普通二輪ユーザーのフラッグシップモデル

16連覇の後も2位/2位/3位! ホンダ「CB400SF」販売台数トップランナーの走りに納得

400ccクラスのロングセラーにしてベストセラー、ホンダCB400スーパーフォアに試乗。売れているモデルには理由があるわけだが、走らせると誰もが納得すること間違いなし。コンパクトな車体と扱いやすさの極みに達したエンジンにイチャモンをつけられるライダーは果たしているのか!?


●文:伊丹孝裕 ●写真:長谷川徹 ●取材協力:本田技研工業 ●販売台数ランキング協力:二輪車新聞

1993年以降、販売台数ランキングは最低でも3位

ホンダCB400スーパーフォア(SF)は、1992年4月に発売された。以来、改良に次ぐ改良が繰り返され、2005年にはハーフカウルを備えた兄弟モデルCB400スーパーボルドール(SB)が加わって現在に至る。

251cc~400ccクラスにおけるセールス記録は、2002年から2017年まで16連覇を達成(二輪車新聞調べ/記事末にランキング詳細)している。ここ数年はトップの座をカワサキNinja400に譲っているものの、それでも2位(2018年)、2位(2019年)、3位(2020年/この時の2位はヤマハSR400)と上位にランクイン。400ccクラスの顔であり、けん引役とも呼べる存在だ。

初代CB400スーパーフォア(NC31)は、1992年4月23日にソリッドカラー(税抜き58万9000円)、6月10日にツートーンカラー(税抜き59万9000円)が発売された。

しかしながら、CB400SFも同SBも海外では展開されない、いわゆるガラパゴスモデルでもある。国内で流通する2000台強(2020年の実績は2231台)のために、令和2年排出ガス規制をクリアさせるかどうかはいささか疑問であり、いよいよ生産終了の噂も聞こえ始めてきた。

教習車仕様もあるため、一定数の需要は望めるはずだが、規制クリアのコストを現在の車体価格に上乗せしてまで継続するのは難しいかもしれない。すでにCB400SFは88万4000円~92万8400円、CB400SBに至っては100万円を超える価格帯に入っているからだ。

クラス唯一の4気筒エンジンというアイデンティティを踏まえても高価なのは間違いなく、ワンランク上の650ccクラスに目を向ければ、これより安価なモデルも珍しくない。CB400SF/SBは、その意味でも他とは交わらない、やや特異なポジションにある。

とはいえ、教習車として多くのライダーを路上に送り出してきたエントリーモデルであるのと同時に、普通二輪免許で手にできるフラッグシップでもある。その懐の深さと広さは特筆されるべきもので、他に代わるモデルがないがゆえにロングセラーとベストセラーを両立してきたわけだ。そこで今回、CB400SFを通して、あらためてそのパフォーマンスに触れてみることにした。

2000年代に入ってからの歴代モデルには、ほとんど乗っていると思う。そのたびに「よくもまぁ、そんなにやることを見つけられるものだ」と感心させられるほど、様々な改良が施されてきた。作動バルブ数の切り換えシステムやインジェクションの採用といった大規模変更のみならず、スロットルレスポンスの向上やハンドリングの見直しといったリセッティングレベルも含めて、着実にアップデート。およそ30年の間、姿形をほとんど変えることなく熟成に注力されてきたという点において、ヤマハSR400に通じるものがある。

シート高は755mm。シート前部がスリムなこともあり、足裏全体が地面に接地。ステップバーも降ろした足に干渉しない位置にある。上体の姿勢は極めて安楽で、シートとハンドルの位置関係も近からず、遠からず程よいもの。取り回しもしやすい。(身長174cm/体重63kg)

燃料タンクにはそれなりのボリュームがあり、シートカウルは軽く上方に跳ね上がっている。そのため、単体では大柄に見えるのだが、いざまたがってみると拍子抜けするほどコンパクトだ。手を伸ばしたところにほどよい幅のハンドルがあり、平均的な体格の成人男性なら足つきは余裕のはず。2014年のモデルチェンジの際、ライディングポジションはより安楽な方向へ見直されている。

恐るべきエンジンの完成度

実際に走らせて、このエンジンに文句をつける人はそういないだろう。源流は1980年代半ばまでさかのぼれる長寿ユニットながら、フレキシビリティの手本のような仕上がりを持つ。燃料供給方式がキャブレターからインジェクションになった頃こそ、ドン突きのような症状が見られたものの、いつの間にかそれも解消している。スロットル操作に連動して、どこからでもきれいにパワーが立ち上がっていく。

体感的にも物理的にも特別トルクフルではないのだが、完璧な燃調と適切なギヤレシオがそれをカバー。わずか2000rpmでギヤを6速に入れてもノッキングせず、そのままスルスルと加速していく。このあきれるほど広いトルクバンドがCB400SFの強みのひとつであり、教習車に採用されるのもうなずける。アシスト機構を標準装備するモデルと比較すると、クラッチレバーの操作力は重めだが、ウィークポイントというほどのものではない。

