マシン・オブ・ザ・イヤー2018
佐藤寿宏のレース通信

【2018日本GP ⑤】”持っている”マルケスがLEVEL7に到達!

ロードレースを追いかけること20年以上のフリーライター・佐藤寿宏さんの「寿(ことぶき)通信」をお届け。国内外、レースの様々な現場から届く「寿通信」は、日本人選手の動向を中心にレポート。今回は、日本GP、日曜日のレポートだ。

マルケスが3年連続5度目のMotoGP™チャンピオンを決める

いやー、やっぱりマルケス“持っています”ねー。優勝で3年連続5度目のMotoGP™チャンピオンをHondaのお膝元である日本で決めました。

日本グランプリを迎えるまでに、14レース中7勝を挙げ、12レースで表彰台に立つ安定した速さを見せつけてきた2018年シーズンのマルケスは、今回の日本グランプリで最初のタイトル獲得に王手をかけていました。条件としては、アンドレア・ドヴィツィオーゾの前でゴールすることでしたが、ドゥカティ+ドヴィツィオーゾのツインリンクもてぎでの速さは定評があり、昨年のレースのことも記憶に新しいところです。その前評判通りドヴィツィオーゾが初日からセッションをリードし、ポールポジションを獲得。一方、マルケスは、フリープラクティス4のS字コーナー進入で転倒し、予選は6番手と、今回のタイトル決定は、さすがのマルケスでも難しいかと思われていました。

レースでは、作戦通り、スタートを決めドヴィツィオーゾに次ぐ2番手につけていました。ドヴィツィオーゾは、序盤、ペースを抑えており、カル・クラッチロー、ジャック・ミラー、バレンティーノ・ロッシ、アレックス・リンスがトップグループを形成します。一時は、クラッチローにかわされ3番手に後退したマルケスでしたが、V字コーナーで抜き返すと、同じ場所でドヴィツィオーゾをかわしてトップに浮上。しかしヘアピン立ち上がりでグラベルに出てしまい加速が鈍ったところ再びドヴィツィオーゾが前に出て行きます。

ドヴィツィオーゾを先頭にマルケス、クラッチロー、やや間隔を空けてアンドレア・イアンノーネとリンスのスズキ勢が続いていましたが、イアンノーネが15周目のヘアピン進入でフロントから転倒しリタイアとなります。

レース終盤を迎えドヴィツィオーゾはペースを上げるとマルケスは、このレースのファステストラップをたたき出しピタリとマークします。後方のクラッチローとリンスは、このペースについて行けずトップ争いは完全にドヴィツィオーゾとマルケスの一騎打ちとなります。そして21周目の、やはりV字コーナーのブレーキングでマルケスがドヴィツィオーゾをかわしてトップに立つとレースをリードします。ドヴィツィオーゾも勝負をしかけようと、背後を伺っていましたが、残り2周を切った23周目のヘアピンでマシンをリーンさせクリッピングポイントに入った辺りでフロントからスリップダウン。この瞬間、マルケスのチャンピオンが決まりました。サインボードでドヴィツィオーゾの転倒を知らされたマルケスは、最終ラップに入ると最後は、後続に抜かれてもチャンピオンは変わらないと、最終コーナーを立ち上がった時点で大きくウイリーし、そのままチェッカーフラッグを受けました。

3コーナーのアウト側にマシンを止めたマルケスは、自身7度目の世界タイトルを表す”LEVEL7″と入ったチャンピオンTシャツを着ると、巨大なアーケード型レトロバイクゲームをプレイし、これをクリアしたことで、チャンピオンヘルメットをゲットという演出で盛り上げました。

トップでチェッカーを受けるマルク・マルケス。

日本人最上位でゴールしたのは中須賀

後方では、中須賀克行と中上貴晶のバトルが繰り広げられておりましたが、再スタートしたドヴィツィオーゾに90度コーナーで引っかかってしまった中上が遅れ、勝負あり。中須賀が14位、中上が15位となり、両者ともポイントを獲得する結果になりました。

「朝のウォームアップで変更したセットがいい方向に行き、いいペースで走ることができたと思います。レース後に聞いたらバレンティーノ(ロッシ)もザルコも、ほぼ同じセットだったそうです。マーベリックだけ違うセットだったそうですが、収穫のあったレースになったと思います。後ろに中上選手が来ているのは知らなかったのですが、残り10周というところでサインボードで(後ろにいるのが中上選手だと)伝えられたので、火がつきましたね。チームのみんなも同じ思いだったと思うし、日本人最上位でゴールするために全力で走りました」と中須賀。

一方、MotoGP™ライダーとして迎えた初めてホームグランプリで成長したところを見せたかった中上は、「マシンもライダーもいいフィーリングでしたし、日本のファンの皆さんの前でいいレースをしたかったのですが…。スタートは、まずまず決まったのですが、直後の3、4コーナーで他車とハンドルが接触してしまいコースアウトまでは、行かなかったのですが、大きく膨らんでしまい遅れてしまったのが痛かったですね。残り3戦でいいレースができるように気持ちを切り換えます」と悔しそうに語っていました。

Moto2™クラスの長島哲太は悔しい12位

Moto2™クラスの長島哲太は、予選までは、いい流れで来ていたのですが、決勝日朝のウォームアップ走行で変更したセッティングがレースでうまく機能せず悔しい12位となりました。レースは、ファビオ・クアルタラロとフランシスコ・バグナイアという来シーズンMotoGP™クラスにステップアップを決めている2人がトップ争いを繰り広げクアルタラロが制しましたが、事後車検でリアタイヤ空気圧が規定より低く失格になってしまいます。これによりバグナイアが今季8勝目を挙げることになり、チャンピオン獲得にまた一歩近づきました。

チュートリアル福田氏の激励を受けるグリッド上の長島哲太。左は青山博一監督。

Moto3™の佐々木はタイヤの内圧に問題で攻めきれず

Moto3™クラスの佐々木歩夢は、朝のウォームアップ走行でトップタイムをマークし決勝でも期待されましたが、タイヤの内圧間違いがありペースを上げられず悔しい9位。それでもトップグループの後方につけていただけに残り3戦に期待ですね。岡崎静夏は、同じくワイルドカード参戦の福嶋佑斗にスタートで前に行かれるものの、2コーナーで前に出ると、そのまま20周を単独で走り切りました。この経験を全日本に生かすことができれば、今回のワイルドカード参戦は、十分意味があったと言えるでしょう。

レースの方は、約10台がトップグループを形成。佐々木も、この集団の後方につけていましたが、前述の通りタイヤの内圧間違いで攻めることができず前に出ることができませんでした。転倒も多く、レース終盤には、暫定ポイントリーダーのホルヘ・マーティンが90度コーナーで転倒。再スタートできずノーポイントとなってしまいます。暫定ランキング2番手のマルク・ベツェッキが優勝し、その差を1ポイントとしました。残り3戦、どちらがタイトルを手にするか、その行方に注目が集まります。

今年の日本グランプリは、初日こそ雨に降られましたが、土日は天気に恵まれたこともあり、観客動員は、3日間合計で9万6425人と過去最高を記録しました。また来年も、いい天気になって、もっと多くのお客さんに足を運んでもらいたいですね。

ウォームアップではトップタイムをマークした佐々木歩夢。

文・撮影:佐藤寿宏

いち

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本誌編集長。雑誌は生き残りタイアップ全盛期だというのに、ひとり次期型ネタを嗅ぎまわって反感を買う現代のスクープ魔王。
■1972年生まれ
■愛車:BMW R100GS(1988)

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