2018年モデルで新たに登場したスーパーチャージャーマシンのH2 SXの試乗記事最終回は公道ツーリングテスト。比較対象は前作H2とZX-14R。インプレッションはいかに?!
常用域での扱いやすさがH2とは明らかに異なる
ニンジャH2に続く、スーパーチャージャー(以下SC)搭載バイクの第2弾として、H2 SXが登場した。このマシンは、プロもビビるほど凶暴な加速を発揮するスーパースポーツのH2をベースに大部分を新設計。日常でもSCが楽しめるツアラーとして開発され、ナント国内仕様も用意された。欧州のプレス向け海外試乗会では「アウトバーン最速のスポーツマシン」と説明されたとのことだが、日本の道路環境でどんな走りを見せるのか注目したいところ。比較に持ち込んだのは、H2とメガスポーツのZX-14R。3車ともSXと同様に直4を搭載し、200psオーバーのモンスターである。
SXで走り出して、すぐにH2とは大きく味付けが違うマシンだなと分かる。まず前傾がハードなH2に対し、ステアリングが高くて近い位置にありラクチン。エンジンは、街中や高速道路で多用する3000〜4000回転の扱いやすさとパワーを兼ね備えており、実に楽しい。H2も同じ領域でしっかりレスポンスを示すが、SXはより自由自在だ。SCが怒濤の加速を見せるのは6000回転以降。さらに8000〜1万回転でパワーが弾ける。思わず「速っ!」と声が出てしまった。これが高回転型のH2だと、1万回転以上でフロントが浮き、真っ直ぐ走るのも手こずるほど。SXはそこまで過激ではないものの、SCの牙は健在だ。
SSの俊敏さとツアラーの快適性を見事に調和させた
対する14Rは、H2と正反対のキャラだ。エンジンは下からトルクに溢れ、回転上昇がマイルドかつジェントル。車体は安定感と重量感があり、速度を出すほどに直進安定性が増す、いかにもツアラーらしい特性だ。SXは、14RとH2の中間で、大きく重い14Rに比べて常にハンドリングに軽快感がある。車重は、14Rから9㎏減の260㎏(SE)となるが、数値以上に軽いマシンを操っている印象だ。また、足着き性が最も良好。3車中、街乗りのイージーさに軍配が上がったのはSXだ。
高速道路でもSXは快適だ。14Rが本領を発揮するシーンながら、SXより前傾するライポジとスラントしたスクリーンはより上の速度レンジを狙った設定。100㎞/hまでの巡航なら、SXの方が疲れにくい。ただし、それ以上だとSEのスクリーンは巻き込み風が気になってくる。欲を言えば、手動でもいいので可変式スクリーンが欲しいところだ。ギャップの収束性や乗り心地は、14Rが最も上質。SXは、軽く回るエンジン特性もあり、14Rほどの安定志向ではない。とはいえ、H2とは比較にならないほど安心感があり、段差も穏やかに通過してくれる。ブレーキも初期からタッチが柔らかく、スッとフロントが沈み込む。正直、長時間走行だとSCがジャマに感じる場面もある。そんな時はパワーモードをミドルかローに変更すれば、SCが影を潜めてくれるのもいい。
ワインディングでは、最も軽く、動きがシャープなH2の独壇場となるところだが、旋回中に8000回転以上に入れると二次曲線的にSCが炸裂。初めての峠や低中速コーナーが続く場合は相当な気を遣う。一方SXは、コーナリングでSCが作動する6000回転に入ってもOK。H2のようにブレーキングでフロント荷重をかけて旋回力を引き出し、トラクションをかけて立ち上がるスーパースポーツ的な走りを安心して楽しめる。シーンを選ばず活躍できる上に、H2の途轍もない性能までも味わえるニンジャH2 SX。H2、ZX-14Rというカワサキのフラッグシップを1台に集約した新時代のマシンだ。
ニュース提供:ヤングマシン2018年5月号(3月24日発売)
テスター:丸山浩
まとめ:沼尾宏明
撮影:山内潤也
H2 SX SE車両協力:MSL、0222みっちーch(YouTube)
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