ホンダ レブル1100/500/250=3兄弟試乗インプレ徹底比較【コスパ王頂上決戦?!】

“走る/曲がる/止まる”に”安い”まで揃った、ホンダ レブル1100/500/250の3兄弟。本記事ではヤングマシンのメインテスター・丸山浩が試乗走行を通じてその性能/キャラクターについて詳しく比較した。アナタにピッタリのレブルはどれなのか、ぜひ参考にしてほしい。


●まとめ:宮田健一 ●写真:長谷川 徹/山内潤也 ●取材協力:ホンダ

レブル3兄弟試乗インプレ:シリーズ通じて思想は同じだ

まず、レブルシリーズの基本となる250からだ。搭載しているエンジンは、CBR250RやCRF250Lなどと同系のDOHC単気筒。だが、250とはいってもちゃんとレブル用の味付けがなされており、低中回転域ではポコポコとしたパルス感が楽しめ、クルーザーらしさがちゃんと作られている。そのためか、さすがに高回転域までブン回すとちょっと無理しているなという感じがチラホラするのは仕方ないか。まあ、レブル250でそんな走り方はあまりしないと思うけどね。

そして250のハンドリングはナチュラルそのもので、クルーザーだと身構えて乗ると拍子抜けするほど扱いやすい。”走る/曲がる/止まる”の基本に忠実なうえに、とにかく軽くて足着きもめちゃくちゃいいと、まさに”クルーザーの形をした普通のバイク”。免許を取ったばかりで初めてバイクに乗るライダーには最高のエントリーマシンに仕上がっている。

【HONDA REBEL 250】250にはビキニカウル付き仕様もある。●価格:59万9500円〜

次に500だ。250をベースとした車体に、こちらはCBR400Rの海外版である500R系に使われているDOHCの並列2気筒を搭載。日本用をあえて400で出さなかったのは国内マーケットの需要が見込めないからではと穿った見方をする人もいたが、乗ってみるとこれがなかなか絶妙な排気量設定になっていると感じた。巡航していると、その排気量によって250よりもっとクルーザーらしい余裕にあふれている。250はエンジンを回していくと次第に心地いい鼓動感が味わえる回転域から外れてしまうのだが、500だとそんなに回さずとも気持ちいいまま。そして、その鼓動感は250よりももっとハッキリした2気筒らしいビートを刻んでくれる。ハンドリングについては250ゆずりの車体だから、これもナチュラルそのもの。足着きも含め、乗っていてまったく違いはない。

500は大型バイククラスといってもトラクションコントロールなどの電子装備はABS以外に持っておらず、メーターまわりをはじめとした装飾類も250と同じもので至ってシンプル。ただ、大型だけにこのシンプルさが逆にクルーザーならではのカスタム欲を250以上に掻き立ててくれる要素にもなっているような印象を受けた。ハンドリングの良さに排気量の余裕が加味されて、ロングツーリングでのクルージング体験がいかんなく味わえる。私は、この500がレブルシリーズの基本形といってもいいのではとないかと感じた。

【HONDA REBEL 500】250と500の車体は、エンジンに合わせたチューニング以外は基本的に共通。そのためハンドリングの雰囲気はそのままに、500は動力性能が上乗せされたという乗り味だ。車重は20kgもの差があるが、それをあまり感じさせない。●価格:79万9700円

そんな評価を得た後に乗ってみた1100。250や500と比べると重量感やサイズ感でビッグバイクに跨っているという満足感をそれなりに味わわせながら、それでもライポジの感覚は基本的に一緒。並べてみた写真を見てもらえば分かるとおり、驚くほど3車共通だ。足着き性も遜色ない。

走り出してみるとハンドリングの自然さは言わずもがなだし、エンジンは低中回転では扱いやすくシリーズ最高のビッグクルーザーらしい鼓動感を楽しませてくれる。端的に言って「乗りやすい」の一言。初心者のビッグバイクへの間口をこれまでにないほど拡げているのが感じられた。さらに1100に慣れてきた人には、回せば250や500の及ばないスポーティなパワー感という新しい世界が待っている。

どの排気量のレブルでも、鼓動感を楽しめる扱いやすいエンジン、次にナチュラルハンドリング、そしてリーズナブルな価格設定と、シリーズ通しての思想を貫いていた。ライダーがステップアップする道筋通りという感じで、3車の甲乙は付けられないな。

【HONDA REBEL 1100 DCT】1100は、ほとんどここで事足りる低中回転域ではレブルらしい扱いやすさの持ち主。だが、スロットルを開けるとビッグバイクならではの加速感で豪快に走らせられる醍醐味も。●価格:DCT121万円 STD110万円

