軽さとコンパクトさが自在感を生み出す

KTM 790 ADVENTURE試乗インプレッション【パラツーエンジンの軽量小型ADV|映像あり】

2019 KTM 790ADVENTURE

KTMのアドベンチャーも並列2気筒エンジンをついに採用! “オフロードでは負けない!”そんなダカール王者の意地が詰まったマシンは、ライバルに比べてどうなのか? 今回はシリーズの中でも最も走破性が高く設定されたマシンである790アドベンチャーに試乗した。

(◯)軽さとコンパクトさが自在感を生み出す

世界一過酷なラリーといわれるダカール・ラリーで18連覇中のKTM。アドベンチャーツアラーは、最近流行りのジャンルではあるものの、KTMのアドベンチャーシリーズには、そんなダカール・ラリーで培ったノウハウがぞんぶんに注ぎ込まれる。つまりKTMほど、”オフロード走破性””ダートで勝てる性能”にこだわるメーカーは他にない。アドベンチャーツアラーといえど、メーカースタンスである”READY TO RACE”に揺るぎなしというワケだ。

さて新作の790アドベンチャーはシリーズの中でも最も走破性が高く設定されたマシンで、ぶっちゃけて言えば、ライバルはホンダのアフリカツインであり、BMWのF850GS。どちらも21インチサイズのスポークホイールが与えられた〝本気ダート系.アドベンチャーツアラーマシンであるが、ことダート走破性においては、この790アドベンチャーが1歩前に出たと言っていい。それほどマシンコントロールにおいて790アドベンチャーは優れている。

2019 KTM 790ADVENTURE
【KTM 790ADVENTURE[2019]】主要諸元■全長ー 全幅ー 全高ー 軸距1509 シート高850/830(各mm) 車重189kg(半乾燥) ■水冷4ストDOHC 並列2気筒 799cc 95ps/8000rpm 9.08kg-m/6600rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20L ■ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク ■タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70-18 ●価格:149万円 ●色:橙、白

秘密はやはり前後長の短いパラレルツインエンジンの採用にある。KTMのアドベンチャーシリーズがこれまで採用してきたのは、お家芸の鋏角75度のVツインエンジン。ただ、どうしても前後長の長いエンジンは車体のコンパクト化においてどうしても不利な面が多く、実際乗ってみると”大柄なバイク”という印象が強かった。ところが今回のパラレルツインエンジン搭載で、一気にフロントアクスルとピポッドの距離を短縮したことで、非常にコンパクトに感じる乗り味を実現。これまでのシリーズにない”自在感”が出ている。250ccのオフ車ほどではないものの、アドベンチャーツアラーというより、600ccクラスのオフ車のフィーリングに近い。自在に操れそうだから、少々リヤがコーナーで流れたところで怖くないし、むしろ積極的にテールスライドしてやろうとさえ思えてくるというワケだ。

2019 KTM 790ADVENTURE
パラレルツインのため、シングルエンジンやVツインエンジンよりもシート部の幅は広いがローシート時の830㎜のシート高は驚異的。親指の付け根まで接地するためしっかり支えられる。アドベンチャーツアラーの常識を覆す足着き性だ(身長179cm 体重68kg)。
2019 KTM 790ADVENTURE
(左)ラリーレーサーのようにエンジンの左右を覆うようにレイアウトされた樹脂製タンク。低重心化と同時に容量はなんと20Lを確保。その航続距離は450kmだとか。(右)KTMのアドベンチャーシリーズらしい、左右縦長レイアウトのLEDヘッドライトを採用。スクリーンは上下幅40mmの2段階切り替え式で、中央の穴にあるボルト一本で変更可能。
2019 KTM 790ADVENTURE

WP製φ43mmのフロントフォークに21インチスポークホイールをセット。ホイールトラベルは、ダート走行を想定して前後ともに200mm確保されている。

2019 KTM 790ADVENTURE
走行状況に合わせて3つのモードが選択可能。ボッシュ製のIMUでセンシングしており、さらにオプションの”ラリー”モードを追加すると段階的に介入具合を選べるようになる。
2019 KTM 790ADVENTURE
850mmと830mmのシート高が選べる。変更方法もシートを固定するダボをはめかえるだけで実に簡単。デコボコな路面を走る林道などでは特にありがたい装備だ。

【エンジンのハード部分は790デュークと同じ】

790アドベンチャーシリーズが搭載するエンジンは、Vツイン比で前後長が短く、エンジンが前方に搭載しやすい799㏄パラレルツイン。昨年登場したロードスポーツモデルの790デュークと共用で、動弁系やギヤ比などのメカニカルな部分はすべて同じ。よりアドベンチャーツアラー向きの中低速トルク重視の味付けへの変更は、燃料噴射量と点火タイミングのリセッティングで行っている。

2019 KTM 790ADVENTURE
【790デューク】KTMとして初のパラレルツインモデルとなった790デューク。お家芸である75度Vツインのフィーリングを再現するためクランク位相角は435(360°+75°)度に設定。

(△)やはり21インチは舗装コーナーで不利!?

ここまで自在感が高いと、舗装路で21インチゆえに不利な面も。走り込んでいくと、細く径の大きな21インチタイヤ&スポークホイールが少々心もとなく感じるのだ。その他の車体はまだまだ攻められそうな雰囲気なのだが、フロントタイヤだけが路面のアレや小石を踏んだときに、心もとない挙動が出る。だからそれ以上は攻められないのだが、オフ性能ゆえ、やむなしといったところ。

(結論)こんな人におすすめ:オフ性能には拘りたいけど足つきは気になる

オフロード性能に拘ると長いサスストロークが欲しくなるが、このモデルは830mmという低シート高ながら、前後200mmのストロークを確保。最新の電子制御のおかげでアクセルが開けやすく、狭い林道でも十分扱いやすく感じる。

2019 KTM 790ADVENTURE

【兄弟モデルの790ADVENTURE Rはさらに足が長い!】

KTMのアドベンチャーツアラーの“R”という符号はより本格的なオフロード装備車両に付けられる。790アドベンチャーに対し、“R”はインナーチューブ径が5mm太いφ48mmを採用し、ストロークも40mmアップの240mmが確保され、さらに高い走破性が与えられている。

KTM 790 アドベンチャーのインプレ動画はこちら

●写真:山内潤也
※取材協力:KTM JAPAN

※ヤングマシン2019年7月号掲載記事をベースに再構成

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