他社のライバル勢に対抗するため革新的な機構を随所に採用し、ナナハンならではの可能性を追求する。
ED2と決別し、スズキの社内デザインを採用
マニアの間では“3型カタナ”と呼ばれている’84年型GSX750S3の最大の特徴は、スズキの社内デザインを採用したこと。残念ながら市場の評価とセールスではオリジナルを超えられなかったものの、モーターサイクル初のリトラクタブル式ヘッドライトを筆頭とする数多くの新技術を導入した3型は、当時のスズキの意気込みが存分に感じられる車両だった。日本の規制が緩和されたため、ハンドルグリップ位置はかなり低めに設定している。
ソフトな乗り味は最高! ヘタなツアラーよりも快適だ(GSX750S3復刻インプレ)
昨年のモーターショー以来、 リトラクタブルライトと旧カタナのデザインを流麗にリファインされたシルエットで注目を集めていた新型カタナが遂に発売開始となった。
エンジンはコンパクトなGSX750E系のものが採用され最高出力は5psアップの77ps。車体全体もコンパクトになり乾燥重量も10kg軽い212kgに収まった。リヤサスはフルフローターになり、フロントサスには新たに開発されたPDF(ポジティブ・ダンピング・フォーク)が装着されている。
このサスユニットは、従来のアンチダイブ装置がブレーキング時のみ作動していたのに対し、通常走行時の急激な突き上げ(アクセル・オフ時などの姿勢変化)を検知して、自からアンチダイブを作動させるシステムで、これにより乗り心地が良く、ハードな走行でも姿勢変化を誘発しにくいソフトなサス設定を可能にした。
このマシンの大きな特徴であるリトラクタブルヘッドライトは、万が一の作動故障に対して手動で操作するためのハンドルをカウル内に備えられている。
このリトラクタブル機構は、スモールランプ・オンで作動し、パッシングの時は、その都度出て、更にスイッチを押し続けると光を照射する仕組みになっている。またSF映画にそのまま登場しそうな曲面と曲線を結びつけられたデザインは、決して写真だけを見て、「子供ダマシのデザインだ」などと思うのは間違い。旧カタナ同様、実際にその起伏を肉眼で見れば、中途半端な考えで造ったものではないのが解る。どの角度から見ても独創的で、仕上げで手を抜いた感じは見い出せない。
エンジンの出力特性は、極めてフラットで、2500rpmも回っていれば、そこから連続して10000rpmまで、これといった非力感を味わう事なく、一定ギアでパワーを摘出できる。
この出力特性のお陰で、街中から、高速ワインディングロードまでマシンコントロールを容易にしている。ハンドリングはニュートラルでしっとりとした落ち着きと軽快さを両立したもの。多岐に渡る使用状態を考えた場合、総合的に扱い易さを強調したもので、高い評価を与えたい。また乗り心地もすこぶる良く、ヘタなツーリングモデルよりも快適な走りを約束してくれる。 これはひとえにフロントのPDFの威力と言えるだろう。事実アンチダイブの動きも、作動している事を忘れさせる程スムーズな作用を示し、これを意識してコーナーへ進入しなければならないという事もない。
また標準装備されているバトラックスのレイン性能にも驚かされた。ミューの高いテストコースとはいえ、ウェット路面でカタナのステップが接地するまでのバンク角を与えても、慎重にライディングすれば不規則なスライドも、振られもしない。
エンジンは、高回転域になると特に活発になるという事はないし、その回転域を使って走った時は、車体回りやサス、タイヤなどが、低中速域での高いバランスと同じものを保ったまま快よく走ってくれるため、〝やたらと速い〞という感覚は感じられない。
しかし、他のモデルに見劣りする様な走りはしないし、 一般的な使用状況ではどのライバルマシンよりも使い易く快適であるのは間違いない。(宮崎敬一郎)
銀が設定された最後の750カタナ
全面新設計となった3型のセールスが意外に伸びなかったためか、’84年に登場したGSX750S4は既存のカタナを思わせる、シルバーフレーム+シルバー外装を設定(ゴールドフレーム+ホワイト外装も継続)。この車両ではエンジンカバー類もシルバーとなった。基本構成と諸元に変更はなく、油圧クラッチやオイルクーラーも3型を継承。
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