5000km走ってもウエット性能が落ちない?

ミシュラン・ロード5の注目新技術に迫る

ミシュランから‘18年2月に発売される新ツーリングラジアル「ロード5」は、卓越したウエット性能でツーリングユーザーに絶大な人気を誇る「パイロッドロード4」の後継タイヤだ。変わったのは「パイロット」が外れた名称だけではない。採用された注目新技術にフォーカスしてみよう。

摩耗するほど溝が広がる!

ロード5最大の注目点は「5000km走行後のウエット性能が、新品のパイロットロード4(以下PR4)を上回る」という点。ミシュラン社内のウエット制動テストにおいて、5636kmを走行したロード5は、新品のPR4よりも0.6%短い停止距離を記録したというのだ。

このウエット性能のキモが新テクノロジーの「XSTエボ」。ポイントは“サイプ”と呼ばれる細い溝が、フラスコをひっくり返したような断面形状をしていること。下図を見れば一目瞭然だが、タイヤが減れば減るほど溝の幅が広くなる(=排水性能を維持できる)……という仕掛けである。

トレッドに刻まれたサイプは歴代のミシュラン・パイロットロード系に伝わる特徴で、「XST(Xサイプテクノロジー)」の名称で前々作のパイロットロード3時代から採用されていたもの。ウエット性能を高めるこの技術を、ロード5ではさらなるアップデートを施して採用しているわけだ。

4輪のスタッドレスのような細い溝が「サイプ」。XSTエボはこの溝の断面に秘密があって……。
サイプ断面は逆フラスコ形状で、減れば減るほど溝幅が広がって排水性能を維持できる、という仕組み。どうやってタイヤを型から抜くのか、などと余計な心配をしてしまうが……。

ラジアルなのにバイアス構造?

もちろん、ロード5の自慢はウエット性能だけではない。ミシュランはこのタイヤのテーマとして「ドライ性能やハンドリングを妥協しない」ことも掲げている。ここでカギとなるのが「ACT+」。これはタイヤ剛性を部位ごとに絶妙に変化させ、トレッドセンターは柔らかく、トレッドショルダーやサイドウォールはしっかりと剛性を持たせられる……という技術。

具体的にはトレッド部のケーシングをビード部でUターンさせ、サイドウォールからトレッドショルダー部にかけてのケーシングを折り重なるような2枚重ねとして補強するのが特徴。これによって柔軟なトレッドセンターで高い直進安定性を発揮させつつ、サイドウォールやトレッドショルダーには高い剛性を持たせてコーナリング時の安定性を高めているのだ。

面白いのはこのサイドウォール〜トレッドショルダー部で、2枚のケーシングはやや角度を付けて重なっているため、この部分は言うなれば、ちょっとしたバイアスタイヤ的な構造になっているのだという。

サイドウォールからトレッドショルダーにかけてのケーシングを2枚重ねにする技術、ACT+。ちなみに、トレッドに走る黒い帯は、ケーシングが1枚→2枚重ねへ変化する部位の剛性がなだらかに変化するよう調整するためのパーツ。

この「ACT+」は、同社のスポーツタイヤ・パワーRSに続く2番目の採用。ちなみにロード5のトレッドパターンはパワーRSをベースにサイプを加えたようなデザインで、雨天時に使用しないフルバンク付近は溝のないスリックデザインとし、ドライ性能に貢献しているのもRS同様だ。

新たなツーリングラジアルの定番として人気を博しそうなロード5。余談ながら、名称からミシュランの代名詞「パイロット」が消えた理由は呼称のシンプル化で、PR4時代も“ロード4”と略して呼ぶユーザーが多かったので、それならば……ということらしい。ちなみに先述のパワーRSもパイロットを冠さないことから、ミシュランは「パイロット」外しを始めるのか……と思いきや、現状でそういった動きは特にない、とのことだ。

ロード5はパワーRSをベースにトレッドパターンをデザインした結果、トレッドにおける溝の面積(=グルービングレシオ)はPR4比で1%減の12%となっている。
VFR800FとMT-07の2機種で、PR4とロード5の両方を比較テストした大屋雄一テスター。「ロード5はVFRに履いた際のフルバンク付近の安定感が印象的だった」とのこと。
大屋テスターは愛車のNC750SでもPR4を使用しており、ウエット性能はもちろん、乗り心地の良さが気に入ってこのシリーズを選び続けている。ロード5も十分その期待に応えられたようだ。
ロード5のサイズラインナップ表。アドベンチャー車に対応する「トレイル」も設定される。試乗記や詳細は12/22発売のヤングマシン2月号を参照してほしい。