レブル3兄弟徹底比較

ライディングポジション:3車とも両足のかかとまで接地

3兄弟のライディングポジションについて、共通車体を持つ250&500は当然のこととして、1100まで驚くほど酷似していた。どれも両足かかとまで地面にベッタリと着き、安心感はバツグン。腕を前にまっすぐ伸ばしたあたりにあるハンドルバーに手を添えると、上半身は従来のクルーザーイメージとは逆に軽く前方に荷重をかけられるようなフォームとなる。ゴムラバーのないステップも踏ん張りやすく、これは走りがコントロールしやすくて当然だ。[身長168cm/体重61kg]

レブル250:シート高690mm

レブル500:シート高690mm

レブル1100:シート高700mm

【1100は全体的に骨太感がマル】写真は同縮尺となるように撮影した3車の俯瞰。1100は大型らしい骨太さを感じさせつつ、上から見ると実は兄弟たちと似たようなスリムさも併せ持つ。足着きの良さはここに理由が。

スタイリング

【1100 DCT:シリーズ長兄らしい風格】’21に新登場した1100は、DCT仕様が3月、MT仕様が5月に発売された。基本的なフォルムはシリーズ共通としながらも、ビッグバイクらしいマッスルさが加味されている。

【500:250と同時設計】250と同時設計で、近年のクルーザー界で流行りのボバースタイルを採り入れたデザインで登場した500。’20に4連ヘッドライトをはじめ全灯火類がLEDとなった。

【250:Sエディションもある】ナローボディのボバースタイルで軽二輪クラス販売No.1。500同様’20で全灯火LEDとなるモデルチェンジを受けた。ビキニカウルなどで精悍さを増したSエディションもある。

エンジン

【1100:DCT装備の電脳エンジン】ユニカムバルブ駆動の新世代SOHC並列2気筒。不等間隔爆発により味わい深い鼓動感を演出する。ライディングモードは4種類で、「USER」ではパワー/トラクションコントロール/エンジンブレーキ/DCTシフトタイミングを各3段階ごとに設定可能だ。

【500:大型バイクの第一歩に】エンジンはDOHCの並列2気筒。低中回転では鼓動感あふれる味を見せながら、高回転では軽やかに雑味のない爽快な吹け上がり方を見せる。トラクションコントロールなど電子装備は持たないが、アシストスリッパークラッチは装備とツボは押さえている。

【250:扱いやすい単気筒】エンジンはポコポコと小気味いい鼓動感を伝えてくるDOHC単気筒。クセのない出力特性で誰にでも扱いやすい。サイレンサー形状は500と同イメージだが、単気筒なのでエキパイの数は1本だ。

足まわり

【1100:大型らしい豪華な足まわり】前後サスペンションにはプリロード調整が付いている。正立フロントフォークのφ43mmインナーパイプにネイビー色の酸化チタンコートが施されるほか、ブレーキにはラジアルマウントのモノブロックキャリパーと、なんともビッグバイクらしい豪華装備が自慢だ。

【500:サイズに合わせて最適化】φ41mmの正立フロントフォークはオイルとスプリングの最適化で優れた乗り心地を実現。リヤサスには窒素ガスを封入したダンパーユニットが採用されている。フロントブレーキにはABS付きのニッシン製片押し2ピストンキャリパーを装着だ。

メーター/ヘッドライト/収納スペース

【1100:電子装備に合わせた充実表示】兄弟たちのイメージに寄せながらも独自のものになっており、タコメーターを装備するほか横にインジケーター部を設置。液晶部にはライディングモード内容も表示される。

【500:ギヤポジション表示が追加】メーターには’20のモデルチェンジでギヤポジションインジケーターが追加されて便利になった。ほかにも燃費表示や左右独立式ウインカーインジケーターといった表示がなされる。

【250:500と共通ユニット】500と共通の反転液晶メーターユニットを採用。タコメーターは持たないが、ギヤポジションインジケーター/燃料計/時計/燃費計と初心者が欲しいものはすべて揃っている。

【4連LEDライトで顔を統一】3兄弟ともウインカー位置も合わせた4連LEDバルブのヘッドライトで顔を統一。1100ではライト両側に半円状のLED導光部を持たせて、長兄としての差別化が図られている。

【シート下はどうなってる?】250と500のシート下にスペースはなく、シート裏に書類や車載工具を収納。1100では若干の収納スペースがあり、標準装備のETCやUSBソケットがセットされている。

燃費/主要諸元/コストパフォーマンス

【1100も余裕の高燃費】東京(上野)から一般道〜首都高〜東名高速〜ワインディングを抜けて、バビューンと箱根まで。その時の燃費が上の通り。250より500が好成績なのは、排気量が大きいぶんエンジンを回さずに済んだことが理由だ。同様に1100も排気量が倍以上違う兄弟と遜色ない好燃費を叩き出してくれた。

レブル3兄弟の主要諸元

【1100はコスパ度枠超え!】ヤングマシン本誌独断によるコストパフォーマンスイメージ。DCTや電子装備てんこ盛りで121万円の1100は、レブルの中でも群を抜いている。

総括:初代ニンジャ250レベルの革命的変化

レブル1100は結局どういうユーザーを狙っているのか。今回の3兄弟を比較試乗してみてハッキリとその答えが見えてきた。これはビッグバイクに新しいライダーを呼び込む起爆剤となるかもしれないぞ!

