10年に一度の名車!! ヤマハ MT-07がモデルチェンジでよりフレンドリーに!!【試乗インプレッション】

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688ccの並列2気筒エンジンを搭載するロードスポーツモデルMT-07 ABSが、2024年モデルでマイナーチェンジを実施して発売になった。主要変更点を挙げれば、5インチTFTメーターの新採用に新ハンドルバーポジションといったあたりだが、持ち前の“とっつきやすさ”は残っているのだろうか? 改めてMT-07を試乗インプレッションしてみよう。

●文:谷田貝洋暁 ●写真:真弓悟史 ●BRAND POST提供:YAMAHA [Y’S GEAR]

初めてのビッグバイクにはMT-07が断然オススメ!

【ヤマハ MT-07ABS [2024model]】

10年ひと昔、今からちょうど10年前の2014年に登場したMT-07。ヤマハのネイキッドシリーズであるMTシリーズにはMT-07を含め、6モデルがラインナップ。MT-125(124cc)、MT-25(249cc)/03(320cc)、MT-09(888cc)、MT-10(997cc)であるが、排気量的に688ccのMT-07はちょうど中堅にあたるポジションにいる。

この688ccのエンジンは「CP2」という名前が付けられた並列2気筒で、クランクシャフトの位相レイアウトには主流の270°を採用。90°Vツインエンジンと同じ不等間隔の燃焼タイミングを採用することでトラクションを掴みやすくしているというわけだ。

この「CP2」エンジンは、ヤマハの他のモデルにも搭載されており、車名を挙げればスポーツヘリテイジのXSR700やフルカウルスポーツのYZF-R7、毛色の違うところではアドベチャーモデルのテネレ700にも積まれていたりする。

「CP2」と呼ばれる688ccの並列2気筒エンジン。クランクシャフトの位相レイアウトは左右のピストンが同時に上下する360°でも、交互に上下する180°でもなく、少しズレて上下する270°。この270°クランクの燃焼タイミングは90°Vツインエンジンのそれと一緒でフィーリングも似ている。

これだけ同系統のエンジンを積んだモデルがあると「モデルによってどうキャラクターが違うの?」と思うかもしれないが、兄弟モデルのなかで最もニュートラルというか、スタンダードで素直なキャラクターに仕立てられているのが今回紹介するMT-07だ。

それこそ僕の場合、「初めてのビッグバイクに乗るんだけど、どれに乗ったらいい?」と聞かれた時に、真っ先に思い浮かぶのがこのMT-07だったりする。ヤマハのラインナップの中で……否、国内外のバイクメーカー含めても、初ビッグバイクとしてここまで両手をあげてオススメできるバイクはないのでは? と個人的には思っているくらい。

ただし“ビッグバイクのエントリーにピッタリ!”と聞いて「乗りやすくて扱いやすいだけで、乗ってもつまらないんでしょ?」 と早合点されてしまっては困る。MT-07は乗りやすくて扱いやすいだけでなく、走らせることが単純に面白いからこそ、初めてのビッグバイクとしてオススメしたいのだ。このあたりは追々説明させていただこう。

【ヤマハ MT-07ABS [2024model]】■全長2085 全幅780 全高1115 軸距1400 シート高805(各㎜) 車重184㎏(装備)■水冷4ストDOHC並列2気筒 688cc 73ps/8750rpm 6.8kg-m/6500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量13ℓ(レギュラー指定) ブレーキF=Wディスク R=ディスク タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ■価格:88万円

2020年に大きなマイナーチェンジを実施し、ユーロ5排ガス規制への対応やスタイリング変更、サスペンションのリセッティングを行なったMT-07。2024年現在の最新MT-07も基本的にはこの2020年モデルがベースとなっており、モノアイ化して精悍さを増したスタイルや、エンジンやフレーム、足回りなどの基幹パーツもそのまま引き継がれている。

2024年のモデルチェンジでアップデートされた箇所としては、ハンドルポジションのリセッティングでグリップポジションが従来比で10mm上方に移動。さらに5インチのフルカラーTFT液晶メーターも装備し、スマートフォンとのBluetooth接続が可能になっている。エンジン関係ではアクセルを戻さずシフトアップ可能なクイックシフターがオプション設定された。

前モデルから10mmほどグリップポジションが上がったらしい…のだが、身長172cmの筆者の場合、そこまで記憶の中にある前作のポジションとは大きな変化は感じられなかった。シート高は805mmと従来どおりで、しっかり絞られた跨り部のおかげで相変わらず足着き性がよく、両足の踵までしっかりと接地させることができる。ただ、もう少し小柄なライダーの場合、このハンドルポジションの10mmの違いは上体の前傾具合の違いとなって表れ、ひいては足着き性の良さにもつながるかもしれない。【身長172cm/体重75kg】

シート高:805mm

定評ある“ヤマハハンドリング”が日常使いで味わえる!