だからと言って、このエンジンが包容力に徹した、穏やかさだけがウリのキャラクターかと言えば、そんなことはない。ホンダ独自のバルブ制御システム「HYPER VTEC(ハイパーブイテック)」の採用が好例だ。初採用されたのは1999年のことで、1気筒あたり4つあるバルブの内、低回転域では2バルブを、高回転域になると4バルブを作動させるというもの。これによって力強いトルクと刺激的なパワーフィーリングのイイトコロ取りをするというアイデアだ。

この機構は後にHYPER VTEC II、IIIと名称を変え、現在は「HYPER VTEC Revo(レボ)」へ進化。バルブの作動パラメータにはエンジン回転数だけでなく、ギヤポジションやスロットル開度も加えられ、よりきめ細やかな制御を実現している。

ハンドリングはニュートラルそのもの。コーナーではサスペンションのストロークやタイヤへの荷重を特に意識しなくとも、リーンウィズのまま素直に旋回していく。一部のスーパースポーツにように手応えが軽すぎることもなく、接地感も分かりやすい。

バルブが切り換わるタイミングは、6速の時は6750rpmに設定されている一方、1速~5速では6300rpmと低くなっている。ただし、5速以下でもスロットル開度が小さく、ジワジワと速度を上げるような場面では6300rpmを超えても2バルブ状態が維持され、6750rpmまで待機。逆にスロットルを一気に開けた時には即座に4バルブが開くなど、臨機応変な対応を見せる。

2バルブが4バルブになる瞬間は明確で、サウンドは甲高く、シャープなレスポンスを伴ってタコメーターの針が上昇していく。もちろん過給システムではないので、加速力自体は回転数に見合ったものに過ぎないが、乗り手のテンションを確実に刺激してくる。演出を含んでることを考慮しても、ホンダエンジンらしい爽快さを堪能できるはずだ。

4バルブ時の印象が強いせいか、2バルブ状態で半端にスロットルを開けた時の車体の反応は少々鈍く感じられるかもしれない。4000~5000rpmあたりでやや強めに加速しようとすると、車重の影響なのか、あるいはフレームの粘りなのか、ともかくフリクションのようなものがあり、ダイレクト感に欠ける領域があるからだ。好意的に捉えると重厚とも表現できるが、もっと軽やかな方がこの車格にはふさわしい。

それはさておき、既述の回転数はなんとなく定められたものではなく、日常の走行シーンに寄り添って設定されていることは明白だ。というのも、メーター読みでは6500rpmあたりで4バルブになるのだが、高速道路を100km/hで巡航している時の針は、その直前である6400rpmを指している。つまり、法定速度の上限(一部の120km/h区間を除く)で流している時は燃料をいたずらに消費しない、ギリギリのところに境目が設けられていることを意味し、このモデルが日本の道路事情に特化していることの証だ。

HONDA CB400 SUPER FOUR[2021 model]最新モデルの型式はNC42だ。

そしてもうひとつ。ミラーの装着位置が絶妙で街中でもスイスイと走りやすい。ミラーの端から端、ハンドルバーエンドの端から端がほぼ同じ幅に設定され(わずかにミラーが広いが)、狭い場所を通過する時も空間が認識しやすく、それでいて後方視界は充分に確保されている。念のために記しておくが、だからと言って法的に問題ない場所や方法でもすり抜けを推奨するものではない。しかし、扱いやすさへの配慮という点において、これもまた日本の実情に添った作りだと言える。

車体をバンクさせるのではなく、ハンドルを切って曲がるような極低速走行時の安定感も同様だ。ストップ&ゴーを繰り返さざるを得ない街中で、これほどストレスを感じないバイクも珍しい。アイドリング回転数もエンジンからの放熱も終始一定で、心理的にも肉体的にも我慢を強いられることがない。

数少ない欠点を探せば、シートの取り付け精度がそれだ。フチを持って上下に揺すると、そのままガタガタと大きく動いてしまうほどのクリアランスがあり、個体差の問題ではない。スポーツバイクなら看過できるレベルになく、街乗り重視のモデルだとしても許容しかねる。対策がそれほど難しいとは思えないのだが、少なくとも近年のモデルは一様に同じ傾向にある。

ともあれ、CB400SF(SBも含め)が日本専用モデルとして作り込まれていることは間違いない。なんらかの方法で延命が図られるのか、まったく別の系統になるのか、はたまた終焉を選ぶのか。いずれの可能性も現時点では不明ながら、少なくとも現行モデルは最新にして最良である。なによりこの数十年、多くのライダーがその車上でライディングを学んだことの意義はあまりに大きく、CBという確かなブランドのためにも存続に期待したい。

