SHOWAのテストコース完成式典でデモ走行

電サス仕様のアフリカツインが進化

10月20日、バイクではサスペンションメーカーとして有名なショーワが、栃木開発センター・塩谷ブルーピンググラウンドのワインディングコース完成式典を開催した。テープカットやコースのお披露目とともに体験走行も実施。特に注目だったのが5月に初公開された電子制御サスペンションを搭載したアフリカツイン開発車両の展示とデモランだ。

進化型はストロークセンサーを内蔵か?!

10月20日に展示されたアフリカツイン電サス仕様。左のフォークに減衰力調整機構、右にストロークセンサーをセットしていると思われる。リヤショックにもストロークセンサーと思われる配線が確認できる。
5月24日に展示されたアフリカツイン電サス仕様は、フォーク右に減衰力調整機構を装備し、左側には車高調整機構をセットしていた。フレームのダウンチューブ部にセットされた筒状のものがポンプで、油圧でプリロードを調整して車高を調整する仕組みでリヤショックも同様だ。

ショーワのアフリカツイン電サス仕様は、5月の仕様と10月の仕様を見比べると分かる通り、現在は異なる機構で開発されている。5月は車高調整機構がセットされていたが、10月はストロークセンサーと思われるディテールが確認できるのだ。アフリカツインとは別に5月に発表されたBFFの電サス仕様には、ストロークセンサーが内蔵されていることが明らかにされていたが、異なるサス機構を持つアフリカツイン電サス仕様も同じ性能を獲得すべく開発されているのだろう。

ショーワの電サスは早くて正確

早さは減衰力の調整にソレノイドバルブを使用していることで他社製よりも数倍早い反応ができるという。正確性はストロークセンサーを装備することでGセンサーなどを使うタイプよりもサスの状態を的確に把握できるという。ソフトも自社で開発しておりさらにバイク専用とすることで「スポーツバイクであればトラクション性能の向上、デュアルパーパスでは悪路走破性の改善、アメリカンツアラーでは長距離ツーリングでも快適な乗り心地をサスペンションシステム全体で実現する技術を確立した」とメリットを説明している。

従来のセッティング固定式のサスではできないことを、電子制御で実現するために誕生したショーワのEERA=イーラ。これはElectronically Equipped Ride Adjustmentの頭文字をつなげた造語で、ショーワの電子制御を備えた乗車調整装置(主にサスペンションやステアリングダンパー)の総称だ。

イーラのキモは車高調整と減衰力可変の2つ

と、ここまではメカニズム的な特徴を説明したが、今回新たにショーワの電サスが目指すコンセプトが説明された。目的は「究極の気持ち良さと楽しさ」を実現するためで、これはショーワ全体の製品コンセプトと重なる。それを実現するための電子制御で「1 体格」「2 状況」「3 相反する要素」を幅広くカバーすることを目標に掲げている。具体的なメカニズムとしては「EERA-Damping Force」(減衰力可変システム)と「EERA-Ride Height(仮)」(電動車高調整システム)の二つが開発されており、アフリカツイン電サス仕様では5月に展示されたのが後者、この10月に展示されたのが前者と言えるだろう。

正体不明の追加メーターとスイッチ。上記のスライドで掲げた目標の2番目「■様々なシチュエーション…」に対するメカに関連するものと思われる。
フロントブレーキに取り付けられた液圧センサーと思われる部品。上記のスライドで掲げた目標の3番目「■相反する要素対して…」に対応しているだろう。車高が高いモデルのノーズダイブ対策か?!

ショーワはイーラを市販車に標準装備することを目指している。車両との関係は上段のCBR1000RR SP(電サスはオーリンズ製)と同じイメージで、下段のサス専用コンピューター(上段ではSCUにあたるもの)でサスを統合制御するため、CAN通信で速度や姿勢角など様々な車両情報を取り込む形になるだろう。

では、イーラの市販車投入はいつ?

10月20日のワインディングコース完成式典の場でこのコースもイーラの開発に活用されることが明らかになったが、イーラ搭載車の発売について語られることはなかった。ただし、ショーワは2017年11月7日から開催されるイタリア・ミラノショーに出展することを明らかにしていることから、そこで何らかの発表が期待できるだろう。続報に注目!

コースの地元、栃木県塩谷郡塩谷町の見形町長(写真右)に「イーラBalance Free Damping Force」の特徴を説明する二輪サス開発部の梶野部長。この製品はBFFに電子制御の減衰力調整機構とストロークセンサーを内蔵したもので、量産可能な状態とアナウンスされたイーラのシリーズ第一弾だ。
今回完成したのは上段写真右側のワインディングコース。全長1500m、コース幅4.5mで「アップダウンが連続する道幅の狭い中低速コーナーでタイヤの接地感や車体との一体感を総合的に評価する」US路と「緩やかな起伏を伴う道幅の狭いコーナーを高速で走行した際のステアリングフィールや接地感等を総合的に評価する」EU路とコースの前半と後半で特性が異なっている。尚、直線路は2015年9月に完成し運用されている。

5月に取材したイーラBalance Free Damping Forceやアフリカツイン電サス仕様の記事はこちらへ。