世界の鈴菌が沸いた!

新生カタナ“KATANA3.0”がミラノデビュー!


ニューモデルの発表が相次ぐEICMA(国際モーターサイクルショー:ミラノ)の会場の一角で、多くのライダーの足を止めていたマシンが「KATANA3.0」。1981年に登場したスズキのGSX1100Sカタナは言わずと知れた名車の一台で、そのイメージを踏襲しながら36年が経過した2017年に、工業デザイン先進国であるイタリアの人々のセンスでリメイクしたマシンだ。

●文:八百山ゆーすけ

イタリアのバイク雑誌とエンジニアリング企業がコラボ

イタリアのバイク雑誌「MOTOCICLSMO(モトチクリスモ)」誌のブースに展示されていたKATNA3.0。同誌が誌面の企画として2016年春にスタートさせたプロジェクトで、モトグッツィのグリーゾやトライアンフのタイガーを手がけたデザイナー、ロドルフォ・フラスコーリ氏がデザインを手がけている。シャーシやエンジンはスズキのGSX−S1000Fを使用し、そこにオリジナルデザインのタンクやシート、アッパーカウルを搭載。決してこのショーのためにしつらえられたデザインモックなどではなく、プロトタイプレベルまで作り込まれた実際に走行が可能なマシンだ。

KATANA3.0のデザインは、ヘッドライト下のノーズからタンクにつながるキャラクターラインや、シート座面から高く持ち上げられたタンク後端に立ち上がるシートといった特徴が、オリジナルのGSX1100Sカタナの雰囲気を色濃く残している。サイドカバーにあしらわれた“切り欠き”的な造作や、シートの両サイドのパーツをブラックアウトすることでシートとの一体感を生み出すデザイン処理といった文脈もオリジナルの刀と同じ。ベースとなったGSX-S1000Fのシャシーとのマッチングも秀逸で、まったく“後付け”的な印象を受けない仕上がりとなっている。

MOTOCICLISMO誌のブースに展示されていた「KATANA3.0」。シャーシやエンジンはGSX-S1000Fをそのまま使用。トップブリッジ上のバーハンドルのみ、オリジナルのプレート状ハンドルブラケットに換装され、その上には「KATANA」の文字が入ったエンブレムがあしらわれている。デモムービーでは実際に走行しているシーンもあった。

マシンの製作はボローニャにあるエンジンズ・エンジニアリングが担当。この企業はバイクの設計から試作、様々なテスト、さらにはmotoGPmoto3クラスでレーシングマシンまで走らせているという、ヨーロッパに数社しかない、イタリアでは唯一の総合エンジニアリング企業だ。今回のプロジェクトでは、まずフラスコーリ氏のデザイン画を元に三次元データを起こす一方で、GSX−S1000Fを光学スキャニングして得られたデータとの整合をとりながら修正を加えるなどして、シャシーとKATANA3.0の外装類をフィッティングさせ完成させている。

KATANA3.0の車体ベースとなっているのがSUZUKI GSX-S1000F ABS。写真を見比べると外装類とハンドル周り以外はそのまま使用されているのが解る。ちなみに、GSX-S1000Fは998ccの水冷並列4気筒エンジン搭載車で、148ps、10.9kg-m、214kg(装備)の快速スポーツマシン(価格は118万5840円)。カタナで現代的な走りが楽しめるのは非常に喜ばしいことだ。

MOTOCICLISMO誌では実際にブースでこのKATANA3.0を見た来場者のコメントを同誌のWebサイトで紹介。「オリジナルのカタナを尊重したデザインだ」「36年前と現在をうまくミックスさせることに成功している」「これを見ることで改めてオリジナルのカタナが美しいデザインなんだと痛感した」といった声を披露している。さらにインタビューした来場者のほとんどが、もしこのKATANA3.0が発売されたら購入したいと答えているとリポート。こうした反響の大きさはEICMAの会場のみならず、すでにSNSなどを通じて世界中に発信され、カタナのファンのみならず、多くのライダーの間で今、話題となっている。本誌ではこのKATANA3.0を製作したエンジンズ・エンジニアリングの関係者への独占インタビューに成功。その様子は改めてリポートしたい。

MOTOCICLISMO誌のブースとは別のパビリオンに設けられたエンジンズ・エンジニアリングのブースに展示されていた、KATANA3.0とオリジナルのGSX1100Sカタナ。こちらはデザイン検討用のクレイモデルで、同社がデザインから提案できることをアピールするため、左半分はクレイの素地がそのまま残されていた。
KATANA3.0のフルLEDヘッドライトとテールライト。こうした灯火類もエンジンズ・エンジニアリングの完全オリジナルで、型式認証が受けられるレベルまで仕上げられている。こうした灯火類の設計ができるのも同社の強みだと担当者は話していた。

●エンジンズ・エンジニアリングのウェブサイトへ↓(もはやちょっとしたバイクメーカーです)

(写真・文:八百山ゆーすけ)

ちなみに……我々がカタナ復活に期待してる件

もはや、ヤングマシン読者にとっては耳タコな妄想話だが、我々は常々カタナ復活に期待を寄せている。というのも、スズキはカタナの登録商標をEUで20’15年3月に取得(写真上)しており、期間も2024年12月までとかなりの長期間だ。さらには、2015年のインターモトで発表された経営計画“SUZUKI NEXT100”のプレゼン画面には、RG250Γやハヤブサに混じってカタナの姿も(写真下)。現在のリバイバルブームに乗る形で、2020年のスズキ創立100周年のタイミングで降臨!……という流れが美しいのだが、はたして……。
こちらは本誌が作成した次期カタナの妄想CG。ストラトスフィアの6気筒エンジンを非効率さで定評があるリヤラジエター設定で搭載。エンジンはGSX-S1000系の4発でいいので、エンジンズ・エンジニアリングさんコッチも作って! じゃなくて、スズキさん! 新生カタナ・プロジェクトを是非!(YMCG担当)
関連記事

2018年10月2日、ドイツで開催されたモーターショー=インターモトで、ファン待望の新型KATANA(カタナ)が発表された。WEBヤングマシンでは'17年のミラノショーに突如として登場したカスタムモデ[…]

katana_m0_action_22