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クラシックなスタイルに宿る、スポーツシングルとしての面白さ
クラシック350は、いわゆるオーセンティックなバイクなのだと思う。多くの人が想像するバイクのカタチがここにある。だからこそディテールにも安心感があり、各部を磨いていても妙に手触りが良い。金属ならではの滑らかさと冷たさ、硬さ、そのすべてが心地よい。
思わず愛でたくなるディテールは、タンクのゴールドのラインが職人の手描きという点。近づいてよく見てみると筆の跡が残り、曲線は1台1台異なる。そのクラシックスタイルに欠かせないティアドロップタンクに、ライダー部分とパッセンジャー部分を分割したシートを合わせ、タイヤを深くカバーするスチール製のフェンダーもレトロ感を強調する。記事後半にある車両写真を拡大しながら楽しんでいただきたいが車種によって各部のフィニッシュは異なり、それはロイヤルエンフィールドのこだわりを感じさせるディテールだ。
跨るとワイドなハンドルと足の曲がりが緩やかなポジションは、常にリラックスさせてくれる。車格もそれなりにあるのでハンドリングも大らか。クラシックスタイルを強く印象づけるスチール製のダブルクレードルフレームはしなやかなで、φ41mmの正立フォークと2本ショックの味付けも絶妙。ソフトな足が路面からの衝撃をいなしてくれる。タイトなコーナーはコンパクトに回り、高速コーナーでは素晴らしいエンジンの声を聞きながらダイナミックに立ち上がれる。
なんてフレンドリーなバイクだろう。コーナーの曲率を問わず、そう思わせてくれる。そこからちょっとペースをあげると、スポーティな一面も見せてくれた。
高いギヤでエンジンブレーキを効かせずにコーナーに進入。一瞬で向きを変え、バンク角は少ないため旋回時間は極力短めに、すぐさま車体を起こして低い回転からスロットルを大きく開けながら立ち上がる。ワインディングでもトルクの湧き上がるところを逃さず、矢継ぎ早にシフトアップを繰り返す。クラシック350はこんなスタイルなのにライダーの操作をダイレクトに感じ取ってくれるし、とてもスポーティ。スリムなシングルらしく、とても軽快だ。これぞ単気筒スポーツの面白さ。手の内にあるスペックも良い感じだ。
このバイクに乗っていたら上手くなるし、バイクがどんどん好きなっていくだろう。そんなバイクの楽しさの原点と、ベテランが納得する奥深さも持っている。
日本でライバル視されるホンダのGB350はもっとエンジンのレスポンスが良いし、ハンドリングもクイック。ようは現代のバイクそのものだ。一方でクラシック350はイギリス製の旧車より2回りほど大きいけれどクラシックバイクのような気難しさはなく、気軽に良き時代のイギリスを感じさせてくれる。この2台+ヤマハSR400の比較は、改めて5月24日発売のヤングマシンの誌面でお届けしたいと思う。
総走行距離が400kmを超え、エンジンが馴染んできた
市街地、高速道路、ワインディングを繋ぎ、もう一度市街地を走ってみたくなった。夜の横浜を目指す。夕暮れの淡い色の空がどんどん濃くなり、闇が深くなっていく。各部のメッキに写り込む色や景色が刻一刻と変わっていく。さっきまでティアドロップタンクにはワインディングの新緑が写り込んでいたが、そこに夜景が写り込む。暗闇にクラシック350を置くと、メッキ部分は黒く見え、そんなディテールを愛でるのも楽しい。
走り回っていると、総走行距離が400kmを超えたあたりでエンジンやミッション、クラッチが急速に馴染んできた。エンジンは角が取れてよりまろやかにストレスなく回転が上がるようになり、ミッションはシフトアップだけでなくシフトダウンがとても気持ちの良いバイクに仕上がってきた。こんなマシンとの対話がとても楽しい。総走行距離が450kmを超えたところで自宅に到着すると、メーター内にスパナマークが出現。初期メンテナンスのサインだ。
1901年からバイクを作っているロイヤルエンフィールドが、クラシックという車名を再び使ってその意味を再定義し出した答えがここにある。ちなみにロイヤルエンフィールド東京ショールームではクラシック350の試乗車を用意しており、連日たくさんの方が訪れているという。お近くの方は、現代に蘇るクラシックの意味を実際に体感していただきたい。