ホンダはコレでビッグバイク新規層を掘り起こそうとしている

今回比較したレブル250/500/1100の3車は、いずれもシリーズ共通のハードルの低さが前面に打ち出されていたのが印象的だった。とにかく誰にでもとっつきやすい。メーカー各社はこれまで新しいライダーを開拓しようと、あの手この手でいろんなことを試してきたが、その解答例がまさにシリーズ最初の入口となるレブル250だった。クルーザーの形をしていてもその本質は安くて扱いやすい”普通のバイク”が、バイクに初めて乗るエントリーユーザー層には一番ウケたのはもう間違いない。これは初代ニンジャ250が2気筒と当初はベテラン層に軽く見られながらも、実際にはスタイルのカッコよさと乗りやすさで一気に新規層を取り込んで、今や”250フルカウル”という一大ジャンルを築き上げたことを思い出させる。レブル250はそのとき以来の革新だ。

250がヒットしたホンダは、今度は1100で大型バイク入門層まで取り込もうとしている。今までありそうでなかった本格クルーザースタイルながら、手軽で普通なビッグバイクとして彼らは好評価で受け入れるはずだ。

丸山浩が選ぶレブル3兄弟のイチオシ!

【1100:旗艦ならではの豪華装備】なんといっても頂点の1100だけが持っている豪華装備。DCT[写真左]は優秀で、クラッチレバーはもとよりシフト操作からもライダーを解放。景色を楽しみながらの快適な長旅で他のビッグバイクたちに差を付ける。クルーズコントロール[写真上右]とグリップヒーター[写真上左]がそれに輪をかけてくれるぞ。

【500:自分色に染めたいシンプルさ】500はせっかくの大型バイクということで、そのシンプルさがかえってカスタム欲を呼び起こす。車両価格が高くないから、そのぶんパーツ代にお金を回せそうだ。

【250:やっぱり足着きでしょ】初心者が一番心配するのが足着き。それを完璧なまでに払拭しているからこそ250はヒットした。なんと言ってもまずココだよね。

開発者インタビュー:”走りのクルーザー”として死守した部分とは!?

まずは1100開発の経緯。250/500開発時から構想はあり、この2車が市場で好意的に迎えられたことを受けて、レブルの世界観を広げる目的で開発がスタート。アフリカツインのパラツインは270度クランクが生むパルス感や力強さがレブルの長兄に似合うという判断で選択している。

このエンジンの能力を引き出す自由自在な操縦性は1100が重視した点で、前輪径を250/500のボリューミーな16インチから、扁平でスポーティな18インチに変更したのはその一環。さらに開発陣のこだわりが炸裂するのが、酸化チタンコートで黒く染められたフロントフォークのインナーチューブだ。摺動抵抗低減のためにスーパースポーツなどが採用する高級な表面処理だが、これをレブル1100は車体全体をブラックアウトしつつ、スポーティ感をより強調する目的で採用した。端的に言えば高価な処理を”見た目の良さ”に使ったわけで、「どれだけカネ掛けてるんだ!」と突っ込まれつつ、スポーティさの表現として譲らなかった部分だという。クルーザーらしい佇まいを求めて正立フォークとしたことも奏功し、黒いインナーチューブの存在感はとにかく抜群。ボトムケースも削り出し材を用いた2ピース構造だし、フロントブレーキもラジアルマウントキャリパー+330mmの大径ディスクと、クルーザーを超越した足回りは1100の大きなアピール点だ(フロントブレーキがシングルなのはホイールを見せるため、とのこと)。

一方、”28度のキャスター角/+2度のスランテッドアングルを付けて30度としたフロントフォーク角/110mmのトレール”というディメンションは3兄弟に共通。フロントフォークを寝かせてもトレール量を増やし過ぎないための策だが、レブルらしい軽快感には、前輪の径が違ってもこの数値がベスト。開発陣によれば”レブルを象徴する数値”とのことだ。

(写真左から時計回りに) 兼村祐気氏[デザイン] 小数賀巧氏[商品性研究] 野々山祐也氏[操安研究] 古瀬博氏[開発責任者] 辰己貴俊氏[開発責任者代行] 飯干慎也氏[燃料吸排気研究] 田中拓郎氏[電装設計] 黛慧氏[車体設計]


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