3輪スポーツバイクの新ムービーが公開

NIKEN=ナイケンはアッカーマンステアで旋回

まだ誰もその走りを体感したことのないNIKEN=ナイケン。フロント2輪のスポーツバイクは一体何を目指して開発されたのだろうか? そして、どんな走りを見せるのか? 2018年3月7日にヤマハが新たに公開したプロモーションムービーなどを通して探る。

前輪左右の切れ角が異なるメリットとは?

新しいコーナリング体験を目指したナイケンは、トリシティと同じLMWテクノロジーを採用し深いバンク角、高い俊敏性、自然なライディングフィールを実現しているとプロモーションムービーではアピールされている。ただし、一般的なステアリングシステムを使用するとフロントの2輪はコーナリングで平行したラインを描くことはできない。ナイケンは、これを解決するためLMWアッカーマン ステアリング ジオメトリーを採用していることがそのメカとともに明らかにされた。コーナリングでイン側のホイールがアウト側より切れるようにすることで両輪が平行したラインを描く「アッカーマンス テアリング」が、前2輪の優れたグリップ力をフルに発揮させることができるのだ。

1枚目はアッカーマンス テアリング ジオメトリーの機構部分を説明。2枚目は通常のステアだとアウト側が外に流れるがナイケンは前2輪が平行のラインを描く様子。3~4枚目では「オフセットジョイントがフロントホイールをラインに乗せ続けることを可能にする」と書かれており、アッカーマンステアリングのメカでキモとなる部分を示す。キャスター角やトレール長でハンドリングを構築する2輪以上に複雑なメカニズムが、ナイケンの新しいコーナリング体験の実現を支えているのだ。

フロントまわりのすごいボリューム感

ナイケンのフロントまわりは、パラレログラム リンクで2輪と同じようにバンクするメカニズムを備える。フロントフォークは左右各2本の計4本。もちろんホイールはフロントだけで2セット用意される。その実車を同じエンジンを使用するMT-09と並べたが、ナイケンのフロントまわりのボリューム感は半端ない。車重は263㎏とMT-09に比べて70㎏増となり、試しに取り回しをしてみるとずっしりと手応えがあった。ただし、重さはナイケンにとってネガではなく、新次元のコーナリング性能を得るために必要なことだったのだろう。

2本のフロントフォークで1輪を支えるだけの2輪に比べて圧倒的に複雑で部品点数が多いナイケンのフロントまわり。それでいて2輪と同じように取り回しすることもできるし、使い勝手も同じというのがナイケンの存在意義。リヤのスリップについてはトラクションコントロールで対処できるので、ヤマハLMWのスローガン「目指せ転ばないバイク」を限りなく具現化に近づけているだろう。263㎏の取り回しはVMAXやFJR1300Aより軽くXJR1300よりも重い。

ある種異様な存在感こそナイケンの真骨頂

2017年10月の東京モーターショーに出品されたナイケンを撮影し、実際に跨ったりエンジンを始動することができたのでその写真もここで紹介してみたい。まず、単体の展示では気づかなかったスケール感に驚くことになった。また、街中に存在する乗り物としても新しい部類で、地面に置いてあるとギョッとさせられる迫力がある。スケール感や押しの強いデザイン、カバーされたフロントまわりのボリュームなど様々な要素が重なりあって醸し出されるオーラと言えるもので、コーナリング体験だけでなく個人が所有できる乗り物としても新しい価値を提供しているのだ。

前から見ても後ろから見ても横から見ても異様な存在感があるのが分かるだろうか。これが街中を走っていたらかなり注目されるだろう。足つきは身長178cmのライダーで両かかとが浮く程度だった。
【YAMAHA NIKEN(ナイケン) 2017東京モーターショー出品モデル】右がナイケン。国内での発売時期は秋頃と予想されるが、価格はまだ決まっていないとの情報。現状はっきりしているのは、200万円を切りそうというざっくりとした価格帯のみ。カラーバリエーションはこの1色のみとなる見込みだ。

主要諸元■全長2150 全幅885 全高1250 シート高820 軸距1510 最低地上高150(各mm) キャスター/トレール=20°/74mm 車重263㎏(装備)■水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ847cc 115ps/10000rpm 8.9㎏-m/8500rpm 燃料タンク容量18L■タイヤF=120/70R15 R=190/55R17

「生産終了のVMAXが3輪になって特許公開」記事はこちら

撮影:益田和久