足の着かないバイクよ、サラバ!

シートも「可変」の時代に突入?

「足着き性」は長きに渡って2輪メーカーとライダーを苦しませてきた問題だ。シートのアンコを抜けばライポジに違和感が生じ、サスで車高を落とせば操安のバランスが崩れる。どうすりゃいいのか……という悩みを解決してくれそうなのが、2/4輪のOEMシートを幅広く手掛けるテイ・エス テックが東京モーターショーに参考出品した「スマートシート」だ。

速度に応じてシート高さを可変させ、足着き性と操安性を両立させるのがスマートシート最大のウリ。シートを上げればヒザの曲げ角度も緩くなり、快適性も向上する。(画像はテイ・エス テックの図版を小変更の上で転載)

簡単に言うなら、「全自動式・シート高可変機構」。バイクの速度が低下すると、自動的にシートが下がって停車時の足着き性を改善する……という親切メカニズムである。もちろん、走り出せば自動で元の高さに復帰するため、操安性や快適性は損なわれない。スマートシートは30mmほどの可変幅を持つ機械的な高さ調整機構(4輪シートのハイト調整をリファインしたものという)を備えていて、これを速度に応じて可変させるのだ。

テイ・エス テックが参考出品した「スマートシート」。可変機構は全て内蔵されているため、外見からそのトランスフォームっぷりは伺い知れない。構造的には前後セパレートタイプのシートの方が採用しやすいそうだ。

さらにスマートシートはもう1点、「シート形状が可変」するのも大きな特徴。シート内部に何個かの「空気袋」が内蔵され、これらを膨らませたり萎ませたりすることで座面形状を可変させられるのだ。例えば、シート後端の空気袋を膨らませれば座面が前傾するから、ライダーは加速Gに対抗しやすくなるし(下図版の③)、左コーナーでシート右端の空気袋を膨らませてシートを左へ傾ければ、ライダーの体重移動をアシストすることもできる(下図版④)。ちなみにこの空気袋は完全に萎ませるとシート高が20mmほど下がる(下図版①)ため、前述の高さ可変機構と併せれば、スマートシートは約50mmの可変幅を有することになる。

シート形状可変のイメージ図。シートに内蔵の空気袋(図内の青/黄色部分)のエア圧を上下させ、シート座面の形状(傾き)を可変させる。(画像はテイ・エス テックの図版を転載)

百聞は一見にしかずということで、テイ・エス テックが持ち込んだデモ機を体験してみた。これはスマートシートを装着したVFR800Xにまたがり、ツーリング風景のVR動画を視聴しながら走行中の可変制御をバーチャル体験できるもので、停止直前にスーッとシートが下がっていくのも驚きだが、加速時やコーナリング時に、シートの座面がマッサージ機のごとくモコモコとうごめくのが猛烈に印象的だ。

スマートシート体感機の全容。VRゴーグルの映像に併せてシートの可変機構を作動させ、バーチャル体験ができる。

シート下にメカニズムのスペースは必要だし、当然ながら重量(現状では非公開だが、軽量化には務めているという)も増すはずだ。しかし、GPSやカメラと併用すれば道路状況ごとに可変させることも可能だし、IMUなどの車体姿勢センサーと連動させれば、二輪の操安性や運動性に新たなロジックを生み出すことも可能かもしれない。まるでシートに生命体でも潜んでいるかのような斬新さからは、電子制御が大衆化しつつあるサスペンションに続き、バイクの「可変」の新たな可能性をかいま見ることができた。

マツ

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「西部警察」と「北の国から」をこよなく愛する本誌編集部員。NSR専門誌・PROSPECのほか、フリーペーパーとして復活を果たしたビッグマシン零(ゼロ)の編集長も兼任する。
■1975年生まれ
■愛車:HONDA NSR250R(1992)/HARLEY-DAVIDSON XL883(2009)

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