圧倒的に軽い183㎏の車体と素直なハンドリング、大きなステアリング切れ角により、街中を機敏に駆け抜けることが可能だ。

MT-07(YAMAHA/●税込価格:78万6240円)MT-09に続く新生MTシリーズ第2弾として、’14 年に発売。新開発の270度クランク並列2気筒を搭載し、扱いやすくもパワフルな走りと低価格でベストセラーを記録した。’18年型で外装やサスなどを変更。

さらに回転を上げていくとキャラクターが変化していくのが面白い。8000rpm以降ではギュンと伸び上がり、パワーが炸裂。この二面性が大きな魅力となっており、ビギナーもベテランも満足できる所以だ。一方のZ650も扱いやすさでは負けていない。カワサキ伝統の「Z」と言えば、直4を連想するが、このモデルは並列2気筒を搭載。滑らかなMTに対し、中低速域のパルス感とトルクが濃厚だ。サスもしなやかによく動き、やわらかい乗り心地がMTと対照的。ハンドルが近く、コンパクトなライポジと抜群の足着き性も相まって、街乗りでのラクチンさに秀でている。また、クラッチの操作感を軽くするアシスト&スリッパークラッチも威力を発揮。車重はMTより4㎏重いが、走りは軽快で、とにかく疲れにくいのだ。

Z650(KAWASAKI/●税込価格:77万7600円)’17 年にデビューしたストリートファイターで、ER-6n から継承した伝統ある180 度クランクのパラツインを採用。トレリスフレームなどの車体は新設計で、軽量化を達成した。A&SクラッチやETC車載機を標準装備。

高速道路では、MTの元気のよさ、Zの落ち着いた走りが際立った。表情豊かなエンジンキャラクターにより移動する楽しさではMT、直進安定性能や乗り心地など快適な巡航性能ならZに軍配が上がる。 MTは、シリーズの中ではやさしいキャラクターだが、同排気量帯のZと比べるとスポーティな部類に入る。非常に扱いやすい2台だが、味付けには明確な差があるのだ。

高速ではMTの気持ちいいエンジン特性が本領発揮。中速域の鼓動感も、8000rpm以上の伸び感も楽しむことができ、長旅でも飽きない。乗り心地は良好だが、Zより全体的にやや硬めだ。一方、街乗りと同様、ラクなのはZだった。キャスター&トレールがMTより安定志向で、直進性が抜群。マシンなりに任せて、のんびりツーリングできる。6000rpm以降で高回転パワーを発揮するが、MTほどの変化は乏しく、振動も激しい。ほどほどのペースで、長距離を走るのに向いている。(丸山)

400cc並みに軽量コンパクトな2台とあって、基本的に街乗りは得意だ。MTは従来型よりスポーティになった印象で、キビキビした走りが楽しめる。大差ではないものの、極低速から穏やか&スムーズなエンジン特性のMTの方が、小回りやUターンは得意だ。 Zは、とにかくラクチン。MTより15㎜低い790㎜のシート高による両足ベッタリの足着き性と足まわりのやわらかい乗り味で、マッタリ街中を流すのが似合う。シートのやさしい座り心地や、軽いクラッチレバーもイージーライドに一役買っている。

フラットで絞りの少ないハンドルにより、上体がやや前傾。ヒザの曲がりは緩やかだ。コンパクトで若干腰高なライポジは、ステージを問わずスポーツバイクとしてのバランスが良好。足着きは両足親指の腹がしっかり着く。(168㎝/61㎏)

ハンドルの高さはMTと同等だが、手前に絞り込まれ、上体が若干起きる。街中と高速でラクなライポジだ。ステップ位置は尻の下だが、シート位置が低いので意外と足の曲がりがある。両カカトが接地し、足着き性は抜群。

奥深さが楽しいMT、ユルさが心地いいZ

ワインディングでは、さらに2台の違いが明らかになった。両方とも気軽にコーナーを駆け回ることが可能だが、速さや面白みならMT、よりイージーに走れるのはZとなる。MTはしっかり締まった足まわりと前輪荷重により、フロントから向きを変えるスーパースポーツ的な旋回性を見せる。スポーティなライポジとのマッチングも抜群で、回頭性が優秀だ。もちろん倒し込みも軽く、ドンツキのないトルク特性と相まって、リカバリー力に優れる。さらに攻めの走りにも対応。刺激的な高回転パワーに加え、サスの限界性能も高く、Zではフロントが暴れ出す場面でもMTなら問題ない。単純に「誰でも乗れるマシン」ではなく、その先の領域が用意されたバイクだ。

Zは正直、「優等生だけど、あまり個性がないかな」と思っていたところ、峠道で評価が変わった。コーナーではリヤから旋回していく、いかにもネイキッドらしい特性で、実に安心。MTは車体の寝かし込みが早く、若干の緊張感があるのに対し、Zは軽快ながらもバンクの速度がMTより穏やかで寝過ぎない。また、手前に引かれたハンドルを使って、荒っぽく豪快に車体をねじ伏せて曲がるなんて芸当も可能。振 動を伴いながら発生する分厚い中間トルクと、6000回転以降の伸び感も峠でハマリ、なかなか迫力があっ ていい。神経質さがなく、懐が広い、昔ながらの「カワサキのビッグバイク」 らしい片鱗が味わえる。

ブレーキに関してもMTはスポーティで、シャープかつ初期タッチから効力を発揮。Zはフロントが片押し2ポットながらコントロールしやすく、トータルでのバランスは良い。絶対的な速さならMT、流しつつ攻めるのにZは向いている。  繰り返しとなるが、2台とも大型クラスの中では抜群に扱いやすく、様々な用途で活躍できる。その中で 方向性が分かれていると捉えてほしい。MT-07はどのステージでもスポーティさを堪能でき、Z650は普段乗りからツーリングまで気負うことなく楽しめるのが美点。上手くキャラクターの棲み分けがなされている2台だ。あとはアナタの使い方と好みで選んで欲しい!

