~傾斜角38°の急斜面をトラバース~
バイクで巡るニッポン絶景道:下栗の里探訪【神々の棲む絶景山岳ルート|長野県】
- 2019/6/5
不定期でお送りする『バイクで巡るニッポン絶景道』シリーズは、ヤングマシンの姉妹誌であるモトツーリング編集長カン吉(神田英俊)が案内人。第2弾は、長野県の南アルプスを巡る絶景山岳ルートの旅だ。
TEXT & PHOTO:Hidetoshi KANDA
試練の狭路を走り切れば、そこには感動の絶景が待っている
赤石山脈とも呼ばれている南アルプスは、3000m級の山塊が果てしなく連なる大山岳地帯だ。長野県・静岡県・山梨県と3県に跨っており、トレッキングですら受け付け難い程の険しさから、真の秘境地帯とも呼ばれている。
そんな南アルプスの山中、標高800~1100m付近に下栗の里と呼ばれる山里がある。外界からほぼ隔絶された幽玄の山中、仙人の存在すら疑問に思わない山中に佇む60世帯、150人余りの里。標高の高さから米や麦が育たない為、蕎麦や野菜・雑穀で生計を立てつつ自然と共生する人々の集落だ。約38°の大傾斜地帯を実に巧妙に開拓し、遠望するとまるでアルプスに溶け込むかのような風景。「にほんの里100選」にも認定されており、生活地理学者の市川健夫氏が「日本のチロル」と呼称した事から、一躍全国的に有名になった山村だ。
里の全景が見渡せるビューポイントまでの道程は全線1.5車線の狭路。完全舗装ではあるものの、落石も点在し路面も決して良いとは言えない。いくつものヘアピンカーブと、見通しの悪い酷道をクリアする必要があり、初心者ライダーには試練の道とも言えるだろう。
しかし、落差約1000mもの度肝を抜かれる展望や抜群の秘境感。この試練の過程を勘定に入れても、なお有り余る程の感動絶景がキミを待っている。
この狭さを楽しめる要素を持つのはバイクのみ。ライダーならば、一生に一度は絶対に行っておきたいポイントだと断言できるだろう。
秘境感★★★★★
天空感★★★★★
潮風感…
爽快感★★★★★
根性感★★★★
開放感★★★★

隔絶された山中の斜面を開拓して生計をたてている下栗の里。大傾斜地に佇む山村の様相はまさにチロル地方を彷彿させる。この様相からは、大都会から数時間で訪れる事ができるとはとても思えない。日本一の大秘境は、実にアクセスしやすい場所に存在していたのだ。
~ここでしか食せない激レア食材、原種のジャガイモ~
下栗の里の特産品である「ニ度芋」。いわゆるジャガイモの事だが、二期作可能な事から付いた呼称だ。標高が高く冷涼なこの地では重要なデンプン源として古くから栽培されてきた。驚くべき事に、外界と隔絶された地であった為もあり、本来の原産地であるアンデスの原種に最も近い種と言われているのだ。

はんば亭
長野県飯田市上村下栗1250-1 TEL:0260-36-1005
10:00~16:00 水・木曜休
【バイクで走れる国内唯一の隕石クレーター】御池山隕石クレーター
下栗の里からアルプス稜線を駆けるエコーラインは、1.5車線ながらダイナミックな山岳風景が素晴らしい快走ロード。このエコーラインは御池山付近で何と古代に衝突した隕石クレーターの内側をトラバースする珍しい道である。氷河期の終わり頃、直径45mもの隕石がこの地に衝突。直径約900mのクレーターが出来たのだ。現在は浸食によって現存範囲は40%程度だが、明らかにクレーター形状が判別可能となっている。


