フロントフォークに秘密あり、走りにTMAXの面影も

2018新型XMAX ABSの試乗インプレッション

250㏄のビッグスクーターに久々のニューモデルが登場! マジェスティと入れ替わる形で登場したXMAXはビグスクブーム復活の起爆剤となるか? ※ヤングマシン2018年5月号(3月24日発売)より

【〇】峠道も存分に楽しめる

ヨーロッパで人気のミドルスクーター、XMAXの300㏄版が昨年モデルチェンジし、その250cc仕様が今年1月から日本で販売開始となった。このクラスでは久しぶりの新型スクーターであり、また長らくブームを牽引してきたマジェスティの代替わりということもあって、実に注目度の高い1台なのである。

まずはライポジから。足着き性は身長175cmの私で両足の拇指球がどうにか届く程度と、決していいとは言えない。だが、シート高は操安性に大きく影響するだけに、日本で販売するからといって無理に下げなかった点は好印象だ。シートストッパーはやや遠いが、ハンドルが約20mm手前に引けるので、必要な場合はショップでアジャストしてほしい。

注目の走りは、既存のビッグスクーターよりもモーターサイクルのそれにやや近いものだ。視点が高いことをはじめ、ホイール径が前後とも1インチずつマジェスティより大きいこと、そして、極め付きが上下のブラケットで支えるフロントフォークだ。エンジンごと上下するユニットスイングなので、兄貴分のTMAXほどリヤのバネ下が俊敏に反応する感じではないが、強めのブレーキングからコーナーへ進入する際の安定感とラインの乗せやすさは、ビッグスクーターの域を超えている。

【YAMAHA XMAX ABS 価格:64万2600円  色:黄、白、灰】マジェスティ比で9㎏軽く、軸距は10mm短い。また、ホイールサイズは前13/後12インチから、それぞれ15/14インチに。

【〇】力強い新型エンジン

走りの楽しさと燃費や環境性能を両立するという新設計の水冷エンジンは、マジェスティよりも厳しい排ガス規制をクリアしつつ、4psも高い最高出力を公称。車重が9㎏軽くなっていることもあり、加速はかなり力強い。それでいて、微振動やメカノイズが少ないなど自己主張はほとんど感じられず、スロットルを開けた分だけ従順に反応する。スクーターのエンジンにふさわしく、裏方に徹しているという印象だった。スマートキーを携帯していれば全ロックが解除可能であり、また多機能メーターの切り換えが1つのスイッチで行えるなど、利便性も感心することしきり。マジェスティにはなかったABSやトラクションコントロールを装備しつつ、価格は約8万円安。これは大人気になりそうだ。

シート高はマジェスティの700mmに対して795mmとかなり高く、足着き性はいいとは言えない。乗車時に約40mm下がるローダウンサスキットを用意する。ライダーの身長は175cm、体重は62kgだ。

【×】足着きと巻き込み風が体格によりネックかも

マジェスティより95mmもシートが高いので、足着き性がネックになる人は少なくないはず。あと、自分の身長では高速域で後方からの巻き込み風がやや気になった。スクリーンは上方に約50mm移動できるので(工具は必要)、これで改善できる可能性はあろう。

【結論】このクラスの基準となるべき新型スクーター

街乗りでは既存のビグスクとの違いを感じにくく、足着きの悪さだけが気になったが、高速道路と峠道を走って印象が好転。タンデム時の剛性感や後席の乗り心地も及第点以上で、スクーターの激戦区欧州で鍛えられた感が伝わる。

精悍なヘッドライトやサイドのブーメランパネルなど、MAXシリーズ共通のアイコンを採り入れつつ、フロントカウルからフェンダーへとつながるラインでこのモデル独自の世界観を強調。フロントウインカー以外の灯火類は全てLEDで、中央のヘッドライトはハイビーム時に点灯する。
シート下の収納スペースにはフルフェイスのヘルメットが2個収納可能で、内部にはLED照明あり。容量はマジェスティの60Lに対して45Lと減ってはいるものの、実用上は不満なし。収納できるビジネスバッグはA4サイズを公称する。
フロントフォークのインナーチューブを上下のブラケットで支える車体構成のため、フロントトランクの奥行きはやや少なめ。左側はロック機構付きで、12V の電源ソケットを設けるほか、ケーブルを通すためのスリットも。右はワンプッシュで開く。
XMAXにおける最大のポイント。一般的なスクーターはアンダーブラケットのみでインナーチューブを支持するのに対し、このモデルはモーターサイクルと同様にトップブリッジでも支持しているのだ。フロントフォークは33mm径の正立式で、前ブレーキは片押し式2ピストン+シングルディスク。
形式こそマジェスティと同じ249㏄水冷SOHC4バルブ単気筒だが、ボア×ストロークから異なる。アルミ鍛造ピストンやオフセット&DiASilシリンダー、ヤマハ軽二輪スクーター初の一体式鍛造クランクなど、最新技術を惜しみなく導入。最高出力はマジェの19psから23psへ。取材時の燃費は31.7km/L(約250㎞走行)だった。
左に速度計、右に回転計を並べ、その中央に大型LCDをレイアウト。燃費や外気温、トラコンのON/OFFやV ベルトの交換時期まで表示でき、上下の項目切り換えやリセットは全て1つのボタンで行える。
【左】通信エリア内ではハンドル、シート、左フロントトランク、ヒューエルリッドのロック解除が可能。【右】フロアトンネルには「X」をアレンジした職人手作りの成形型によるテクスチャーラインが入る。

XMAX ABS 主要諸元■全長2185 全幅775 全高1415 軸距1540 シート高795(各mm) 車重179kg(装備) ■水冷4スト単気筒OHC4バルブ 249cc 23ps/7000rpm 2.4㎏-m/5500rpm 変速機Vベルト式無段変速 燃料タンク容量13L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70-15 R=140/70-14

撮影:飛澤慎
ニュース提供:ヤングマシン2018年5月号(3月24日発売)