「10年に一度の名車だ!」、2014年にMT-07が登場した時、そんなインプレッション原稿をどこかに書いた記憶がある。僕自身、あまりにMT-07の乗り味、ハンドリングが気に入ってしまって開発を担当したヤマハのテストライダーに追加のインタビュー取材を申し込んでしまったくらいだ。

あれからもう10年。その間、何度となく試乗させてもらっているのだが、乗るたびについつい楽しくなってしまうのがこのMT-07というバイクである。

その楽しさの秘密はやはりハンドリングにある。ヤマハらしさを表す言葉として“ハンドリングのヤマハ”なんて言葉があるが、近年のヤマハのラインナップの中でそれが一番よく表れているのがこのMT-07だと個人的には思うのだ。

2024年のモデルチェンジでハンドル切れ角が35°から32°となり、最小回転半径が2.9mになってはいるが、扱いやすいエンジン特性、接地感の高い車体のおかげで相変わらず低速走行やUターンがしやすい。

「倒立フォークの方がスポーティで高性能!」みたいな風潮があるのも確かだが、MT-07の場合、しなやかな正立フォークの良さがものすごく出ている。おかげでものすごく扱いやすく、高負荷なスポーツ走行をしなくても常用域での走りが楽しいのだ。

このハンドリングの良さや楽しさを言葉にするのはなかなか難しいのだが、あえて言うなら…「コーナリングの際に曲がろうとそっちの方を見ただけで曲がる」なんて感覚をライダーなら感じたことがないだろうか? そんなライダーとバイクがリンクするような感覚をMT-07からはものすごく強く感じるのだ。“曲がりたい方向を見ずとも、曲がろうと思っただけで曲がる”…と言うのは少々大袈裟かもしれないが、そんな感じ。

ただ、これだけならMT-07でなくてもハンドリングのいいマシンは他にもたくさんある。MT-07のすごいところはそんな人馬一体感が、街乗りやツーリングなどの常用域で味わえることだ。ワインディングだのサーキットだの特別な場所で特殊なスポーツ走行をしなくても、街乗りレベル…それこそ交差点の右左折でこの“人馬一体感”が味わえるところが素晴らしい。

ツーリングはもちろん、通勤・通学時などの普段使いのなかで、この感覚が味わえてしまうのだから、乗っていて楽しくないワケがない。僕がかつて「10年に一度の名車だ!」なんて鼻息を荒くしたのもそんな常用域での楽しさがあってこそだった。

飛ばさなくても街乗りレベルでその素性の良さがよくわかるMT-07。

エンジンに関しても、688ccという排気量がこのMT-07の車体キャラクターにちょうどいいと感じる。排気量がどんどん肥大化するビッグバイクの中ではもはや少ない方ではあるのだが、これだけの排気量があれば下道から高速道路までパワー不足を感じる場面はまずない。

高速道路で4輪に遅れをとるようなこともないし、新東名などの120km/h区間も余裕を持って巡航することができる。力不足を感じることがあるとすればリッターバイクの加速に無理に付いて行こうとする様な状況くらいだろう。

排気量が688ccもあれば高速巡航走行も余裕をもってこなしてくれる。

さて2024年のモデルチェンジではわずかにハンドルポジションがアップしたMT-07であるが、正直乗っていて記憶の中にある従来モデルとの違いはほぼないと言っていい。ハンドルがグリップ位置で10mm高くなったところでコーナー進入時のハンドルの抑え込みができなくなったり、前輪荷重が掛けにくくなったなんてことはなく、持ち前の扱いやすさがスポイルされているなんてこともなかった。

他のMTシリーズ同様、乗りやすさの中にもしっかりスポーティさを兼ね備えており、コーナーではリーンインもリーンアウトもバッチリ決まる。扱いやすさを存分に活かした自在感も従来どおり感じられるようになっている。

登場から10年という節目を迎えるMT-07。今回の試乗でもデビュー当時に感銘を受けた“ハンドリングの良さ”はしっかりと感じられたのはうれしいかぎり。MT-07は、“らしさ”を損なうことなく真っ当に進化していることが再認識できたしだいだ。こんな楽しいバイクが相棒なら“ちょっとそこまでのつもりがついつい遠くへ出かけてしまう”…なんてことが多くなるに違いない。“いいバイク”とはこういうバイクのことなのだ。