HONDA CB400 SUPER FOUR[2021 model]

【HONDA CB400 SUPER FOUR[2021 model]】主要諸元■全長2080 全幅745 全高1080 軸距1410 シート高755(各mm) 車重201kg(装備)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 399cc 56ps/11000rpm 4.0kg-m/9500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量18L■タイヤサイズF=120/60ZR17 R=160/60ZR17 ●価格&色:黒=88万4000円/赤、青=92万8400円 ●発売中

HONDA CB400 SUPER FOUR[2021 model]

HONDA CB400 SUPER FOUR[2021 model]

HONDA CB400 SUPER FOUR[2021 model]

HONDA CB400 SUPER FOUR[2021 model]

右にタコメーター、左にスピードメーターを配するオーソドックスな2眼式。中央の液晶パネルには、時計/ギヤポジション/トリップメーター/オドメーター/ガソリン残量/平均燃費/外気温などが表示される。

ヘッドライトとテールライトにはいずれも高照度のLEDランプを採用する。ロング&ワイドな配光を持ち、視認性と被視認性が高められている。

クラス唯一の水冷直列4気筒エンジンを搭載。1気筒当たり4つのバルブを備え、回転域やスロットル開度によって作動バルブ数を切り換える(低回転時2バルブ/高回転時4バルブ)、HYPER VTEC Revoを採用している。399ccの排気量から56PS/11000rpmの最高出力と4.0kgf・m/9500rpmの最大トルクを発揮し、スペック的には高回転寄りながら、街中では優れたフレキシビリティを見せる。

低回転時の静粛性と高回転時の伸びやかなサウンドを両立する4-2-1タイプのステンレスマフラーを採用。エキゾーストパイプ内には数か所に渡ってキャタラザーが装備され、環境性能が高められている。

【左】リザーバータンク付のショーワ製ツインショックは5段階のプリロード調整が可能。アルミスイングアームに締結され、高い路面追従性に貢献している。【右】フロントフォークのプリロードは無段階での調整が可能。フロントブレーキは4ポットキャリパーとφ296mmのディスクを組み合わせ、もちろんABSを標準装備する。

【左】燃料タンク容量は18リットル。テスト時の燃費は、20.94km/Lとなり、カタログスペックの21.2km/L(WMTCモード値)とほぼ同等だった。計算上の航続距離は370kmを超える。【右】高密度ウレタン材を内包し、硬さと沈み込み量のバランスに優れるシート。大型のグラブバーを備え、タンデム時のホールド性は良好だ。パッセンジャー側の前部はやや盛り上がりがあるものの、座面は広く、荷掛け用フックを4ヶ所に装備。荷物の積載性にも優れる。

【左】シート下のスペースはそれほど大きくはないものの、ETC車載器などを収めることが可能だ。【右】車載工具には、フックレンチ/延長パイプ/スパナ(14mm&17mm)/ヘックス(5mm)/ドライバー(+&-)/ヒューズプーラーが用意されている。

サイドカバー横にヘルメットホルダーを標準装備するほか、グラブバーには荷掛け用の突起が設けられている。ツーリング時はもちろん、日常の使い勝手にも配慮されている。

小型二輪251〜400ccクラス・CB400スーパーフォアの歴代ランキング

1992年4月に発売されたため、販売の数字が1年分のトータルの数字で出たのは1993年から。発売年の1992年は1位がゼファーだった。

1993年の1位はスティード400で、CB400SFは2位。以降は下記の通りだ。

1994年 1位CB400SF (2位はスティード400)
1995年 1位XJR400/R(2位はCB400SF/R)
1996年 1位ドラッグスター400(2位はCB400SF/R/S)
1997年 1位ドラッグスター400(2位はCB400SF/R/S)
1998年 1位ドラッグスター400(2位はSR400、3位がCB400SF/R/S)
1999年 1位ドラッグスター400/クラシック(2位はCB400SF)
2000年 1位CB400SF (2位はSR400)
2001年 1位ドラッグスター400(2位はSR400、3位がCB400SF)
2002年 1位CB400SF (2位はドラッグスター400)
2003年 1位CB400SF (2位はドラッグスター400)


↓  
※2002年から2017年までCB400SFが1位。



2016年 1位CB400SF/SB 2071台(2位はヤマハYZF-R3 ABS/MT-03 1927台)
2017年 1位CB400SF/SB 2179台(2位はヤマハYZF-R3 ABS/MT-03 1734台)
2018年 1位ニンジャ400/KRTエディション 3138台(2位はCB400SF/SB 1840台)
2019年 1位ニンジャ400/KRTエディション/Z400 3605台(2位はCB400SF/SB 1935台)
2020年 1位ニンジャ400/KRTエディション/Z400 2578台(2位はSR400 2386台)※CB400SF/SBは3位 2237台

※ランキングは二輪車新聞調べ


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