エコーラインはクレーター中心を遠望するようにその内側をトラバースする。3000m級の南アルプスを見渡す絶景ルートだが、小落石が多く路面には注意が必要。また、休日は交通量も散発的に有る為、ライン取りを注意し正面衝突事故に気をつけよう。
所在地:御池山頂上付近(エコーライン沿いから見学可。看板有)
※R152よりしらびそ高原経由で約30分、下栗の里経由で約20分
【キンと冷えたアルプスの湧水】硬水・軟水の味比べ。湧水巡りもOK!
アルプス山麓に隣接する周辺は湧水の宝庫。道沿いには湧水スポットが点在し、キンと冷えた自然の水を堪能できる。その殆どは丸みと甘さを併せ持つ軟水が中心だが、この地域には国内では珍しい硬水が湧出している場所もある。

日本屈指の硬度! 観音霊水
龍淵寺境内に湧く450年もの歴史を持つ名水。国内屈指の硬度を持つ硬水で、アルプス特有の地質構造が生み出す珍しい湧水だ。

観音霊水(龍淵寺境内)
長野県飯田市南信濃和田1188 TEL:0260-34-2159 境内参拝自由・無料
PH:8.0 カルシウム:63.0 マグネシウム:17.0 硬度:176
【軟水:~60、中水:60~120、硬水:120~(単位mg、炭酸カルシウム換算 ※WHO基準)】
【オドロキの強烈グルメ】さぁ、昆虫を食べてみよう(!?)
冷涼で作物の育成には不適な信州の一部では、重要なタンパク源として昆虫が伝統的に食されてきた。現在もこの習慣は続いており、スーパーで普通に購入可能。味にクセのある虫もあるが、どちらかと言えば意外に美味。見た目で敬遠する方が多いと思うがモノは試し。

国道361号 開田高原長峰峠
下栗の里と並ぶ南信州のもう一つのハイライトが、岐阜県境に近い開田高原だ。中でも高山市との主要連絡道でもある国道361号線は、3000m超の山体を誇る霊峰御嶽山を一望できる超絶絶景ルート。
標高は1350mと国内屈指の標高を誇っており、猛暑の続く真夏でもひんやり。下栗の里とは少々エリアは離れているが、南信に訪れたなら絶対に走っておきたいルートだ。
路面は少々荒く、区間によっては道幅も狭いが、その展望と景色に感激する事間違いない。

交通量:木曽街道と呼ばれる主要街道だが、観光車両も少なく大変走りやすい。但し、スピードの遅い地元車両やまれに取り締まりも行っている為、速度は控えめに。
路面:全体的に比較的良好だが、山岳部は荒れが目立つ箇所もある。国道ながら、場所によっては1.5車線の狭路部分もあり、通行には十分注意をして欲しい。
まさにアルプス盛り! 駒ヶ根ソースカツ丼
カツ丼は、ラーメンと並び我々庶民に定着したグルメ。もはや「国民食」と言っても過言でない。しかしこのカツ丼は、卵派とソース派の間にて永遠の派閥争いが繰り広げられている。では、一体どちらが元祖なのだろう?
実はこれについては、大正10年に早稲田高等学院生の中西敬二郎氏らが学生をターゲットとして考案したと言う説と、大正2年に高畠増太郎氏が、東京の料理発表会でソースかつ丼を発表したという説の2説ある。両説のどちらが元祖かは現在不明だが、とにかくカツ丼の元祖はソースである事は間違いない。
そこでこの地域で絶対の食しておきたいグルメが駒ヶ根市の名物「駒ヶ根ソースカツ丼」なのだ。
発祥は昭和11年頃。駒ヶ根駅付近のカフェにて現「きらく」の先代が提供したのが元祖と言われている。
特徴は比較的甘めのソースとごはんに敷かれたたっぷりのキャベツ。この両者の相性が実に素晴らしい。キャベツのフレッシュ感が肉の脂を中和してくれる為、最後まで飽き無く頂けるのだ。駒ヶ根市では認定B級グルメとしてPRしているが、乱立するB級グルメ群とは一線を画した昭和浪漫溢れる逸品。ぜひ頂いておこう。

ガロ
長野県駒ケ根市赤穂北割一区759-336
TEL:0265-81-5515