歯ごたえ十分。硬派な直線番長だ!

ハーレー2019モデル・FXDR114のインプレッション

ハーレー・ダビッドソン2019モデルの中で、唯一のブランニューモデルとなるのが10機種目のソフテイル・FXDR114だ。ドラッグレーサーをデザインモチーフとしたロー&ロングな車体に、エレメントむき出しのエアクリーナーや2-1-2のマフラー、アルミスイングアームなどでアグレッシブさを強調する同車。その走りはいかに?

(車両の詳細はこちらの記事を参照ください)

現行ハーレー随一の鼓動感を満喫できる

一言で表現するなら「見たまんま」だ。34度と寝たキャスター角に、1735mm という長大なホイールベース、さらに240サイズのリヤタイヤとくれば、日本製スポーツバイクに乗り慣れた身とすれば「よく曲がる」とはいい難い。ライディングポジションだって、上体が前傾するのに足は前に投げ出す「く」の字型だから、ロングツーリングを快適に過ごせるわけでもない。短時間のライディングで、1868ccVツインの爆発力を存分に堪能する。それがFXDR114のもっとも愉快な使い方だろう。

試乗はハーレーダビッドソンジャパンの協力により、能登半島方面にて実施。日本で唯一の砂浜観光道路・千里浜なぎさドライブウェイにも訪れた(タイトルの写真)。

そしてFXDRはそのエンジンが個性的だ。今回乗った数台のFXDRにはやや個体差があったが、最も印象のよかった車両はスロットルの開け始めはスムーズながら、さらに開ければドダダダダっと、硬いゴムまりが弾むような荒々しい鼓動感とともに車体を蹴り飛ばす。レブリミットが約5600rpmとさほど高くないこともあり、全開で加速していくと思ったよりも頭打ちは早いが、2500rpm〜3500rpmあたりでスロットルを開け閉めするときに味わえる、ビッグVツインらしい爆発感はかなり濃厚だ。

今回、一緒に走らせる機会のあったツーリングファミリー(長距離走行を重視して鼓動感は丸く滑らか。エンジンマウントにはラバーを採用)から乗り換えると、一瞬ひるむほどにFXDRの爆発感はダイレクト。バランサーは2本に増え、エンジンマウントもリジッドとはいえ、基本的に同じエンジンとは思えないほどだ。近年のハーレーはこのあたりの鼓動感を車種ごとにうまく使い分けてくるが、FXDRは現行機種中では1、2を争うほど豪快。もちろん、その全力を開放するようなシーンでも車体の安定感や直進性は万全だ。

車体色は赤/白/黒/灰/茶の5色で、黒はツヤありとなしが選べる(ほかは全てつや消し)。計6種という設定だ。

ハンドリングは歯ごたえタップリ

先に“日本車のようにスイスイとは曲がらない”と述べた車体だが、直立付近では割とヒラヒラ感があるので、街乗りは見た目よりも軽快(乗り心地はかなり硬いが)。しかし、少しバンクしたところからは極太タイヤの影響か、倒し込みにグッと抵抗感が出てくる。初動のヒラヒラしたイメージでコーナーに入ると、思ったよりもフロントが大回りして「おっとっと」となりがちだ。

ところが、そんな前輪をなんとかインに引き込もうとシートの前方に座ったり(座面がフラットなので、これが意外とやりやすい)、ブレーキを引きずってコーナーに進入したりと、意識して曲げる方法を探っていると……やや旋回力が強まるというか、手の内に入ってくる感覚がある。このあたりのさじ加減がFXDRのポイントだろう。決してイージーには曲がらないが、適正な操作に対し、しっかり反応を返すだけの奥行きはあるのだ。

FXDRのバンク角は右32.6度、左32.8度。これはソフテイルで最もスポーティなFXFBファットボブ(右側31度・左側32度)を上回る設定。

同じソフテイルファミリーでも、前後16インチタイヤのソフテイルデラックスやヘリテイジなどはもっとイージーだから、ツーリングも峠道もスイスイこなしたければそちらを選べばいい。対してFXDRはもう少し敷居が高くて硬派だが、それを乗りこなすことに愉悦を覚えるライダーには魅力的に映るはず。「近年のハーレーは乗りやすくなりすぎて……」なんてボヤいている旧来からのファンには、車体/エンジンともに歯ごたえ十分な1台だろう。

ライダーの頭がヘッドパイプの延長線上に来るほど前傾する上半身に対し、足は前方へと投げ出す独特のライポジ。シート高は720mmと低く、身長170cmで両足かかとまで接地するが、右足はマフラー、左足はエンジンでかなり左右へと押し広げられる。

●撮影:藤村のぞみ(走行写真)