2000年の最終モデルから時を経ること20年弱、ついにスズキ新型カタナが復活する。まもなく開催される大阪モーターサイクルショー(3月15~17日)、東京モーターサイクルショー(3月22~24日)での実車展示が確実視されるとあって、カタナファンにとってはショーでのお披露目が待ち遠しいのではないだろうか。WEBヤングマシンではこれまでもカタナ総力特集を繰り広げてきたが、今回は過去の映像アーカイブを掘り起こして、カタナ誕生から成長の歴史を振り返りつつ、初代モデルのスペック紹介と試乗インプレッションをお届けしたい。
#1/4:1980初代発表前夜編
GSX1100Sカタナの誕生に先立つことおよそ5年の1976年11月、2サイクルメーカーだったスズキは空冷4サイクル直4・DOHC2バルブのGS750を発売。翌年に1000cc版が追加されたGSシリーズは、鈴鹿8耐など数々のレースで勝利を収め、スズキ初の大排気量4サイクルシリーズとして満足の行く成功を収めた。さらなる高出力化を求めたスズキは独自の技術を投入した4バルブユニットを完成させ、1980年にGSX1100Eを世に送り出す。その出力はそれまでのフラッグシップ・GS1000Sの90馬力に対して、105馬力を達成。性能はまさに申し分のないものだった。しかし、斬新さを狙った角型基調のフォルムには否定的な意見が少なくなかった。そこでスズキは、スタイリングを外部デザイナーに発注することを決定。ドイツのターゲットデザイン社に白羽の矢が立てられた。そのデザインの成果が、唯一無二の存在感を放つ「カタナ KATANA」である。
#2/4:1980〜2000概説編
1980年秋、西ドイツ・ケルンショーにおいてターゲットデザイン社によるデザインを形にしたモックアップモデルが初披露された。日本刀をイメージしたフォルムが与えられたそのモデルは、その名もズバリ「KATANA カタナ」と命名。そのスタイリングは十分以上に衝撃的だったが、それゆえに「あくまでもショーモデル」というのが大方の受け止め方だった。ところが、1981年末に発売されたGSX1100Sカタナのフォルムは、まさにショー展示車そのもの。プロトタイプの製作を通して、スクリーンの有無や形状、マフラーの形式などが煮詰められたものの、スタイリングがありきたりのおとなしいものに変更されることはついになかった。ショーモデルそのものの市販車を発売するというスズキの英断は、驚愕と賞賛をもって迎えられた。しかもその性能は当時最強最速。当然のように世界中で爆発的なヒットを記録し、排気量自主規制のあった日本でも750cc版が発売され大人気となった。
#3/4:初代ディテールチェック編
1981年の終わりに発売された初代カタナ・GSX1100S。最大の特徴は日本刀を思わせるその斬新なデザインだ。初期型のカラーリングはやはり日本刀をイメージしたもので、外装・フレーム・エンジンすべてシルバーで統一。シートのみ紺とグレーのツートーンカラーとしていた。シート表皮は滑りにくくザラザラした手触りのバックスキン調を採用していたが、これも新しい試みだった。タンクに大きくあしらわれたSUZUKIのロゴはオレンジ色で、これは神社の鳥居から連想された色だという。およそ20年間販売されたロングセラーモデルだが、独自のフォルムだけは最後まで変わることはなかった。今もなお、このデザインを愛するファンは数知れない。
#4/4:初代試乗インプレッション編
(テスターはおなじみ丸山浩氏)まずはポジションから。カタナの特徴的な点だが、トップのステムブリッジの下にあるクリップオンハンドルが非常に絞り込まれた状態で付いている。また、手を伸ばすとタンクの長さが感じられる。ここまで低いハンドル、そしてタンクの長さにより体の自由度がかなり失われるように思えるのだが、実際に走り出してみるとこのポジションが意外と戦闘的で、形になるというか画になる。さすがに街なかを乗る時はステアリングを切ったりUターンしたりするのには自由度が少なく辛いが、峠を走るにおいては十分に楽しめる。そのあたりがこのモデルの魅力だったのではないかと思う。
※ヤングマシン2006年4月号付録DVDをベースに再構成