人気のヤマハMTシリーズに対抗すべく、続々と登場するライバル群。過熱の一途を辿るネイキッドカテゴリーにおける好敵手の実力をチェックしよう。今回は、3気筒vs4気筒のストリートファイターが火花を散らす!
表情豊かvsフラット キャラの違いは明確だ
デビュー当時、まるで往年の2ストローク車のような猛烈なロケットダッシュが話題になったMT-09。加えて、ソフトかつロングストロークの足まわりや、モタード的なスタイルをミックスさせた独自の世界観で、多くのライダーを魅了した。2代目となる現行型も基本的な特性は不変だ。まずエンジンモードをSTDにして走り出す。極低速でドロドロと粘り強く、回転を上げるとパルス感を伴いながらスムーズに加速していく。右手一つで加減速を取り出すことでき、ヒラヒラと軽い車体も相まって、街乗りは得意だ。
ただし、大胆にスロットルを捻ると前輪が軽々と浮き上がるほどの加速を示す。4000rpm程度で強烈なパンチ感があり、8000rpmでもう一伸びする。回転域によって表情を変え、4気筒のように高回転まで回さずとも怒濤のパワーを味わえるのは3気筒の利点だ。STDモードは右手の動きに忠実で、大人しい走りも可能だが、Aモードだとハイスロットル的に少しのアクセル開度で加速ゾーンに突入。より過激さを強調した味付けとなる。
一方、Z900は、カワサキ伝統のブランドである「Z」の名を継承するとおり、熟成された直4フィールが魅力。発進からトルクフルで、フラットに加速するため、実に扱いやすい。MTや兄弟モデルのZ900RSのようなテイストこそ希薄だが、心地いい振動と6000回転以降の伸び感が愉快。中年以上のライダーが慣れ親しんでいる「ザ・直4」といった感覚だ。エンジンモードは非装備だが、特に不都合は感じない。
車体も軽快で、兄貴分のZ1000より街乗りが得意。ただ、さすがにMTと比べると重さを感じてしまう。ライポジはMTに比べて、やや前傾気味なのが特徴。ハンドルを大きく切った際、外側の腕が届きやすいのはMTで、サスもよく動くため、Uターンなどの小回りはMTに軍配が上がる。足着き性に関しては若干Zの方が良く、安心感が高い。 続いて高速道路では、Zの巡航性能が光った。安定した直進性と穏やかな加速感、軽く前傾したライポジが100㎞/hクルーズにピッタリ。移動手段として優秀だ。 MTはサスがよく動き、路面の衝撃吸収性はいいが、安定感はそれなり。一方で回転域ごとに刻々と表情が変わるため、走っていて飽きない。高速道路を単なる移動ではなく、マイペースに楽しみたい人向きだ。
Zは、淡々と長時間&長距離を巡航するのが得意。高い直進安定性と、適度に前傾する姿勢が100㎞ /hクルーズにピタリとハマる。変化がつかみやすい直4のエンジンフィールも疲れにくさに貢献。座面が広く、コシのあるシートも快適だ。
MTは、回転域に応じて加減速にメリハリがつけれらるため、ロングランでも飽きずに走れる。決して高速走行が苦手なわけではないが、標準設定だと若干サスがフワフワしており、直進性ならZが優秀だ。また、上体が起きたライポジも風圧を受けやすく、ライダーが前傾姿勢を取る必要がある。シートは、前側が細目でクッションが柔らかく、衝撃吸収性の面では、オツリが来る場面があるものの良好。逆にZは段差にガツンと反応するが、その後の収束性が高い。
市街地ではどちらも扱いやすいが、より手軽なのはMT。まるで400ccクラスのように取り回しが軽く、コンビニへの買い出しや、通勤もお手の物だ。それでいて、大人しい走りにも刺激的な走りにも柔軟に対応できる。上体が 立ったライポジも街乗りでラクだ。Zは素直なエンジン特性で街中でも扱いやすい。MTと比較しなければ、十分車体も軽快だ。ただし、ハンドルを切った際に外腕が届きにくく、Uターンなどの小回りはMTの方がイージーだ。
ピュアな速さか、操る楽しさか!?
ワインディングでは、さらに2台のキャラクターが鮮明になった。純粋な速さならZ、操る楽しみが濃厚なのがMTというのが結論だ。 まずZは、軽く前傾したスポーティなポジションから、自然かつ安定したハンドリングを見せる。締まったサスによりブレーキの絶対制動力を引き出しやすく、加速感が一定のため、立ち上がりもキマりやすい。ビギナーはコーナーを選ばずソツなく走ることができ、ベテランならサーキットレベルでも通用するほど速い。スポーツバイクとして、かなり高レベルにまとまっているのだ。高回転域のパワーはMTを凌ぐほどで非常に楽しいが、この領域を公道で存分に味わうのは難しい。
一方のMTは、クイックな倒し込みが武器。ただし、ライダーが走りを組み立てる必要がある。コーナーには前傾による荷重や、ブレーキングで柔らかいサスをしっかり縮めて進入。車体を安定させたまま旋回し、出口では美味しい回転域に合わせて立ち上がっていく。激しく加速する回転域に入ってしまったり、上手くハマらないコーナーも当然出てくるが、キマった時は最高に気持ちいい。相当な速さとはいえ、楽しい領域がZより手前に設定されており、公道でファンライドを満喫できるのだ。 難しいライテクが必要と思うかも知れないが、ある程度バイクに慣れた中級レベルのライダーならそうでもない。試すうちに上手く走れるポイントがすぐ見つかる。また、車体が軽快なため、ノンビリ走るならビギナーでも扱いやすい一面をしっかり併せ持つ。飛ばさない時や雨天時は、アクセルに対してマイルドに反応するBモードを使うのもアリだ。
2台ともステージを選ばないキャラクターながら、Z900は幅広いライダーに推奨できる、バランスの取れたロードスポーツ。MT-09はトリッキーな側面があり、ある程度のスキルを必要とするものの、刺激的な一面と軽量さからくるシーンを選ばない気軽さを両立している。Zはメインバイク向け、MTは趣味性の高い2台目として相棒に選びたい。僕(丸山)ならサーキット用にYZF-R1、ストリート用にMT-09という組み合わせ で楽しみたいね!
個性とコスパのMT、安心&優等生なZ
昔のRZ250/350は、「誰がこんな凄いバイクに乗るんだ!」と言われたものだが、MT-09はその再来と言える。電子制御が進み、エンジンのモード切り替えが可能になったことで市販できたのだろうが、ここまで過激なバイクをよくぞ出してくれた! 時代が移り変わっても、こうしたバイクを求める層は確実に一定数いるのだ。 Zは、伝統のビッグブランドを踏まえ、昔ながらの「直4」のよさを前面に押し出している。新興ブランドで個性のカタマリのようなMTとは対照的に、いい意味で優等生なモデルだ。ビギナーにはZがオススメ、MTはバイクに慣れた人向けだろう。
価格帯は2台ともほぼ100万円だが、MTは電子デバイスや足まわりを充実させながら、Zの+約5万円に抑えている。このコストパフォーマンスは圧倒的。類い希なキャラといい、MTブランドに懸けるヤマハの意気込みが伝わってくる。
●撮影:山内潤也