コーナリング特性は対照的。MTがフロントから曲がっていくロードスポーツ的な特性なのに対し、Zはリヤから旋回するネイキッド的な走りと言えるだろう。MTは、優れた接地感と鋭い倒し込みでグングン向きを変え、旋回中も安定。激攻めからのブレーキングでもサスが踏ん張ってくれるなど、全てが高レベル。ただし従来型やZと比べると、サスが硬めなので攻めるのにやや気負いが必要。それでも、ベテランすら満足させるスポーツ性能は素晴らしい。片や、Zはより乗り手を選ばず取っつきやすい。ダラダラ流すもよし、難しい理屈を考えずに勢いで攻めるもよし。往年のZに代表される日本古来のスタンダードなネイキッドだ。
(丸山)

MTはどんどん開けたくなるエンジン特性と、その走りを許容する車体の総合パッケージが見事。Zは重心が低い上に、変化が少ない出力特性と素直なハンドリングで気楽に攻められる。特にタイトな峠道が得意で、初めてのワインディングでも臆すること走れた。(沼尾)

●2人乗り:Zはライダーの着座位置が低いため、前後席の落差が結構ある。タンデムステップの位置も高めで、ヒザが若干窮屈だ。走行中、前に下がりやすいのも気になった。MTと違い、タンデムステップにはラバーが装着される。
MTはZよりリヤシートの前後長と横幅があり、比較的安心。着座位置はさほど高くなく、タンデムステップも低めでヒザの曲がりが自然だ。ただし座面はやや硬め。ライダー側も、ソロとの挙動変化が少ないため、運転しやすい。

●押し引き:どちらもイージーながら、より取り回しがしやすいのはMTだった。車体が軽量な上に、ハンドル位置&形状が力を入れやすい。腰にフィットするタンクもグッドだ。Zはハンドルがやや高く、タンク形状がゴツゴツする。重心の位置もMTより若干高めに感じた。

刺激のあるMTとやさしいZ、コスパにも注目

ビギナー向けの大型バイク」という言い方に僕(丸山)は抵抗がある。本当の初心者には250や400がオススメだし、大型2輪免許を取得しているのに、そもそもビギナーなのか? という疑問があるからだ。このクラスを選ぶ際は、今後どんなバイクライフを送るのか、じっくり考えるべき。その方が末永く愛車と過ごせるはずだ。僕なら、MTはスポーティさを求める人やリターンライダーに、Zはステージを問わずイージーに走りたい人に奨めたい。最後に、価格についても触れたい。ETC車載器の有無など装備面の違いはあれど、MTはZより約1万円安いプライスを実現。しかも見せ方や細部にこだわり、クオリティが見事だ。また、スポーティさを求めると装備が高級になり、自然と価格は上昇するものだが、そんなこともない。この価格帯で、よくぞここまで面白いマシン出してくれた、と賞賛を送りたい!

●エンジン:MTは軽量コンパクト化を追求した688cc並列2気筒。クロスプレーンコンセプトに基づき、実用域でリニアなトルクを発生させる270度位相クランクを採用する。軽さに貢献する1軸バランサーや、ロス馬力を低減するオフセットシリンダーも投入。
一方のZはER-6nから継承されたパラツインで、’90年代に端を発する伝統のユニット。180度クランクやデュアルスロットルバルブで力強い低中速トルクを実現する。特許取得済のラジエータファンカバーにより、足元や車体に熱気が当たりにくいのも快適。

●メーターパネル:MTは左右対称のフル液晶メーター。バーグラフ式のタコは、トルクバンドが一目でわかるよう4000〜8000rpm部分を幅広く表示する。レッドゾーンは1万rpm以降だ。中央にギア段数、左に燃料計と時計を常時表示し、エコインジケーターも備える。
Zは液晶とアナログ文字盤を融合したユニークな単眼風メーター。ギヤ段数を中央に示し、瞬間/平均燃費や航続可能距離、エコランプなども表示する。タコの指針がシフトアップインジケーター機能を兼ねており、レッドゾーンは1万rpm以降。

●足回り:MTのφ41㎜Fフォークは従来からバネレートを6%、減衰力を16%増。これにφ282㎜ペータルディスク+対向4ポットキャリパーを組み合わせる。リンク式リヤサスもバネレートと伸&圧側減衰力を高めるとともに、イニシャルと伸側の調整が可能になった。
Zはφ41㎜Fフォークにφ300㎜ペータルディスク+片押し2ポットキャリパーを搭載。リヤショックは、マスの集中化を促進する水平配置のホリゾンタルバックリンク式を採用。リヤはイニシャルのみ調整可能。重量4.8㎏の湾曲型スイングアームも特徴的だ。

●シート:MTのシートだが、ライダー側は従来型から長さをタンク側に10㎜延長し、面積は約30%拡大。着座位置の自由度と居住性を高めた。後部がスーパースポーツ的な幅広い形状。座り心地もやや硬めでスポーティな印象だ。リヤシートは小さめで、アシストグリップは非装備。
着座位置を前寄りにしたZ650のシートは、シート高790㎜を達成。前側とタンクがスリムに絞り込まれ、足着き性に優れる。スポンジには厚みとコシがあり、クッション性は良好。リヤシートは小型で、グリップはなし。後席下にETC1.0車載器を搭載する。

●撮影:山内潤也

ヌマ王

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ヤングマシン編集部出身の敏腕フリーライター。特にバイクの社会&時事ネタに詳しく、20年以上にわたって特ダネを追い続けている。趣味はユーラシア大陸横断。

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