1世代前の空冷ボクサーエンジンを搭載するヘリテイジファミリー。昨年7月に発売された人気モデル、アーバンG/Sの魅力に迫る! ※ヤングマシン2018年7月号(5月24日発売)より
【〇】シンプルだからこそバイクとの対話が濃密
共通のプラットフォームでバリエーションモデルを増やしている、BMWのヘリテイジファミリー。今回試乗したRナインTアーバンG/Sは’16年11月にドイツで発表され、昨年7月に日本でも販売がスタートしたモデルだ。先に発売されたRナインTスクランブラーをベースに、’80年に登場したR80G/S風のルックスを与えたのがアーバンG/Sであり、このカラーリングに惹かれるベテランは多いはず。
エンジンは1169ccの空冷フラットツインだ。現行Rシリーズが採用する空水冷エンジンの1世代前のユニットで、重めのクランクマスによる低回転域からの豊かなトルクは空冷時代ならではのもの。ハンドルやステップから硬質な微振動が伝わるが、それはこのクラシカルな外観に見合うものであり、さらに言うと疲労を増長させるほどではない。最高出力は110ps。Rシリーズで最も売れているR1200GSよりも15ps低いが、車重が30kg上も軽いこともあって、スロットルを大きく開けた時の加速感は豪快と表現できるもの。牧歌的かつ全てが手の内にあるような特性のR80G/Sとは対照的で、あくまでも現代の交通事情に則した性格となっている。
ハンドリングは、デュアルパーパスというよりもネイキッドに近いものだ。フロントホイールが大径の19インチで、しかもホイールベースが1530mmと長いので旋回力はそれなりだが、フラットツインならではの切り返しの軽さが武器となり、峠道は軽快そのもの。それに気をよくしてフラットダートも走ってみたのだが、未舗装路を走るにはダンピングが強めでストローク量が短いこともあり、見た目のイメージほどガンガン走れるという感じではない。付け加えると、スロットル開け始めのツキがいいのと、ブレーキの初期制動力が強いのもオフを主体に走るのには不向きだ。とはいえ一般的なネイキッドよりもダートを走りやすいのは確かであり、いざとなったらABSやASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)がサポートしてくれるので安心である。
【×】ダートを走るならオフタイヤに交換せよ
ハンドリングだけでなくライポジもネイキッドに近いため、オフロードで積極的に操るには体格がかなり大きくないと難しい。また、タイヤもオンロード向きなので、もし林道をメインに走りたいのであればオフタイヤへの交換はマストだろう。
【結論】往年の雰囲気を味わうためのネオクラシック
車名に”アーバン”と入れているだけに、メインステージはオフロードではなく都会だろう。シンプルな車体構成と電子制御の少なさに潔さが感じられ、それゆえにマシンとの対話が濃密だ。カスタマイズも含めて楽しみたい人に。
撮影:飛澤慎