ヤマハ MT-07 ABSのディティール

ヘッドライト&タンク部分のデザインは従来通りで変わっていない。ただしグリップポジションがやや高くなったり、大きな5インチTFTメーターを採用したことでハンドルまわりの雰囲気は変わっている。

2020年のモデルチェンジでφ298mmへとサイズアップしたブレーキディスクはそのまま採用。タイヤがミシュランのパイロットロード5なのも変わらず。相変わらずの“ヤマハハンドリング”にホレボレする。

アルミテーパーハンドルは、ネイキッドとしてはややワイドな幅780mmサイズをそのままに、グリップポジションで高さを10mmアップ。ハンドル切れ角が35°から32°となり、最小回転半径も2.7mから2.9mになっている。

右スイッチボックスの下部にあったハザードスイッチが左スイッチボックスに移設され、新たにホイールスイッチを追加。多機能化した5インチTFTメーターの操作は“プッシュ”&“ダイヤル”のホイールスイッチで行う。

5インチTFTフルカラーメーターは、ホリゾンタル風グラフィックの「ツーリング(右)」と、タコメーターがバーグラフ化する「ストリート(左)」の2種類を用意。表示項目に関してはレイアウトが違うだけで内容に違いはない。表示項目は、速度、タコ、シフトインジケーター、気温計、時計、燃料計、ギヤポジション、トリップ×2、平均燃費、瞬間燃費。燃料残量が予備レベルに達すると自動的にカウントスタートするフューエルトリップメーターも装備している。

スマートフォン連携機能“Y-Connect”対応。スマートフォンにダウンロードした“Yamaha Motorcycle Connect”アプリを介してBluetooth接続が可能になった。メーター左上部には携帯電話との接続状況やバッテリー残量などが表示される。

Bluetooth接続により、メーター上に電話の着信やSNSアプリからの通知を表示する。一方、アプリ側ではオドメーターや燃費、バッテリー電圧のほか、スマートフォンの位置情報から最終駐車位置やライディングログをとることも可能。

燃料タンク容量は13ℓ。WMTCモード値は24.6km/ℓなので計算上の航続距離は319.8㎞。ただ実際に街乗りした際のメーター表示による平均燃費は20km/ℓぐらいであり、満タンで250kmは走れると思っていいだろう。

スリムな車体に加え、しっかり前方を絞り込んだライダーシートのおかげで、805mmというシート高数値以上に足着き性がよく感じる。タンデムシートは小さめで居住性も荷物の積載性もそこそこという感じ。

タンデムシート裏側には車載工具に加え、荷物積載時に使用する荷かけループが収納されている。タンデムシート下にはBluetooth用の装置が増えたこともあり、書類を入れるくらいで大きな収納スペースはない。

車体左側のタンデムステップまわりには国内モデルオリジナルのヘルメットホルダーがある。タンデムステップは可倒式でヒールガード部分は荷かけフックポイントにもなる。

ブレーキレバーには握り幅を5段階で変更できるアジャスターを装備。クラッチレバー側はある程度遊びで調整可能だが、ブレーキレバー側のアジャスターは手の小さいライダーとっては嬉しい限り。

リヤショックには、伸び側減衰力調整機構に加え7段階のプリロード調整機構を装備。フロント・リヤともにソフトめなセッティングが施されているMT-07だけに、積載時や二人乗り時には積極的にプリロード調整を行いたい。

今回の試乗車は非装備だったが、YZF-R7に続いて、MT-07もオプションでアップ方向対応のクイックシフター(1万8700円/工賃別)がオプション装着できるようになった。これに伴いチェーンカバーの形状も変更されている。

XSR700(1405mm)、YZF-R7(1395mm)とはベースの車体を共用するも、異なる1400mmの軸間距離が与えられており、試乗した印象ではMT-07が最もコンパクトに感じる。

ナンバー灯以外はLEDを採用。今回のモデルチェンジで前後のウインカーの形状が変更になっており、細形のものからやや発光面部分の幅が広がったものが採用されている。

ユーロ5へは2020年のモデルチェンジで対応済み。最高出力は73ps/8750rpmで最大トルクは6.8kg-m/6500rpm。270°クランクの並列2気筒らしいパルス感もしっかり味わえる。

跨った状態でのサイドスタンド出し入れのしやすさに定評があるMT-07。ビッグバイクの敷居を下げるべく、登場時から色々な工夫が盛り込まれている。


※本記事はYAMAHA [Y’S GEAR]が提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。